フリーミアムとは何か:簡単に言うと
サービスの一部または全部を無料化するビジネスモデルのことです。
狭義には、①フリー(無料)部分とプレミアム(有料)部分を分けるビジネスモデルゆえに「フリー」「ミアム」だったのですが、今日では②サービス無料で広告収入で稼ぐビジネスモデルや、③アイテム等への課金をさせるビジネスモデルなども含めて、広く「戦略的に無料を活用するビジネスモデル」一般を指すようになっています。
上述の通り、そのバリエーションを大きく3つに分けるなら以下の通りになります。
・一部有料、上位機能は有料とする「フリー」&「プレミアム」型
・広告収入モデル
・アイテム等への課金モデル
いずれも、無料であることで顧客をひきつけ、コアユーザー化したときに収入が発生する点が共通です。ビジネス上のポイントは、①有料版への移行促進と、②無料に寄る潜在顧客への会員化の促しの2種類のマーケティングを行っていくことです。
- 無料版で人を集め、一部のコアユーザーから集金するビジネスモデルのこと。
- 一部機能を有料化するかたちや、「ガチャ」や「アイテム」に課金するかたち、広告モデルで稼ぐかたちなどがある。
無料にすることによる利用者のすそ野を広げることと、有料版への移行を促すことの2つを同時に行う
関連ワード
フリーミアムとは
「基本無料」の普及力は爆発的です。1円もかからないのであれば、誰しもがまずは手に取ってみようとするからです。この無料が持つ訴求力を武器に認知を広め、そのうちの数%を有料へと誘導することで、事業を成立させるのです。
2000年代頃から、オンライン空間上、特にゲーム等から広がりました。ユーザー数を集めるために基本無料で提供し、アイテムなどで課金します。今日では、ビジネス用ソフトでも基本無料のものが登場するようになっており、一般的なビジネスモデルとして定着しました。
FacebookやGoogle、YouTubeが広告料収入で大きな成功を収めていることはよく知られていますが、その成功があまりにも目を引くがゆえに、広告料モデルは儲かりやすいという誤解があります。現実には、長い期間にわたってユーザーを惹きつけ続け、十分なユーザー数を確保して広告収入を得られている事例は、思いのほか多くありません。Twitterですら十分な収益を上げられてはいないことを知っておきましょう。
論理解説
無料というものは、圧倒的なマーケティング効果をもたらすことが分かっています。支払うという行為は心理的コストが非常に高く、一切支払いが発生しないとする「基本無料」は、爆発的な普及力を有しています。1円もかからないのであれば、誰しもが、まずは一度手に取ってみようとするのです。
この無料というものが持つ訴求力を武器に、認知を広め、そのうちの数%を有料へと誘導することで、事業を成立させるのがフリーミアム戦略です。米国のビジネスライター、クリス・アンダーソンによる著作『フリー』によって広まった概念です。同著は無料戦略を幅広く収集し、よく分析・整理をしている良書です。なお、同著者による本にはほかに『ロングテール』『MAKERS(3Dプリンタなどの普及によって小規模メーカーが登場している情勢を報告した物)』など、いずれも現代ビジネスの重要側面を描き出したものが多くあります。
さて、フリーミアム。このビジネスモデルは、2000年代にオンライン空間上、特にゲーム等から広がりました。ユーザー数を集めるために基本無料で提供し、アイテムなどで課金するのです。今日では、ビジネス用ソフトでも基本無料のものが登場するようになっており、一般的なビジネスモデルとして定着するようになっています。
一般的に事業を成立させやすいのは有料会員型とアイテム課金型のようです。ビジネス分野では、マネーフォワードなどが有料会員型で成功を収めています。アイテム課金は、ウマ娘などゲームと相性がよく、爆発的な収益力をもちます。
一方、広告収入モデルを成り立たせるのは、業界トップの圧倒的地位が必要になります。Yahoo!Japan、Facebook、Google、YouTubeが広告料収入で大きな成功を収めていることはよく知られていますが、その成功があまりにも目を引くがゆえに、広告料モデルは儲かりやすいという誤解があります。現実には、それ以上の成功例長い期間にわたってユーザーを惹きつけ続け、十分なユーザー数を確保して広告収入を得られている事例は、思いのほか多くありません。Twitterですら十分な収益を上げられてはいないことを知っておきましょう。
事例紹介:食べログ
■飲食店専門のユーザー口コミ評価サイトである食べログは、2005年のサービス開始から基本的に無料です。現在では、近隣の美味しい店舗探しの標準ツールとして広く世の中に広まっており、月間利用者数は1億1000万人を誇ります。同様のサービスの中では圧倒的なシェアを獲得している人気のサービスです。
■そのうち有料会員は126万人です。有料会員になると無料会員では5位までしか見られなかったランキングがすべて見られるようになり、口コミ数や点数順などでソートもできるようになります。また、やさビ無料会員より割引率の高いクーポンが使えるなどのメリットもあります。さらにそうした機能が30日間無料で試せるというのも無料会員が有料会員になる心理的ハードルを下げる効果を担っています。
■基本無料にすることで広く世の中へ普及させること、そこからヘビーユーザーへ有料会員化の誘導をすること、その両方を上手にバランスしたフリーミアムモデルの好例といえるでしょう。
著者・監修者
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1982年生。経営学者/やさしいビジネススクール学長/YouTuber/経済学博士/関東学院大学 特任教授/法政大学イノベーション・マネジメント研究センター 客員研究員
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専門は、経営戦略論・イノベーション・マネジメント、国際経営。
「アカデミーの力を社会に」をライフワークに据え、日本のビジネス力の底上げと、学術知による社会課題の解決を目指す。
「やさしいビジネススクール」を中心に、YouTube・研修・講演・コンサル・著作等で経営知識の普及に尽力中。
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