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昭和の働き方だから日本企業のDXが進まない? ハーバート・サイモンの人工物論から検証

中川学長とビジネスブレークスルー大学の今川智美先生が共同で、日本企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める上での課題を検証した論文が発表されました。

今川智美・中川功一(2024)日本企業におけるDXの促進要因―サイモンの人工物論の観点から―『イノベーション・マネジメント』21: 71-85.
https://cir.nii.ac.jp/crid/1390018198841027072

この論文での検証から、日本企業がDXを進められない理由は、昭和時代の働き方が今でも続いているからです。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
DXは「デジタル技術で社会や生活の形を変える」こと。
トランスフォーメーションとは、英語で「変化・変形・変容」を表し、DXは、2004年にスウェーデンの大学教授、エリック・ストルターマンが考えた言葉と言われている。
参照:「デジタル・トランスフォーメーション」DXとは何か? IT化とはどこが違うのか?
https://mirasapo-plus.go.jp/hint/15869

この記事は、「日本企業のDXが進まない理由を検証。それは、働き方の古さゆえ。【研究紹介】」という動画についてテキスト形式で読みやすくまとめたものです。

目次

日本でDXが進まない現状/DXが進まない理由を検証

最近、日本ではDXの話題が少なくなってきました。
一方で、アメリカや中国などでは産業のDX化が進んでいます。対面での業務が重要視される日本では、DX化が進まず、他国に遅れを取っているのが現状です。これは多くの調査でも明らかになっています。

この問題を解明するために、2020年9月にコロナ禍の中で実施した組織調査のデータを解析しました。そこで見えてきたのは、アメリカの経済・経営学者でノーベル経済学賞を受賞者であるハーバート・サイモンの「人工物論」という理論です。

情報技術や情報科学分野にも貢献したハーバート・サイモンの考え方を参考に、日本企業のDXが進まない理由を分析しました。

ハーバート・サイモンの「人工物論」から見える日本企業の問題

ハーバート・サイモンの理論によれば、「人工物の構造とそれを扱う組織の構造は一致してくる」と言います。

車の車両を製造する際には、エンジンやボディフレームなどの製造があり、エンジンはコネクティングロッド製造やシリンダーヘッド製造などからできています。

車などの人工物の形を作るには、パーツ(塊)ごとの単位で作られていくことから、それを扱う組織もこの人工物を作るパーツ(塊)ごとに形成されていく。
このように「人工物の設計と人間組織人間社会の設計というものは一致してくる」とハーバート・サイモンは説きました。

この話は情報科学分野でも極めて重要な意味を持ちます。

ある企業で業務効率化のために、ITシステムを新たに構築することになりました。
もし、業務の形とITシステムの形がずれていたら、業務をITシステムに合わせることになり、従来の業務のやり方を変えなければならなくなります。
また、従来の業務の形に合わせてITシステムを作るとなると、非常に繁雑で複雑なシステムになってしまいます。

業務とITシステムのズレを直さないまま、ビジネスフローを運用すると、一体どうなるでしょうか?

日本企業のDX化が進まない理由:ITシステムと日本企業組織の構造不一致

日本企業のビジネスフローは一般的に、暗黙性、あいまいさ、根回し、手戻りなどを多く含む複雑なものだと言われています。
ITシステムがビジネスフローに合わない場合、ITシステムは効果的に機能しません。
これが、日本企業がDXを進められない一因です。

ITシステムがビジネスに合わないと、業務効率の改善も期待できず、システムの導入が見送られるか、無理に導入した結果、働きにくくなってしまいます。

IT界のサグラダ・ファミリア:みずほ銀行のITシステム不具合

ITシステムと日本企業組織の構造不一致の典型的な例として、長きにわたるみずほ銀行のITシステムが挙げられます。

みずほ銀行は数年前に新しいITシステムを導入しましたが、頻繁に不具合が発生し、顧客の信頼を損なう結果となりました。開発に19年、4000億円を費やしたにも関わらず、システムが複雑すぎて業務効率の改善にはつながりませんでした。

DX推進に必要な条件~2つの仮説~

私たちの研究では、以下の2つの仮説を検証と分析をしました。

2つの仮説
1.業務がマニュアル化されているかどうか:業務が文章化され、明確にされている場合、DXは進みやすい。しかし、業務が曖昧であるとDXは進みにくい。

2.横のコミュニケーションの頻度:部門間で密にコミュニケーションが行われる企業では、ITシステムがうまく機能せず、DXが進まない。

DXの進展度合を4段階に分けて分析しました。

業務が完全にDX化されている場合を最高のステップとし、全く進んでいない状態を最低のステップとしました。

1つめの仮説、マニュアルの整備状況を6段階で評価し、1ランクアップするごとにDX推進度合が0.3程度向上することが分かりました。

2つめの仮説、横のコミュニケーションも同様に6段階で評価し、1ランクアップするごとにDX推進度合に1.5程度の影響を与えることが明らかになりました。

分析の結論

日本企業のDXを推進するためには、曖昧で調整の多い日本企業の働き方を見直す必要があります。
ジョブディスクリプションが明確で、自分の役割がはっきりしている方が、DXは進みやすいのです。
現在風の働き方を変えなければ、DX化も進みません。

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他、企業の財務分析や、競合分析などの実績あり。

【お問合せ先】
higuchi@yasabi.co.jp

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研究発表【日本企業のDXが進まない理由を検証】それは、働き方の古さゆえhttps://yasabi.co.jp/20240422_ronbun_nihonkigyoudx/

著者・監修者

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