新規での投資やM&Aなどを行う際、その投資案件が金額に見合っているかどうかを分析しなければ、損をしてしまう可能性があります。将来的に利益が出ると判断できなければ、投資する意味はないためです。その判断に役立つNPVという指標があります。
本記事ではNPVの意味と重視される理由、計算方法や活用方法について解説します。
NPVとは
NPV(Net Present Value)とは、投資の意思決定の際に用いられる評価指標です。日本語では正味現在価値とも呼ばれ、対象の投資をすることで得られる利益の大きさを表しています。計算式は後ほど紹介しますが、算出されたNPVがプラスであり値が大きければ大きいほど投資価値が高いと判断できるのです。
投資において、一般的には同じ金額であれば1年後に受け取るよりも今受け取る方が価値が高いと考えられています。投資を通じてお金を増やすことができるというのが理由で、その価値を換算して投資判断を行うのがNPVです。計算式は以下の通りです。
NPV(正味現在価値)=PV(現在価値)-投資額
NPVを計算するには、次の2つを算出しなければなりません。
- 現在価値(PV)
- 割引率(IRR)
それぞれ詳しく見ていきましょう。
現在価値(PV)
現在価値はPV(Present Value)と表現されるもので、現時点で将来獲得できるお金の価値がいくらなのかを表すものです。NPVを算出するためになくてはならない要素ですが、計算式自体は難しくありません。なお、以下の計算式で用いる年数はnとします。
PV(現在価値)=n年後に受け取る金額 / (1+利益・割引率)^n
※「^n」はn乗(累乗)を表す
詳細な数字を用いた計算例は「NPVの計算方法」で解説しますが、上記の式でPVを算出できます。
割引率(IRR)
PVを算出するために必要なものが割引率(IRR:Internal Rate of Return)です。内部収益率とも言います。NPV=0となる割引率を指していますが、これは投資金額と将来受け取れるお金の価値が同じであることを示しています。
本記事内で紹介する計算例では割引率をすでに算出したものとして計算しますが、IRRの計算式は次のようになっています。
IRR=(投資金額(マイナスキャッシュフロー)+1年目のキャッシュフローのPV+2年目のキャッシュフローのPV+……)=0
上記の計算式にPVの計算式を代入して求めますが、利益・割引率を「r」として設定します。残る箇所に数字をあてはめて計算すると、IRRが計算できる仕組みです。
なお、NPVやPV、IRRは関数電卓やExcelの関数を用いて計算することもできます。手計算する必要はありませんが、計算方法は知っておくといいでしょう。
NPVが重要とされる理由
NPVは特に不動産投資において重視した方がいいと言われています。その根拠となるのが割引キャッシュフロー法(DCF法)の基礎となっているためです。
家賃収入などの不動産の収益価格を算出する方法の一つで、手取り額である純収益と復帰価値を、それぞれが発生した時期に合わせて現在価値に換算し直し、総額を出すものです。
NPVは割引キャッシュフロー法の基礎であり、不動産投資で利益が発生するかどうかを判断する重要な計算式となります。
不動産投資における重要性を例に出して紹介しましたが、投資において投資額以上の価値が出るかどうかは非常に重要なポイントになるでしょう。そのため、将来的な価値を算出するMPVが投資において重要とされているのです。
NPVの具体的な計算方法
先に紹介した計算式に具体的な数字を入れ込みながら、NPVの計算方法を整理していきましょう。今回は以下の条件を使用するものとします。
- 投資価格:5000万円
- 割引率:3%
- 年ごとの利益:300万円
- 投資計画:5年
これをNPVの計算式に当てはめると、次のようになります。
NPV=(300万円×5年)/(1+3%)^投資年数
上記の条件ではNPVがマイナスとなっています。つまり、この投資はすべきではないという判断を下すことができるのです。
では、収益を800万円に変更してみるとどうなるでしょうか。結果は以下の通りです。
結果は変わらずNPVがマイナスのままですが、収益が異なると額が大きく変動しているのがわかります。このように、将来的な価値を算出するには、NPVを算出する必要があるのです。NPVがプラスになれば、投資を進めてもいいと判断できます。
ただし、今回の計算では実際に投資を行うために発生する費用や別途発生する価値については無視しています。本記事で紹介したNPVの計算方法は概算を求めるものであることを理解しておいてください。
まとめ
投資は今ある資金を使って将来の資金を購入することと同じだと言われています。将来の資金は実際にその時になってみないとわかりませんが、NPVを用いることでおおよその判断材料にはなるでしょう。Excelなどの表計算ソフトや関数電卓を用いれば簡単に計算できるため、投資をする前の材料として計算しておくことをおすすめします。
著者・監修者
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1982年生。経営学者/やさしいビジネススクール学長/YouTuber/東京大学 経済学博士
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専門は、経営戦略論・イノベーション・マネジメント、国際経営。
「アカデミーの力を社会に」をライフワークに据え、日本のビジネス力の底上げと、学術知による社会課題の解決を目指す。
「やさしいビジネススクール」を中心に、YouTube・研修・講演・コンサル・著作等で経営知識の普及に尽力中。
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