皆さんは、自分で組み立てた家具や育てた野菜に特別な愛着を感じたことはありませんか?この現象には実は名前があり、「イケア効果」と呼ばれています。
イケア効果とは何か?
イケア効果は、自分で作ったものに対して特別な価値を感じる心理現象です。名前の由来は北欧の家具ブランド「IKEA」。組み立て式家具で有名なIKEAにちなんで名付けられました。
この効果が注目されるようになったのは、ハーバードビジネススクールのマイケル・ノートン氏らの研究がきっかけです。彼らは、人々が自作の製品に対して、既製品よりも高い価値を見出す傾向があることを発見しました。
イケア効果の心理的影響
- 愛着心の増大 自分で手間をかけて作ったものには、特別な愛着が湧きます。例えば、自分で組み立てたプラモデルは、出来合いのものよりも愛おしく感じるでしょう。
- 達成感と自信の向上 何かを自分の手で完成させる過程は、大きな達成感をもたらします。これは自信につながり、他の面でも前向きな影響を与える可能性があります。
- 投資した時間や労力の正当化 心理学では「サンクコスト」という概念があります。これは、すでに投資した時間や労力を無駄にしたくないという心理を指します。イケア効果は、この心理と密接に関連しています。
日常生活でのイケア効果
イケア効果は、私たちの日常生活のあちこちに見られます。
・家庭菜園:自分で育てた野菜は、スーパーで買ったものより美味しく感じませんか?これもイケア効果の一例です。
・DIY家具:自作の棚や机に愛着を感じるのも、同じ理由からです。
・手作りギフト:誰かのために手作りしたプレゼントは、既製品以上の価値を持ちます。
ビジネスでのイケア効果の活用
「あえて顧客に手間をかけてもらう」という発想
イケア効果は、ビジネスの世界でも大いに活用できます。
- カスタマイズ可能な製品開発 顧客が自分好みにカスタマイズできる製品を提供することで、製品への愛着を高められます。例えば、スマートフォンケースや靴のデザインを自分で選べるサービスなどが該当します。
- 顧客参加型のサービス 料理教室やワークショップなど、顧客が何かを作る過程に参加できるサービスは、イケア効果を活用していると言えます。
- ブランドロイヤルティの向上 顧客が製品作りに関与することで、そのブランドへの愛着が深まり、リピート購入につながる可能性が高まります。
まとめ:イケア効果の未来
イケア効果は、単なる心理現象にとどまらず、ビジネスや製品開発に大きな影響を与える可能性を秘めています。今後、消費者の「自分で作る」体験への欲求が高まる中、イケア効果の重要性はさらに増していくでしょう。
ビジネスパーソンにとって、イケア効果の理解と活用は、顧客満足度の向上や差別化戦略の構築に役立つ重要なスキルとなりそうです。興味深いことに、やさしいビジネススクールでは、このような行動経済学の知見を実践的なビジネス教育に取り入れているそうです。
イケア効果の視点を取り入れることで、製品開発やマーケティング戦略に新たな可能性が開けるかもしれません。自社のビジネスにどう活かせるか、考えてみる価値は十分にありそうです。
著者・監修者
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1982年生。経営学者/やさしいビジネススクール学長/YouTuber/経済学博士/関東学院大学 特任教授/法政大学イノベーション・マネジメント研究センター 客員研究員
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専門は、経営戦略論・イノベーション・マネジメント、国際経営。
「アカデミーの力を社会に」をライフワークに据え、日本のビジネス力の底上げと、学術知による社会課題の解決を目指す。
「やさしいビジネススクール」を中心に、YouTube・研修・講演・コンサル・著作等で経営知識の普及に尽力中。
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