魔の川・死の谷・ダーウィンの海
Devil’s river, death valley, Darwin’s sea
- 技術を元にしたイノベーションを実現するために、研究開発から事業化までのプロセスで乗り越えなければならないとされる三つの障壁の例え。
- 基礎研究が製品化を目指す開発段階まで繋げる困難さを「魔の川」、開発段階へと進んだプロジェクトが実用化されるに至るまでの困難さを「死の谷」、製品の市場投入から産業として確立できるかどうかの関門を「ダーウィンの海」という。
フェーズごとに課題が異なるため、フェーズが変わるごとにマネジメント手法も変更することが重要
関連ワード
魔の川・死の谷・ダーウィンの海とは
特にハイテク技術に立脚するイノベーションにおいては、3つの固有の関門を通り抜ける必要があることを指摘している概念です。第1の関門は、魔の川。大学などの研究所で生まれた技術のうち、産業界で使えるものはごく少数です。何が産業界で使えるかはかなり運任せなところがあり、悪魔に魅入られるかどうかである、という意味で魔の川(Devil’s river)と呼ばれます。
第2の関門は死の谷(Death valley)。産業界で使えそうだ、となった技術のうち、製品化まで至れるものはさらに少数です。枯渇しがちな資源のなか、上手にマネジメントして製品化まで到達しなければなりません。
第3の関門はダーウィンの海(Darwin’s Sea)。ダーウィンの唱えた進化論のように、生存競争のなかで適者生存・選択淘汰が起こります。進化を続けながら、産業競争のなかを勝ち進めば、ようやく事業化が果たされます。
事例紹介
ユーグレナ
■ユーグレナの創業者、出雲充は東大在学時にバングラディシュに留学し現地の栄養失調の現実を目の当たりにします。その後、農学部に転部し栄養失調解決の糸口として出会ったのがミドリムシでした。
■大学卒業後、2005年にーグレナを起業。堀江貴文氏などから出資を受け開発を進めついにミドリムシの大量培養に成功します。魔の川を越えた瞬間です。
■2008年伊藤忠商事が本格的に資金援助を開始したことでユーグレナは世界初の技術を持つバイオベンチャーとして世間の注目を集めました。これが大きな転換点となり、その後も新日本石油や日立プラントテクノロジーなどとバイオ燃料の共同研究開発を行うこととなり、無事死の谷を越えることができたのです。
■ユーグレナは栄養食品だけでなく今や化粧品、飼料、バイオマス燃料など様々な可能性を秘めています。どの市場で産業化するか、ダーウィンの海を越えられるかはこれからのユーグレナの成長にかかっているといえます。
著者・監修者
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1982年生。経営学者/やさしいビジネススクール学長/YouTuber/東京大学 経済学博士
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専門は、経営戦略論・イノベーション・マネジメント、国際経営。
「アカデミーの力を社会に」をライフワークに据え、日本のビジネス力の底上げと、学術知による社会課題の解決を目指す。
「やさしいビジネススクール」を中心に、YouTube・研修・講演・コンサル・著作等で経営知識の普及に尽力中。
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