本記事は、ドラッカーの仕事論・第2回目にあたります。が、もちろん今回から読んでも学びのある内容になっておりますので、はじめての方もぜひご覧ください!
今回は仕事と労働(work and labor)というセクションについて解説したいと思います。
この回は、非常に実践的な回です。内容を聞いていただくと、皆さんも実際に今あなたが目の当たりにしてる仕事をどうデザインするか、どのようにやったらクリエイティブに取り組めるのか、その大きなヒントになりますので、今回もぜひ最後まで読んでもらえたら嬉しく思います。
仕事と労働
このセクションを読み解く鍵は、仕事と労働は本質的に異なっているということ。
仕事というのは、この社会のために、あるいは誰かのために、誰かのニーズを満たすためにそこに存在している、客観的にそれが果たされるべきものとして存在しているもの、それが仕事なわけです。
一方、労働というのは何なのかと言えば、あなたが頭脳と肉体を使って、あなたの限りある時間を使って行われる、あなたの人生の一部になっているものです。それは主観的、認識論的に存在するもの。
この「仕事」と「労働」の二つが、一つになってザクッと単に仕事とだけ呼ばれていたりするわけです。
しかしこの仕事と、そのために投入する労働の部分、ある意味でアウトプットとインプットと言えるかもしれないこのような二つに区分してあげることによって、それぞれ別の種類のマネジメントが必要なんだということが見えてくるわけです。
仕事のマネジメント方法
じゃあ仕事ってどうやってマネジメントすればいいのかといえば、仕事というのはもう客観的に果たされるべきもの、社会のため誰かの幸せのために存在しているものなわけですから、これを管理しようと思えば、あえてそこに人間性を入れる必要が無い。果たされれば良いわけです。人間味を1回排除して、素直に仕事そのものを分析して、どう解決されるべきなのかを分析する。
「仕事」のマネジメントは、以下の3ステップからなります。
ステップ1、この仕事はどういう仕事なのか、仕事内容を分析する。社会の誰の、どのような目的のために、この仕事が存在しているのか、その仕事の果たされている状態がどのようなものなのか、分析してみましょう。
そして第2のステップとしては、その果たされている状態に至るために、どういうことを実行し、何を成して、いつ頃にどういうことをすればいいのか、この職務to doをデザインしていきます。
そして第3のステップ、その職務to doが果たされている過程をどう管理するか。単に、職務をデザインするだけでは今日の仕事ってのは完成しないんだということ。それを管理する手法まで作って、仕事なのだということ。それがうまく果たされているのか、それとも予定よりもスローペースになってしまっているのか、非常によく進んでいるのか、管理をしなきゃいけないということになるわけです。
この3ステップ、絶対に覚えておきましょう。というより、あなたの仕事に必ず導入するようにしましょう。まず客観的に求められている仕事を吟味する。実行法を考える。そして、マネジメント法を考える。
そしてこれをやる上では、あえて人間味は排除するわけです。ステップ123と、淡々とその果たされるべきジョブというものを分析し、実行計画に落とし、管理計画にしていく。まずはここまできっちりやるべきだということになるわけです。
労働のマネジメント方法
続いては、労働という側面に注目していきましょう。
そうなんです。あえてまずは人間味を排除して仕事としてどう果たされるべきなのかを一度デザインしきった後で、次には、そこに投入されるあなたの人生、頭脳、肉体をどう満足させ、どうケアをするかを考えなければならない。
この労働には、五つの次元があるとドラッカーは述べています。まあこれは学者的に妥当かは議論の範疇の外です笑。ドラッカーはともかく5つだと笑。そこに目くじら立てる必要はありません。とにかく5つのことを学べばよいのです。
第1の次元が物理的な次元。すなわちこの仕事をやるために、肉体をどうケアするか。いわゆる安全のみならず、それを何日も何日も続けて体が疲れ果ててしまわないのかどうかという形で、物理的にあなたがサスティナブルになるようにするには、どうしたらいいのかという目線が一つ。
そして第2には、心理的次元ということで、単に肉体が機能すれば人間はその労働を続けられるわけではなくて、あなたの頭・心が、この仕事は楽しいな、やっていて有意義だな、いい気持ちだなとそのように思えなければなかなか続いていかない。そりゃ仕事は楽しいことばかりじゃないですよ。つらいことがあるわけなんですけれども。ともあれ、あなたのこの仕事をしてるときの心理状態というものに注目して、それがサステイナブルになるようにデザインすべき。
第3には、社会的次元ということで、じゃああなたの肉体が健全で心が健全ならそれで仕事としていいですかというわけじゃないですよね。関わり合いがあって、あるいはその仕事を通じてあなたが社会におけるある種の居場所・地位を得られるということも大切になる。社会のために役に立っていると思えて、それで良い労働になるわけですから、この社会的に見てこの仕事に意味があるな、あるいはその社会との繋がり人と繋がりが感じられるかな、これも大切な側面、ここの点もケアしてあげないと、やっぱり仕事はさせればサスティナブルになりません。
そして第4には経済的次元、もちろんこれも大切ですね。しかるべき報酬がきちんと入ること。これ本当に大切なことです。ボランティア労働というのは絶対に続きません。サステイナブルにするためにはしかるべき報酬をきちんともらうということ、これは本当に若い方はよく勘違いします。ボランティアというのはこの社会の仕組みを破壊しかねない行為です。あなたが何らかの仕事を無報酬でやってしまった瞬間にそれをお給料をもらって、それでサスティナブルになっていた経済活動の循環が破壊されてしまう。みんな無報酬でやらなければならなくなってしまったとしたら、もう誰もそれでご飯が食べれなくなってしまって、結果、その活動は衰退してしまう。誰も経済的に継続的にできなくなってしまうんです。
このような意味において、経済という次元はとても大切。あなたが行った仕事に対して、報酬をもらうというところもきちんとデザインする、これとっても大切なこと。
第5には、政治的次元。この側面もやっぱ忘れちゃいけないんですね。仕事をする上ではどうしてもその組織の中で権力というものが発生する、あるいは名誉のある立場だったり、名誉のない立場というようなものが発生してきてしまう。どうしてもこの政治的な、上と下が人間社会においては仕事の中で生じてしまうんです。こういう仕事はプレステージの仕事、こういう仕事は俗に言う底辺だということ、ここのところもケアしてあげないことには、やっぱりその仕事はサステイナブルにはなりっこないわけなんです。
あなたは人間なのだから、ですからあなたが行うべき労働というのは、これらも様々な次元から見て、サステイナブルにデザインをされなければいけないのです。
まとめ
かくして、これら二つの目線からあなたの仕事はデザインされるべきだ。あなたの働くということは、このような目線からデザインするべきだということになるわけです。
どうです今回も皆さん、なるほどなと確かにこの視点活用していったら、仕事としてはどう果たされるべきか、労働としてはどうあるべきか、その二つがあって働き方だよねということをおわかりいただけたんじゃないかと思いますし、また非常にそれを実践しやすい形で改正してくれている章でもあるわけなんです。
ぜひ皆さんこの仕事と労働の違いを理解し、それぞれに良い形を作っていく、それを通じてあなたの良き働き方をデザインしてもらえばと願っています。
著者・監修者
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1982年生。経営学者/やさしいビジネススクール学長/YouTuber/東京大学 経済学博士
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専門は、経営戦略論・イノベーション・マネジメント、国際経営。
「アカデミーの力を社会に」をライフワークに据え、日本のビジネス力の底上げと、学術知による社会課題の解決を目指す。
「やさしいビジネススクール」を中心に、YouTube・研修・講演・コンサル・著作等で経営知識の普及に尽力中。
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