イノベーターのジレンマ
Innovator’s Dilemma
- 既存顧客のニーズを満たすことに経営資源を割いた結果、別の顧客が抱く別の需要に気付けず、異質のイノベーションを起こした新興企業に市場を奪われる現象。
- 企業が顧客の声にこたえることは大切なことだが、企業の存続のためには次のイノベーションの取り組みも欠かせない。
イノベーターのジレンマを防ぐためには、独立した小規模組織に十分な経営資源を割り当てて新事業を任せながら、次のイノベーションを生み育てる
関連ワード
イノベーターのジレンマとは
イノベーションとは何か、ということに関する重要な問題提起です。一般に、「あの企業は業界のイノベーターだ」と目されるような優良企業は、顧客の声を聴き、最新技術を登載し、取引先ともよい協業のうえで優れた製品・サービスを提供します。
しかし、そこに現われるのが、業界の常識を覆すような製品・サービスを出してくる企業です。全く違う顧客の声に対応し、技術的にも別に凄いとも思えないような品を、新しい取引先企業と一緒に提案してくる。“イノベーター”と目される、技術に秀で主要顧客のニーズにこたえている企業は、そうした新機軸な製品・サービスの真価を見誤ってしまいます。そして、気がつけばその新たな競争軸を提案してきた企業に、市場を奪われてしまうのです。
これが「イノベーターのジレンマ」と言われる所以です。一般的な観点からすれば優良な“業界のイノベーター”は、新機軸な製品「破壊的イノベーション」には対応できません。従来軸で先進技術を追求し、顧客ニーズにこたえられる存在もイノベーターなら、全くの新機軸を提案する企業もイノベーターです。前者は産業の構造を強化し、後者は産業の構造を破壊するのです。
事例紹介
ガラケーとiPhone
■ガラケーはまさにイノベーターのジレンマの好例です。かつての日本の携帯電話市場は顧客の声を聴き、競合に対して技術的に優位に立とうとする企業しかおらず、既存の方向性に縛られた製品を各社がいくつも出していました。
■そんな市場に2008年、iPhoneが現れました。しかし、当時の日本ではメーカーも通信キャリアも、iPhoneに対してはそこまで注目していませんでした。画質も悪く、バッテリーの持ちも悪く技術的にも何が秀でているのか誰にもわからなかったため。市場に受け入れられるとは思わなかったのです。これはガラケーの評価軸でiPhoneを見てしまったため、その真価を評価できなかったことが要因です。
■そうこうしているうちに市場はすべてiPhoneをはじめとした海外製のスマートフォンに席巻され、日本のスマートフォンは「ガラパゴス化」してしまったのです。iPhoneはまさに日本の携帯電話市場に「破壊的イノベーション」を起こしたと言えるでしょう。
著者・監修者
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1982年生。経営学者/やさしいビジネススクール学長/YouTuber/東京大学 経済学博士
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専門は、経営戦略論・イノベーション・マネジメント、国際経営。
「アカデミーの力を社会に」をライフワークに据え、日本のビジネス力の底上げと、学術知による社会課題の解決を目指す。
「やさしいビジネススクール」を中心に、YouTube・研修・講演・コンサル・著作等で経営知識の普及に尽力中。
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