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ジョブ・クラフティングとは何か、経営学者が解説!

現代の働き方の鍵として注目されている概念「ジョブ・クラフティング」。この概念がどういうものなのか、どんな文脈から生まれてきたのか、どう活用すればよいかを経営学者が解説します!

目次

ジョブ・クラフティング(Job Crafting)とは何か

2001年に米国の経営学者レズネスキーとダットンによって提唱された概念です。とても簡単に言えば、自分の働きやすいように、仕事のかたちや、仕事の捉え方を変えて、よいモチベーションで、生産性高く働けるようにすることです。

この概念では、仕事というものを3層のレベルで捉えます。作業、関係、認知です。それぞれについて、変えられないところ(変えてはいけないところ)もあるのは事実だけれども、我々が思っているよりも仕事のデザインには自由度がある。その自由度を認識したうえで、自分が働きやすい形を作っていくのが、ジョブ・クラフティングです。

作業のクラフティング

実際に行われる作業。作業にはコアの部分と周辺の部分とがある。コアの部分については変えてはいけないところもあるので、慎重に。それ以外の部分では、もっと働きやすく、生産性高くできる部分は、少なくないはず。そうした部分を、合理的、効率的、そして何より自分として納得感があって働きやすい形に変えていくことが大切です。

関係のクラフティング

仕事における関わり合いの部分。人の仕事は個人で完結することは決してありません。必ず、誰かとの関わり合いのもとで仕事というものは成立しています。その、人の関わり合いを見直す。もっと多くの関係のなかで仕事をすることもできるし、それを絞ることもできる。それぞれの人とも、浅くも、深くも関わり方は調整できる。自分にとって居心地よく、仕事にとって望ましいか関わり合いをデザインする。

認知のクラフティング

仕事というものは究極的にあなたの中でどう認知されるか、です。世界の捉え方のことをスキーマ(Schema)と言います。このスキーマが良いものであれば、世界は色鮮やかに、よいものに見えてくるし、スキーマが悪いものであれば、世界は悪が渦巻き、あなたの敵が周りを埋めているような状態に見える。すべては見え方。であれば、認知の部分や、その認知に好影響・悪影響を与えている要因を見直して、認知をこそ作り直すべきだと考えるのです。

  • 働く動機も一人一人違えば、やりたい働き方も異なる。ならば、究極的には一人一人が自分の働き方をデザインするしかないとして、自分の働き方をデザインするもの。
  • 業務内容自体を意味する作業のクラフティング、仕事における他者との関わり方すなわち関係のクラフティング、仕事の捉え方である認知のクラフティングの3層からなる。

職務のうちで自分でデザインできる部分は決して少なくない。

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なぜ今、ジョブ・クラフティングが注目されているのか

要するに働きやすいように色々調整することでしょ?と言ってしまえばそれまでなのですが、このジョブ・クラフティングが重視されるに至る背景を知ると、働きやすさをデザインするということの重みと意義を、よく理解できると思います。

ジョブ・クラフティングの議論の前提は、「働く動機や、働きやすい仕事の形は、一人一人違っている」というところまで、学術研究が進んだことにあります。

典型的なのはマズローの欲求段階説をめぐる考え方です。かつては、これが人間の基本的動機モデルとして説明され、その正しさをめぐって大激論が繰り広げられていました。(マズローについての解説記事はこちら!)

しかし、マズローが正しいかどうか、という議論が、そもそも間違っていた。「人間は一様に同じような動機をもつ」という前提がおかしいのではないか、という疑義が出されるようになったのです。

もちろん、マズローをはじめとする動機付け研究にも、大いに意義はあります。人というものが「おしなべて」どういうことに動機をもつのかという一般論があってこそ、個別には違うという議論が可能であるからです。

ともあれ、こうした一般モデルでは私たち一人一人のありようを描き出すことはできない、というのが20世紀末ころの、組織行動研究の到達点だったのです。

それは、働き方についても同様です。古くは20世紀初頭にテーラーが向上仕事における「標準作業」を制定しましたが(テーラーなどの初期の動機付け研究についてはこちら)、こちらも、20世紀を通じて「個別の違いに配慮する」という形に進歩を遂げて来ています。

だとすれば、組織の中で、ひとりひとりの動機を最大化し、生産性をも最大化しようと思えば、ジョブ・クラフティングをするほかはない、という帰結に至るのです。

ジョブ・クラフティングはこの意味で、動機付け理論の最先端にあるという位置づけができるのです。

(ジョブ・クラフティングを最先端と位置付ける、21世紀動機付け研究の進展についての解説動画はこちら!)

いかにジョブ・クラフティングを実践するか

ジョブ・クラフティングの実践は、個人としてはさほど難しいことではありません。

  1. 作業、関係、認知の3層モデルに沿って、変えてはいけないこと、変えてもよいことを整理する
  2. 作業、関係、認知それぞれが、どういう状態であれば、自分にとって望ましく、また組織にとっても望ましいか、「あるべき姿」グランドデザインをする
  3. 現状とあるべき姿のギャップを特定し、仕事の形を変えていく。
  4. 変更においては、必要に応じて関係各方面と調整し、承認を得る。

以上がきちっと実践する場合のジョブ・クラフティングですが、こんなふうにあまり難しく考える必要も本当はありません。この作業無駄だよなと思えば、それを取り除いて良いか、周囲や規定を確認したうえで、作業変更を行う。関わり合いに疲れたなと思えば少し距離をとる。仕事が嫌になってしまっているなら、仕事の捉え方を変えたり、嫌な印象を与えてしまっている原因を取り除く。個別対応でも、結局は、あなたの働きやすいに繋がっていきます。

無駄な作業は、非効率であるから良くないというだけでなく、あなたのモティベーションにも悪影響です。その意味で、あなたが長期的に健康的に働く意味でも、あなたが無駄なんじゃないかと感じてしまった作業については、何らかの処置をすることが必要です。それを調べてみたら、ちゃんとした理由があって、その作業が必要だった、ということもあるでしょう。それが解ったことの効果はとても大きいのです。あなたの認知が「無駄だな」から「必要なことなんだな」に変わったことが、モティベーションに小さくない効果をもたらすからです。

一方、人事や、事業部門としてジョブ・クラフティングの考え方を導入するにおいては、権限移譲と、働き手との良好な関係構築が必要不可欠となります。制度面の修正としては、基本的には働き手側の自由度を高めるかたちになりますから、ジョブ・クラフティングの考え方の周知と、働き手と組織の双方が、相手に対して誠実に行動するという信頼構築が大前提となります。その上で、働き方や、従事する業務について、働き手側に自由度を与えるような修正こそが、求められるのです。

個別には、望ましい働き方は千差万別。それをこそ理論化し、実用可能にしたものとして、ジョブ・クラフティングは学術的・実務的にたいへん重要な意味をもちます。ぜひ、この考え方をあなたの職場、あなたの働き方に、応用するようにしてください!

事例紹介

面白法人カヤック

■面白法人カヤックは、変わったゲームアプリの開発やesportsの企画・運営を行うユニークな会社です。そのユニークさは仕事だけでなく働き方にも表れています。

■給与面では「サイコロ給」という制度を採用しています。毎月サイコロを振って「月給×(サイコロの出目)%」が賞与に+αされる仕組みです。また、人事面では社員全員が人事部に所属し、採用にも全員が関わる「ぜんいん採用」という制度を取り入れています。また、査定についてもユニークです。同じ職種の社員同士で月給ランキングを作ってもらいその相互評価によって月給が決まるのです。

■カヤックの制度はユニークなだけでなく、ぜんいん採用にしても月給ランキングにしても多くが全員が働き方を自分ごと化して考える制度として設計されています。それが仕事にも反映されユニークな仕事をする会社として評判を呼んでいるのです。

著者・監修者

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