日本の高等ビジネス教育の歴史は、およそ140年ほどのごく短いものです。もちろん、それ以前にも商家の子弟が算盤を学ぶ場はありました。ですが、商業学校というものが成立し、人々に広くビジネス教育が開放されたのは、わが国の歴史の中では、本当に最近のことなのです。
本日は、そうした日本のビジネス教育の歴史を簡単に概観しながら、いま、何が足りていないのか、そしてAPSはいかなる理由で設立されたのかを説明していきたいと思います。
(動画での解説はこちら!聞き流して頂きながら文章を読んでもらえたらと思います。)
日本のビジネス教育の始まり、三商大
商業のための体系的な教育が始まるのは、日本では明治も20年を過ぎた頃からです。1887年、東京高等商業学校(現・一橋大学)が設立され、東京に日本初の商業大学が生まれました。ほどなくして全国の産業発展地域で商業学校設立の準備が始まり、1901年には市立大阪高等商業学校(現・大阪市立大学)が、1902年には神戸高等商業学校(現・神戸大学)が設立されました。この3つの商業大学「三商大」が、日本のビジネス教育の始まりだとされています。
20世紀を通じて、経営系・商業系学部が普及する
その後、戦前戦後を通じて、少しずつ経営系・商業系学部が普及していきます。時代の要請から、理系大学などでもビジネス分野の学部設置が進んでいくなどして、現在では経営学部が95、商学部が36存在しています(令和2年度)。1学部あたり200-300人程度だとして、年間3万人以上が、経営/商学学士として卒業していく計算になります。
ちなみに、経営学は「組織を運営する」ことに重きがあり、商学は「もの・サービスを販売する」ことに重きがあります。とはいえ、現在ではその垣根はほとんどなく、どちらを選択しても、同様にひととおりのビジネス知識を学ぶことができるでしょう。
ビジネススクールの登場
日本のビジネス教育の次なる大きな変化は、社会人向けのビジネススクールが設立されたことです。1978年には日本で先駆けて慶應ビジネススクールが設立されます。その後しばらくは後続が続きませんでしたが、2000年代に入り、社会人向けの高度ビジネス教育が注目されるなかで、たとえば2000年には一橋ビジネススクールが、2006年には現在の最大手となるグロービス経営大学院が設立され、国内でビジネススクール設立ラッシュが起こります。
自己に数百万円を投資して、大きく飛躍される。そんな人のためのビジネス教育が、ここに生まれたのです。
しかし、その規模は日本ではまだまだ小さいものにとどまっています。日本で、ビジネススクールの学位を取る人は、年間2500人程度とされています。アメリカでは年間10万人が学位を取るそうですから、その差は歴然です。
2010年代からは、リカレント教育の時代
次なる時代の変化は、2010年代から進むリカレント教育です。2010年にはUdemyが日本で活動を始め、2011年にはSchoo、2016年にグロービス学び放題と、月額数千円の範囲内での学び直し「リスキリング」の教育が普及し始めるのです。これらのサービスは、現在、数十万人が利用するようになっています。
今、足りないものは何か
こうして、少しずつ充実してきてはいる日本のビジネス教育ですが、社会人向け教育は、まだまだ未整備であるとみるべきだと思います。
ビジネススクールなどの絶対数も少ないのが現状ですが、特に現時点でまだ満たされていない教育サービスの形があるとすれば、「継続的に、しっかり学び続けていきたい」というニーズにこたえるものです。
ビジネススクールの登場によって、短期間に一気にレベルアップを図るような学びの場は作られました。さらにその後のリカレント教育サービスの普及により、手軽に学びたいニーズも満たされるようになっています。
しかし、しっかり体系的に知識を学んでいきたいけれども、費用的にも、時間的にも短期間に集中させることが困難な人は、この社会に少なからずおられるのです。
たとえば企業経営をされている方。自分が働かなければ会社が止まってしまいます。まとまった時間を捻出してビジネススクールに通える人は、ごく限られてきてしまいます。
たとえば地方在住の専門職の方。学びたいと思った時に、それに応えてくれる大学が地元に無い、ということは日本では決して少なくないのです。
あるいは、がつがつ・ゴリゴリと学ぶのではなく、自分のペースを保って、やさしい感情で学びたい人。組織を知る、社会経済の形を知る学びは、何もキャリアでの大きな成功を掴むためだけのものではありません。そんな人のための場もまた、現在の社会人教育の仕組みでは十分に用意されていないのです。
APSは、そんな存在になりたい。
現代社会を動かす組み「経営」を、自らの興味関心でじっくり学びたい人に。
学びを通じて、仕事、キャリア、人生に彩りを与えたい人に。
負荷をかけすぎず、自分のペースで、ゆっくり、しっかりとに。
APSはそんな、これまでにない教育機関の形として、皆さんのお役に立てたらな、と願っています。
(APS学長・中川功一)
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