「カレーハウス CoCo壱番屋」で知られるのCoCo壱のフランチャイズチェーンの新社長に、バイト出身の22歳の女性が選ばれたというニュースが話題になりました。
このニュースに関して、賛否両論が飛び交い、SNSでも激しい議論が繰り広げられました。
果たして、この決定は経営学的にどう評価すべきなのでしょうか?
経営学者の視点から紐解いていきます。
この記事は、「ココイチFC新社長はバイト上がりの22歳!これって有りなの?経営学者が斬る!【時事解説223】」という動画から「アッパーエシュロン理論」についてテキスト形式で読みやすくまとめたものです。
事実確認:CoCo壱本体ではなくフランチャイズ店舗の話
まず、事実確認をしましょう。
22歳の女性が社長になったのは、CoCo壱本体ではなく、関東で25店舗を展開するフランチャイズグループ「スカイスクレイパー」という会社です。
彼女は高校1年生でバイトを始め、数年後にはこのチェーン店の中でもわずかに15人しかいない接客のスペシャリスト(CoCo壱の技能資格「ココスペシャリスト」最上階級「スター」)として認定されました。その実績を評価され、20歳で次期社長に選ばれ、帝王学を学んで22歳の2024年5月から社長に就任しました。
賛否両論:若手社長に対する様々な見方
22歳の若手社長の誕生に対して、人々の反応は様々です。
「若者に夢を与える大抜擢」と前向きに捉える人もいれば、「ただのお飾りだ」と冷笑する人もいます。また「年齢関係なく力のある人はいる」と肯定的な意見や、「何か裏があるのでは?」と懐疑的な見方もあります。
しかし、これらの議論は、社長の本質を捉えていないと言えるでしょう。
経営者・社長の役割とは? ヘンリー・ミンツバーグの役割論
半世紀前に、経営学者のヘンリー・ミンツバーグが研究の中で経営者の役割を述べています。
経営者の役割は、大きく分けて4つあります。
意思決定:戦略の計画・策定/戦略作成のために財務状況や内部組織の把握も行う
リーダー:管理・統率・動機付け/社員を引っ張っていく、導いていく力
対外的代表:会社の象徴・広報・交渉者/対外的な代表者であること
内部調整:問題解決、資源配分、繋ぎ役/会社内で起こっていることを把握し整えること
経営者・社長の役割は、意思決定を行い、リーダーシップを発揮し、対外的な代表者としての役割を果たし、内部の調整を行うことです。
つまり、バイト経験や店舗運営のスキルだけでなく、財務状況や戦略立案、組織運営など、広範な知識と経験が求められるのです。
バイト経験が社長業に通じるか?
バイト経験が豊富であっても、社長としての仕事とは大きく異なります。
店舗の運営とフランチャイズチェーン全体の経営は、要求されるスキルセットが大きく異なるからです。
したがって、単に「バイト上がりだから」という理由だけで、彼女の能力を判断するのは早計です。
トップは一人ではない アッパー・エシュロン理論で会社を考える
ここでポイントとなるのは、経営において、トップは一人ではなく、経営チーム全体で業務を分担しながら運営していく「アッパー・エシュロン理論」を理解することが重要です。
スカイスクレイパーの社長を支えるベテラン経営者たち
では、「スカイクレイパー」の経営陣はどのようになっているかを確認してみましょう。
今回の新社長を補佐する経営陣には、元社長であり、フランチャイズ制度を活用して20代で起業した西牧会長や、経験豊富な木村常務が名を連ねています。この強力なサポート体制を考慮すれば、新社長が大役を果たすことは十分可能性があると言えるでしょう。
新社長に託された未来と期待
今回のスカイスクレイパー新社長の抜擢は、若者に対する挑戦のメッセージでもあり、20代での社長業が決して早すぎることはないという経験に基づく判断です。
この経営チームが機能するかどうかは今後数年の動向を見守る必要がありますが、現時点で否定的な評価を下す必要はありません。これからの活躍が期待されます。
著者・監修者
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1982年生。経営学者/やさしいビジネススクール学長/YouTuber/経済学博士/関東学院大学 特任教授/法政大学イノベーション・マネジメント研究センター 客員研究員
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専門は、経営戦略論・イノベーション・マネジメント、国際経営。
「アカデミーの力を社会に」をライフワークに据え、日本のビジネス力の底上げと、学術知による社会課題の解決を目指す。
「やさしいビジネススクール」を中心に、YouTube・研修・講演・コンサル・著作等で経営知識の普及に尽力中。
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