感性工学(秋山 正晴・感性AI株式会社)

開講時期:2025年1月~2025年2月
「消費者の感性に訴える」という言葉はよく使われますが、その実現は「勘と経験」に頼りながら進めている方も多いのではないでしょうか。
企業側の思惑と消費者の感性は必ずしも一致するとは限りません。ただ、科学的手法を用いることで、消費者の「いいね」に近づくことができます。
手に取りたいパッケージ、質感のよい素材、居心地のよい空間など日々の生活においてふれるさまざまなものに感性を活かせるフィールドが広がっています。

講師プロフィール

1974年生まれ。1997年都市銀行に入行。都内店舗で窓口・融資業務を担当後、システム部門でダイレクトバンキング(インターネット・電話・モバイル)などの開発に従事。2005年京王電鉄に入社。経営企画部門(グループIT戦略、グループ事業計画立案、M&A)を経験。京王電鉄バスに出向後、高速貸切バス事業やMaaS(Mobility as a Service) 企画・推進などを担当。2022年6月より 感性AI株式会社 代表取締役社長CEOに就任(国立大学法人 電気通信大学発ベンチャー企業)。消費者の共感を得られるものづくりやマーケティングを目指す企業の支援を行う。趣味は温泉巡り。

秋山先生の詳しいプロフィール

科目概要

昨今の市場環境は変化が早く厳しい競争環境にさらされており、価格や機能だけは他社との差別化が難しい状況にあります。そのような中、商品やサービスの陳腐化や価格競争を避けるための新しい付加価値として感性に着目する企業が増えています。感性を客観的なデータとして取得・分析してビジネスに活かすこと、これが感性工学の根底です。
感性工学
の科目では、数学的な説明は極力行わず、ビジネスシーンでの活用事例に重点を置きながら、感性工学の概要について解説させていただきます。

感性工学を学ぶことで、できるようになること

 曖昧な感覚を数値化し、客観的な「共通の物差し」を持てるようになる

感性工学を学ぶことで、五感を通じて脳が感じる「心地よい」「ザラザラする」といった曖昧で主観的な感覚を、AIを用いてデータ化・数値化できるようになります。
これまでは人によって捉え方が異なり、議論が平行線になりがちだった「感性」という領域において、客観的な「共通の物差し」を得ることが可能になります。
もちろん、専門的な機器が無い中では精緻な分析は難しいこともありますが、Excelレベルのアンケート分析から、感性工学的なものの見方をマスターすることができます。

勘と経験に頼らない、確度の高い商品開発やマーケティングができるようになる

従来、消費者の感性に訴える物作りやデザインは、担当者の「勘と経験」に依存する部分が大きいものでした。感性工学の手法を取り入れることで、科学的なアプローチによって消費者に受け入れられる「確度」を高めることができます。
具体的には、商品のネーミング、パッケージデザイン、素材の触り心地などが、コンセプトと正しくリンクしているかを解析し、瞬時に消費者の反応を予測して戦略的に最適化できるようになります。

③感性価値を創出し、価格競争やコモディティ化から脱却する糸口をつかめる

現代の市場では、機能や価格だけでは差別化が難しい「コモディティ化」が大きな課題となっています。感性工学の視点を持つことで、消費者の感性に働きかけ、感動や共感を生む「感性価値」をビジネスに組み込めるようになります。 機能的な価値だけでなく、プラスアルファの付加価値として感性を戦略的に活用することで、単なる価格競争に陥ることなく、独自の競争力を持ったビジネスを展開する目線を持つことができます。

ライブ

ライブ講義を無料でご視聴いただけます!

消費者の感性を知ろう~消費者行動は感性に左右されます~

今回は、「感性をビジネスに役立ててみませんか?」ということがテーマです。工学というと数学・物理をイメージして特に文系の方は「げっ!!」と思うかもしれませんが、今回は、感性という分野に興味を持ってもらうことを目的にしていますので、数式を使わず、分かりやすく全体像を説明したいと思っています。(私も文系です)

オンデマンド講義

第1回 イントロダクション

2025年1月6日(月)12:00~

感性工学とは?

感性工学を一言で表すならば「人間の曖昧な感性を数値化・可視化し、科学的な手法で商品開発やマーケティングに活用する学問」です。

定義と目的

感性工学には明確な一つの定義はありませんが、一般的には「感性と工学を結びつける技術」であり、人間に喜びや満足をもたらす商品作りを工学的に行う分野とされています。
具体的には、商品やサービスに触れた消費者が持つ「心地よい」「高級感がある」といった曖昧な印象を測定し、感性データとして分析・数値化します。その結果を物作りのサイクル(作る・評価する・改善する)に組み込むことで、より消費者に受け入れられる製品・サービスを目指します。

感性工学の役割

感性工学の重要な役割は、数値で表せる「物理的な量(物性)」と、人間が感じる「感性」の間の関係性を明らかにすることにあります。
具体的には
・「乗り心地が良い」と感じるための、自動車のサスペンションの適切な強さを求める。
・「口どけが良い」と感じるための、チョコレートの最適な配合を導き出す。
…このように、唯一の正解がない曖昧な理想を、科学的に追求していくのがこの分野の醍醐味です。

歴史的背景

感性工学は約50年の歴史を持つ分野です。
創設: 1970年代に、広島大学の長町三生名誉教授によって創設されました。
命名: 感性工学という言葉自体は、当時のマツダの社長であった山本健一氏が名付けたとされています。
現在では「Kansei Engineering」として海外にも普及しており、自動車、化粧品、食品、繊維など、幅広いメーカーで採用されています。

ビジネスにおける意義

感性工学の最大の意義は、人間中心の製品開発ができるようになる点です。
これまでは作り手の「勘と経験」に頼らざるを得なかった部分を、AIなどのテクノロジーを用いて客観的なデータに基づき判断できるようになります。これにより、顧客満足度の向上、イノベーションの促進、そして市場競争力の強化が期待できます。
もちろん、熟練の職人や敏腕デザイナーの腕によりをかけた製品開発も重要です。ただ、そういった一握りの天才の腕に頼ることなく、多くの人に愛される商品を科学的知見を用いて開発していく…というのが、感性工学の最も重要な貢献です。
感性は人によって異なるものですが、感性工学では目的に応じて、一人の感性を突き詰めるのか、あるいは多くの人の共通項を見出すのかを使い分けながら、消費者に受け入れられる確度(=成功率)を高めていくことを目指します。

第2回 感性とは

2025年1月8日(水)12:00~

・感性の定義
・人間の情報処理のプロセス(知覚・認知・感情)
・五感の役割
・ゲシュタルト心理学

第3回 五感に着目しよう①(視覚)

2025年1月13日(月)12:00~

・光の物理的特性
・視覚の仕組み
・色の特性と感性
・視覚×感性の活用事例

第4回 五感に着目しよう②(聴覚)

2025年1月15日(水)12:00~

・音の特性 (周波数解析)
・聴覚の仕組み
・カクテルパーティー効果
・音韻と感性(ブーバ・キキ)
・聴覚×感性の活用事例

第5回 五感に着目しよう③(触覚・嗅覚・味覚)

2025年1月20日(月)12:00~

(1)触覚
・触覚の仕組み
・触覚の発展形:熱さ、痛み、かゆみ
・触感の再現(最新の技術)
・触覚×感性の活用事例
(2)嗅覚
・においの特性
・嗅覚の仕組み
・嗅覚×感性の活用事例
(3)味覚
・味の特性
・味覚の仕組み
・味覚×感性の活用事例

第6回 感性を把握しよう① ~感性の測定と分析~

2025年1月22日(水)12:00~

・感性可視化のスキーム(全体像)
・感性の測定方法
・感性データの分析方法
・分析のイメージ

第7回 感性を把握しよう② ~一連の流れをつかむ~

2025年1月27日(月)12:00~

・実施プロセス
・コンセプト・テーマの設定
・感応評価・感性評価
・分析⇒対応⇒評価

第8回 感性を活用しよう

2025年1月29日(水)12:00~

・感性に訴えかける商品開発
・感性を活用したマーケティング

ガイダンス|感性工学はこんな科目です

はじめに

感性工学をマスターすることで、「かっこいいデザイン」や「心地よい肌触り」といった、言葉にできない曖昧な感覚(感性)定量化・可視化し、ビジネスに役立てることができます。
曖昧な感覚を「共通の物差し」に変え、勘と経験→確度の高い戦略へ。
難しい数学や統計学の詳細は専門家に任せ、ビジネスパーソンとして「感性の視点をどうビジネスに役立てるか?」という全体像を掴むことを重視しています。
“感性”という新しい視点を取り入れることで、ビジネスに新たな付加価値を生み出す力を養っていきましょう!

感性工学の具体的な使い方

専門的な知見やAI技術がなくても、ビジネスの現場で「感性」を捉え、活用するために取り入れられる代表的な手法を紹介します。
テクノロジーの詳細を知ることよりも、
「感性の視点をどうビジネスに役立てるか」というイメージを持つことが重要です。

①オノマトペ(擬音語・擬態語)による直感的な言語化
特別なツールがなくても、商品の質感や使い心地を「オノマトペ」で表現してみることは非常に有効です。

直感の抽出:人間は「摩擦抵抗が〇〇」といった数値よりも、「ツルツル」「ザラザラ」といった言葉を直感的に発しています。これらを収集することで、機械では測りきれない人間の感覚的な違いを把握するヒントになります。

音の響きの活用:たとえば、「キラキラ」は心地よい、「ビチビチ」は不快といったように、音の響きにはある程度の法則性があります。ネーミングやキャッチコピーを考える際、その音の響きがターゲットにどのような印象(快・不快など)を与えるかを意識するだけでも、感性工学的なアプローチの第一歩となります。

② 対になる形容詞を用いた「物差しの作成」(SD法)
感性工学で古くから使われている手法に、「対になる形容詞」で印象を評価する方法があります。これはAIがなくても、アンケートや社内評価で実施可能です。

評価軸の設定:たとえば「明るい―暗い」「暖かい―冷たい」「水々しい―乾いた」といった対極にある言葉をいくつか用意します。

イメージの可視化:対象とする商品や空間が、これらの軸のどこに位置するかを評価することで、曖昧な印象をパラメーター(数値)として扱うことができ、客観的な議論のための「共通の物差し」が得られます。

感性工学的アプローチ

①目的とシーンの明確な定義
感性工学的な手法以前の極めて重要なステップとして、何のためにその感性を活用するのか?という目的と、想定されるシーンを絞り込むことが挙げられます。

状況による変化の理解:たとえば同じ青色でも、商品のパッケージなのか、空間デザインなのかによって、受ける印象(快・不快)は全く異なります。

ターゲットの特定:誰が、どのような状況でその商品に触れるのかというシチュエーションを具体的に設定することで、どの感性データに注目すべきかが明確になり、精度の高い施策が可能になります。
②既存の口コミや自由記述欄の読み解き
専門的なテキストマイニング技術がなくても、顧客の生の声を感性の視点で分析することは可能です。

印象ワードの抽出:顧客満足度を5段階評価だけで見るのではなく、自由記述欄にある印象を表すキーワードに注目します。

再来店や共感の理由探し:どのような形容詞やオノマトペが多く使われているかを分類することで、顧客がどこに感性価値(感動や共感)を感じているのかを推測する手がかりになります。

まとめ

このように、まずは「身の回りの感覚を言葉(形容詞やオノマトペ)に置き換え、それを共通の物差しとして比較する」という姿勢を持つことが、感性をビジネスに生かすための基本となります。

さらなるアウトプットをしたい方へ

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参考テキスト

【概略】今回の講義内容に沿って全体をもう一歩掘り下げたい
「感性工学への招待」篠原昭・清水義雄・坂本博 森北出版 →絶版 (図書館などで確認してください)

【理論】オノマトペをはじめとした心理学的手法を中心に概念・理論を深掘りしたい
「感性情報学」 坂本真樹 コロナ社 (2,600円+税)

【事例・手法】感性工学の活用事例と手法を徹底的に網羅したい
「感性工学ハンドブック~感性をきわめる七つ道具~」 椎塚久雄 朝倉書店 (16,000円+別)

【実践】実際にやってみたい、アンケートの取得と統計的な分析手法の具体的な中身を知りたい
「人間工学ガイド – 感性を科学する方法」 福田忠彦研究室 サイエンティスト社 (3,300円+税)

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