ダブル・ループ学習
Double-loop learning
- 人間の学習は、結果の成功・失敗から素直に学ぶシングル・ループ学習と、そうした結果をもたらした前提を見直す、ダブル・ループ学習とに区別される。
- 通常の業務の習熟はシングル・ループ学習だが、社会環境が変化していくなかでは、「今のやり方が上手くいかなくなっているのは、どのように社会環境が変わろうとしているのか」というダブル・ループ学習が大切になる。
ダブル・ループ学習とは、かつての成功体験を捨てる「忘却」(アンラーニング)である
関連ワード
ダブル・ループ学習とは
この理論が強調するのは、2種類の学習があるということではありません。前提を疑い、かつての成功体験をも捨てられるダブルループ学習こそが大切である、ということです。通常、人は放っておいてもシングルループ学習をします。そのように脳ができているからです。そのため仕事をしていれば、その仕事には必ず習熟していくようになっています。
しかし、そうして構築された技能を放棄することは難しく、その学習によって培われた業務理解や社会構造の理解はそう簡単には変えられなくなります。だからこそ、一度そうしたものを忘れ、前提がどう変わったのか、だから私の行動はどう変わらなければいけないのか…というダブルループ学習が大切になるのです。
あなたが思うよりも社会の変化のスピードは速いでしょう。スマートフォン、YouTubeやTwitterなどは、いずれも2007年ごろに登場したものです。社会があっという間に変わっていくのであるとすれば、「いま、前提がどう変わろうとしているのか」にこそ、注視していかねばなりません。
事例紹介
ザ・ビートルズ『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』
■『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』はザ・ビートルズの8枚目のオリジナルアルバムですが、「世界最初のコンセプト・アルバム」とも呼ばれるそれまでの音楽アルバムのあり方を根底から覆すような斬新なものでした。
■それまでの音楽アルバムの常識では、作品は「単独の曲」でありアルバムはそれがたくさん入っているお得な盤に過ぎませんでした。しかし、同アルバムは架空のバンドのコンサートの構成という体で作られアルバムの概念を「単独の曲の集まり」から「全体のコンセプトを一枚で体現するもの」というあり方を示しました。アイデアを閃いたポール・マッカートニーは「ビートルズがビートルズでなくなればいい。架空のバンドをつくる。そうすればもっと自由になれる」と、まさに自分たちと、ポピュラーソング作りの前提を見直しています。
■こうした試みはクラシックやジャズの世界でも例を見ないもので、音楽界に新しい価値観をもたらしたことからアメリカの音楽雑誌「ローリングストーン」の名盤ランキング500で1位に輝くなど多くの人の心に残る名盤となっています。
著者・監修者
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1982年生。経営学者/やさしいビジネススクール学長/YouTuber/経済学博士/関東学院大学 特任教授/法政大学イノベーション・マネジメント研究センター 客員研究員
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専門は、経営戦略論・イノベーション・マネジメント、国際経営。
「アカデミーの力を社会に」をライフワークに据え、日本のビジネス力の底上げと、学術知による社会課題の解決を目指す。
「やさしいビジネススクール」を中心に、YouTube・研修・講演・コンサル・著作等で経営知識の普及に尽力中。
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