プロジェクトのチームを整えていく上で、チーム内での「衝突」とチームの「解散」が重要と言われています。チームでの活動に支障がでると思われる「衝突」と「解散」がなぜ重要なのか?
これらのポイントを有名な基本理論「タックマンモデル」から解説します。
このケースから得られる教訓は、チーム内での対立は、目的に対して共有する作業の一つで、当たり前に起きることです。「感情的なコンフリクト(感情の対立)」が生じる前に、チームのメンバーで「認知上のコンフリクト(考え方の違い)」を共有し、妥協点を探してプロジェクトを進める。チームが成熟したら、新たなメンバーを入れることで、パフォーマンスを向上させることができます。
この記事は、「チームビルディングの基本理論、タックマンモデルを超簡単解説!【プロジェクトマネジメント5】」という動画についてテキスト形式で読みやすくまとめたものです。
タックマンモデルの概要
ブルース・W・タックマンはアメリカの心理学者で、グループダイナミクスという領域の研究者です。グループダイナミクスとは、人間の心理が他者との関わり合いによって動くという理論です。20世紀に高度に発達したこの領域では、集団心理の研究が進められました。タックマンは、少数のチームが典型的に進化する過程を明らかにしました。
タックマンモデルの5つのステップ
タックマンモデルでは、チームは5つのステップに分類されます。
形成期(Forming):チームメンバーがバラバラの状態からスタートします
混乱期(Storming):チームメンバーが同じ目的に向き合うことで衝突が生じます
統一期(Norming):チームメンバー内での衝突を経て、チームが統一されます
機能期(Performing):リーダーの指示がなくても、チームメンバーは同じ方向に向かって進むことができます
解散期(Adjourning):最後にチームが解散することで、新たな進歩が生まれます
【形成期】は、チーム内のメンバーはバラバラの状態からスタートして、【混乱期】に入ると、メンバー同士が同じ目的に向き合ったからこそ、メンバー同士のぶつかり合いが生じます。これがとても重要です。ぶつかることは、「仕事に前向きになっていること」であり、プロジェクトを成し遂げる方針のぶつかり合いが起こることは、目的を共有できたということになります。ぶつかり合いがあることは、チームでは当たり前のことなのです。
混乱期のぶつかり合いを経て【統一期】には、チームのメンバーが同じ方向に向き合い、チームがだんだんと統一されていきます。統一期を経た【機能期】では、リーダーが指示を出さなくても、メンバー全員で同じ方向に向かえるようになります。最後のステップにあたる【解散期】では、チームの解散を意味します。チームが解散することで、人間の組織社会は進歩すると言われています。
「形成期」におけるチームマネジメント「コロケーション」
新しくチームを作った場合や新規メンバーが入った場合には、まず「コロケーション(Co-location・共通の場所に集まること)」を行うことが重要です。これは対面で会う、飲食を共にするなどの物理的な集まりに限らず、オンラインでの集まりでも構いません。
チームメンバーで目的、価値観やルールを共有し、各メンバーのキャラクターを知る時間を取ることが大切です。
ウィークリーチェックの重要性
また、チーム活動の中では、週に1回は、メンバーの状況確認を行うことが重要です。
仕事の状況(TODO、進行中、チェック中、完了)の可視化と同様に、メンバー個人の状況も確認します。
子どもの看病、家族の介護、時間的余裕のあるなしなど、個々のメンバー状況を把握することで、互いに仕事の割り振り調整をするなどして、プロジェクトへの適切な対応が可能になります。
プロジェクトとチームメンバーの状況の可視化はとても大切なことです。
混乱期(対立期)の管理~2つのコンフリクト~
チーム内での対立(ぶつかり・コンフリクト)はチームが同じ目的に向かって真剣に取り組んでいる証拠です。この対立には、「認知上のコンフリクト(考え方の違い)」と「感情的なコンフリクト(感情の対立)」の2種類があります。
「認知上のコンフリクト(考え方の違い)」は、メンバー同士の考え方が違っていることです。
互いにその違いを理解することを目指します。一緒のゴールを目指すメンバーなので、そのやり方や取り組むテンションの違いを埋めていければ、共にプロジェクトに邁進することができます。
「考え方の違い」であることへの理解が進めば、チームは一つとなることができます。
「感情的なコンフリクト(感情の対立)」は、感情的に「あのひとが嫌い」、「あの人が憎い」になってしまうことです。
感情的なコンフリクトは、「認知上のコンフリクト(考え方の違い)」が解消されずにいることから生じます。
「感情的なコンフリクト(感情の対立)」が生じないためには、「認知上のコンフリクト(考え方の違い)」が生じた時点で、チームメンバー同士で考え方の違いや認識を理解、共有して解決することが大事です。
対立の解決方法
対立が起きた際、2軸図で解決方法を考えてみる方法があります。
縦軸は自分の意見がどれくらい通ったのか、横軸は相手の意見がどれくらい通ったのかを表しています。
一番望ましい、目指したい地点は、互いの意見が通った「協力」です。
多くの対立は、真ん中の位置にあたる互いに歩み寄って「妥協」に着地することになります。
相手を打ち負かしても、相手が「感情的なコンフリクト」になって、感情的な対立が生まれてしまったり、自分が譲歩し続けることで、自分の気持ちがすり減ってしまったりします。
最も良くないのは、「対立を放置する」、「結論を先延ばしにする」ことです。対立を放置すると、両者が「感情的なコンフリクト」に発展しやすくなります。
また、対立の解決にはできるだけ「正論を通すこと」、「正論が通る組織であること」が大切と言われています。
対立が生じた時には、「仕事がどのように進めるべきか」、「誰のために」、「何を」、「どのように」、「なぜ行わなければならないのか」など、チームでの仕事の在り方を、対立しているメンバー同士とプロジェクトマネージャーで、整理整頓をしていきます。仕事の在り方を確認した上で、対立点についてある方向性で揃えていくか、方向性を変更せざるを得ないのであれば、変更する意味や変更内容をメンバー同士で共有します。
プロジェクトを正論で通すように心がけていくことも、プロジェクトマネジメントの鍵になります。
「解散」の重要性
チームは「解散」することが大切です。
アメリカの経営学者・ラルフ・カッツ(Ralph Katz)とトーマス・J・アレン(Thomas J. Allen)の研究によれば、チームのパフォーマンスは最初の1年から2年でピークに達し、その後は低下していくことが示されています。
チームのパフォーマンス低下を防ぐ方法は、チームに新しいメンバーが入ることです。
新しいメンバーがチームに入ることによって、一定の緊張感やフレッシュな空気感が生まれ、パフォーマンスが向上します。
タックマンモデルを理解して、チームの各フェーズで適切なマネジメントを行うことは、チームビルディングにおいて非常に重要です。これを活用して、皆さんのチームマネジメントに役立ててください。
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著者・監修者
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1982年生。経営学者/やさしいビジネススクール学長/YouTuber/経済学博士/関東学院大学 特任教授/法政大学イノベーション・マネジメント研究センター 客員研究員
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専門は、経営戦略論・イノベーション・マネジメント、国際経営。
「アカデミーの力を社会に」をライフワークに据え、日本のビジネス力の底上げと、学術知による社会課題の解決を目指す。
「やさしいビジネススクール」を中心に、YouTube・研修・講演・コンサル・著作等で経営知識の普及に尽力中。
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