ラテラルシンキングは、思考法の一つです。
思考法であるため、多くの物事に応用可能で、ビジネスにも使えます。
そこで今回の記事では、ラテラルシンキングの手法やビジネスに使うメリットについて解説します。
ラテラルシンキングとは?
ラテラルシンキングとは、エドワード・デボノ博士によって提唱された思考法の一つで、文字通り「横方向の思考」を意味します。
従来の縦型(ロジカル)思考が「ある一点から出発し、それを基に一貫した思考を重ねて結論を導き出す」のに対し、ラテラルシンキングでは「多角的に考え、柔軟な発想で新たなアイデアや解決策を生み出す」ことを重視しています。
この思考法の特徴は、既存のフレームや常識にとらわれず、自由な発想で新しい視点やアイデアを探求することです。
そのため、従来の問題解決方法が通用しない状況や、創造性が求められる仕事において、大いにその力を発揮します。
ラテラルシンキング3つの手法
ラテラルシンキングとは、「直線的な思考」ではなく、「横方向の思考」を意味します。
その活用法はいくつかありますが、以下に主な手法をご紹介します。
仮説を立てる
ラテラルシンキングでは、まず問題や状況に対する仮説を立てます。
この仮説は独自の視点から考えた斬新なものであればあるほど良いとされています。
パラレルシンキングとの違い
ラテラルシンキングとパラレルシンキングは同じ思考法のように思われてしまいますが、異なるものです。
パラレルシンキングは「全員が同じ方向を見て考える」ことを基本とするのに対し、ラテラルシンキングは「多角的に考える」ことを重視します。
思考のジャンプ
一つの視点に固執せず、常に新たな視点を探す「思考のジャンプ」が求められます。
これにより、通常見落としがちな新たな解決策を発見することが可能になります。
ラテラルシンキング・ロジカルシンキング・クリティカルシンキングの違い
ラテラルシンキングのほかにも、ビジネスに応用できる思考法はいくつかあります。
とくにビジネスに用いられるのが「ロジカルシンキング」や「クリティカルシンキング」です。
以下では、それぞれの違いについて解説します。
ラテラルシンキングとロジカルシンキングの違い
ラテラルシンキングとロジカルシンキングは、問題解決における二つの主要な思考法であり、それぞれ異なる特徴と利点があります。
それぞれの違いは、以下のとおりです。
新しい視点から問題を見つめイノベーションを生む。創造的な解決策を見つける。
既存の情報から論理的に結論を導き出す。妥当性が高い解決策を見つける。
ラテラルシンキングでは、直感や想像力を駆使して「思考のジャンプ」を行います。
対してロジカルシンキングは、既存の情報や証拠を基に論理的な結論を導き出すアプローチです。
両者は互いに補完的な関係にあり、適切なバランスで用いることで効果的な問題解決が可能となります。
ラテラルシンキングとクリティカルシンキングの違い
ラテラルシンキングとクリティカルシンキングは一見似ていますが、そのアプローチには大きな違いがあります。
それぞれの違いは、以下のとおりです。
新たな解決法を創出するために、既存のパターンから外れた思考を行う。新規性の高いアイデアを生み出す。
問題の本質を理解し、最善の解決策を見つけるために、論理的・批判的に考える。根拠に基づいた合理的な判断が可能。
ラテラルシンキングは、従来のパターンや枠組みから自由に発想を広げ、新たな視点から問題解決のアプローチを試みる思考法です。
一方、クリティカルシンキングは情報を客観的に分析・評価し、論理的な判断を下す能力を指します。
これらはそれぞれ異なる場面で効果的に活用できます。
ラテラルシンキングの主なメリット
ラテラルシンキングのメリットは、主に以下の3つです。
- 新たな視点で物事を考えることができる
- 創造的な解決策を見つけ出すことができる
- チーム内でのコミュニケーションを活性化させる
それぞれのメリットについて具体的に解説します。
新たな視点で物事を考えることができる
ラテラルシンキングは、新たな視点で物事を考えるようになります。
縦割りの思考から脱却し、多角的に視野を広げられるからです。
これにより、既存の枠組みやパターンに縛られず、自由な発想で問題解決に取り組めます。
創造的な解決策を見つけ出すことができる
創造的な解決策を見つけ出すこともラテラルシンキングの大きなメリットです。
従来の方法に固執せず、新しいアプローチで問題に立ち向かうことで、画期的な解決策を導き出すことが可能になります。
チーム内でのコミュニケーションを活性化させる
ラテラルシンキングはチーム内のコミュニケーションを活性化させる効果もあります。
従来の思考法を超えて新たな視点を共有することで、チーム内の意見交換や議論が活発化するからです。
これはチーム全体の知識や経験を最大限に活用し、より高質なアイデアを生み出すための土壌を整える役割を果たします。
ラテラルシンキングのデメリット
ラテラルシンキングでは、メリットだけではなくデメリットもあります。
思考法の変化は、決して簡単ではありません。
以下で主なデメリット4つについて解説します。
実行の困難さ
ラテラルシンキングは、従来の思考パターンからの脱却を要求します。
しかし、私たちは日常的に使っている思考パターンに頼ってしまいがちです。
そのため、ラテラルシンキングを実践することは容易ではありません。
新たなアイデアや視点を見つけ出すためには、習慣的な思考パターンを乗り越える必要があります。
実用性の欠如
ラテラルシンキングは創造性を刺激する方法ですが、その結果得られるアイデアや視点が実際に実装可能かどうかは別の問題です。
ラテラルシンキングによって生み出されたアイデアは、時には現実的な制約条件や実行可能性に欠けることがあります。
そのため、アイデアの実用性を評価する必要があります。
時間と労力の要求
ラテラルシンキングは、従来の思考パターンにとらわれないよう努力する必要があります。
新たな視点やアイデアを見つけるためには、時間と労力を費やさなければいけません。
問題解決やアイデア発想においては、ラテラルシンキングを継続的に行うことが望ましいですが、コミットメントと忍耐力が必要です。
社会的な認識の欠如
ラテラルシンキングは、社会的な慣習や規範にとらわれない発想を促すため、周囲の人々からは理解されにくいことがあります。
他の人が受け入れないような斬新なアイデアや視点を提案すると、反対意見や抵抗に直面することがあります。
ラテラルシンキングを実践する際は、社会的な認識とコミュニケーションのスキルも必要です。
ラテラルシンキングを鍛える5つの方法
ラテラルシンキングは、思考法を変化させるものであるため、簡単なゲームなどで鍛えられます。
すぐにでも実践できる方法なので、まずは気軽に実施してみましょう。
以下で5つの方法を紹介します。
問題解決ゲームやパズルを楽しむ
問題解決や論理的思考を刺激するゲームやパズルに積極的に取り組んでみてください。
クロスワードパズル、数独、脳トレゲームなどは、柔軟な思考や新たな視点を促す助けとなるでしょう。
他の視点を探る
普段自分が接点の少ない分野や業界について学ぶことで、異なる視点を取り入れることができます。
本や記事を読んだり、講演やセミナーに参加したりすることで、新たな知識や視点を獲得し、それを自身の思考に組み込むことができます。
アイデアブレインストーミングを実践する
アイデアブレインストーミングセッションを自身や他の人と定期的に行ってみてください。
時間制限を設けずに、自由にアイデアを出し合い、異なる視点を組み合わせることで、ラテラルシンキングを鍛えることができます。
ラテラルシンキングのツールやメソッドを学ぶ
ラテラルシンキングにはさまざまなツールやメソッドが存在します。
例えば、「逆思考法」や「SCAMPER法」などがあります。
これらのツールやメソッドを学び、実際の問題や課題に適用してみることで、ラテラルシンキングの能力を高めることができます。
チームでのワークショップに参加する
ラテラルシンキングはグループでの活動でも効果的です。
チームのメンバーや同僚と一緒にワークショップやアイデアブレインストーミングセッションに参加し、他の人の視点やアイデアと交流することで、ラテラルシンキングのスキルを磨くことができます。
ラテラルシンキング促進に欠かせないオズボーンのチェックリスト
オズボーンのチェックリストは、ラテラルシンキングを促進するために使用されるツールの一つです。
以下にオズボーンのチェックリストの例を紹介します。
これらの質問を問題や課題に適用することで、新たな視点やアイデアを見つけることができます。
オズボーンのチェックリスト
代替 | 他のものに置き換えることはできますか? |
組み合わせ | 何か他のものと組み合わせることはできますか? |
改造 | 何か変更することはできますか? |
反転 | 逆のものを考えることはできますか? |
廃止 | 何か削除することはできますか? |
場所の変更 | 何か別の場所に移動することはできますか? |
逆の順序 | 順序を逆にすることはできますか? |
情報の変更 | 何か情報を変更することはできますか? |
リバース | 何か逆のことを試してみることはできますか? |
要素の交換 | 何か要素を交換することはできますか? |
これらの質問を問題や課題に適用することで、既存の枠組みにとらわれずに新たな視点を見つけることができます。
問題や課題に対して個々の質問を反復的に適用し、可能な限り多くのアイデアを引き出してみてください。
オズボーンのチェックリストはラテラルシンキングの効果的な手法の一つであり、創造性を刺激し、新たな解決策やアイデアの発見に役立ちます。
ラテラルシンキングの進め方
ラテラルシンキングを実践するためには、以下の手順を参考にしていきましょう。
- 問題の定義
- 伝統的な思考パターンからの脱却
- アイデアの拡散
- アイデアの絞り込み
- 実行計画の策定
- フィードバックと改善
柔軟な思考を促し、新たな視点や創造的な解決策を見つけるために、これらの手順を応用してみてください。
問題の定義
まず、解決したい問題を明確に定義します。
問題がはっきりしていない場合は、具体的な課題や目標を設定しましょう。
伝統的な思考パターンからの脱却
ラテラルシンキングでは、従来の思考パターンからの脱却が重要です。
一般的なアイデアや解決策にとらわれず、新たな視点を見つけるために自由な発想を促します。
アイデアの拡散
さまざまなアイデアを生成するために、アイデアの拡散を行います。
関連性のない要素や概念を組み合わせたり、異なる視点からアプローチしたりすることで、多様なアイデアを生み出します。
アイデアの絞り込み
生成されたアイデアの中から、実用的で有望なものを絞り込みます。
実行可能性や実用性、目標に対する適合性などを考慮しながら、最も適したアイデアを選びます。
実行計画の策定
選ばれたアイデアを具体的な行動につなげるために、実行計画を策定します。
必要なリソースやスケジュール、責任者などを明確にし、実行に移すための手順を定めます。
フィードバックと改善
実行したアイデアの結果や効果を評価し、フィードバックを得ます。
成功した点や改善の余地がある点を把握し、次のアイデアやプロジェクトに反映させることで、学習と成長を促進します。
ビジネスにおいてラテラルシンキングが重要な理由
ここまで解説してきたラテラルシンキングは、ビジネスにも応用できます。
以下で、ラテラルシンキングがビジネスにどのように応用できるのか、なぜビジネスにおいてラテラルシンキングが必要になるのかについて解説します。
問題解決能力の向上
ビジネスは日常的にさまざまな問題や課題に直面します。
伝統的な思考パターンにとらわれず、ラテラルシンキングを用いることで、新たな視点やアプローチを見つけ出す能力が向上します。
これにより、より創造的で効果的な問題解決が可能となります。
イノベーションの促進
ラテラルシンキングはイノベーションの鍵となります。
従来のアイデアや方法にとらわれず、新たな発想やアプローチを追求することで、競争力のある新商品やサービスの開発につながります。
ラテラルシンキングを活用することで、企業は市場で差別化し、成長するための独自性を創り出すことができます。
チームの創造性と協働性の向上
ラテラルシンキングは個人だけでなく、チームの創造性と協働性を高めるためにも重要です。
異なるバックグラウンドや視点を持つメンバーが集まり、ラテラルシンキングを通じてアイデアを出し合うことで、より多様性のあるアイデアや解決策が生まれます。
また、チームメンバーが自由にアイデアを発信し合う環境が整えば、コミュニケーションと協力関係が促進されます。
環境変化への対応
ビジネス環境は日々変化しています。
新たなテクノロジーや市場のトレンド、競合他社の動向などにより、ビジネスは頻繁に変革を求められます。
ラテラルシンキングは柔軟な思考を促し、変化に対応するための新たなアイデアや戦略を生み出すことができます。
これにより、ビジネスは市場の変化や競争状況に対して適応し、持続的な成長を実現することができます。
ラテラルシンキングの成功事例
ラテラルシンキングは、企業の新商品開発やサービス改善、問題解決など様々な場面で活用されています。
以下に、その具体的な事例を紹介します。
- Apple社のiPhone
- Uber社のライドシェアサービス
企業の成功事例を参考にして、自社にも効果的にラテラルシンキングを取り入れてください。
Apple社のiPhone
携帯電話は単に通話やメールをするためのツールでしたが、Apple社はこれにラテラルシンキングを適用しました。
彼らは携帯電話を「ミニパソコン」と位置付け、インターネット閲覧やアプリケーションの利用を可能にしました。これにより、スマートフォン市場が大きく変化しました。
Uber社のライドシェアサービス
Uber社は既存のタクシーサービスに異なる視点を持ち込み、個人が車を共有する新たなビジネスモデルを構築しました。
これにより、移動手段が多様化し、新たな市場が生まれました。
まとめ
ラテラルシンキングは、単に「考え方を変える」だけではなく、新しい発想からチャンスや強みを見つける方法とも言えます。
そのために、ビジネスへの応用も可能なのです。
ラテラルシンキングを取り入れることにより、自社の新しい勝ち筋を見つけることも可能となるでしょう。
簡単なゲームなどでも鍛えられる思考法なので、ぜひラテラルシンキングを実践してみてください。
著者・監修者
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1982年生。経営学者/やさしいビジネススクール学長/YouTuber/経済学博士/関東学院大学 特任教授/法政大学イノベーション・マネジメント研究センター 客員研究員
詳しい講師紹介はこちら website twitter facebook youtube tiktok researchmap J-Global Amazon
専門は、経営戦略論・イノベーション・マネジメント、国際経営。
「アカデミーの力を社会に」をライフワークに据え、日本のビジネス力の底上げと、学術知による社会課題の解決を目指す。
「やさしいビジネススクール」を中心に、YouTube・研修・講演・コンサル・著作等で経営知識の普及に尽力中。
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