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イノベーションに必要な「資源動員」という考え方

本日は、イノベーションを志す皆さんに、とっても役に立つ考え方、資源動員という考え方をお伝えしたいと思います。

ちなみにこちら、立命館大学のイノベーション戦略論のフィードバックを兼ねておりますが、一般の皆さんにもイノベーションを志すときにどんな点を注意するべきか。そんなことが伝わる内容になっていますので、ぜひ今回もまた学びを深めてもらえたらと願っています。

目次

お題

こちらがですね、立命館の学生諸君に考えてもらったお題です。【プロトタイピングってどんな効果をもたらしますか】。

プロトタイピングというのは、現場で実証実験をしたり、実際に物を作ってみたりしまして、それをユーザーさんに使ってもらって、あるいは社内のテストユーザー代わりになる人に実際にシミュレーションしてもらって、どんな感じかな、実際にちゃんと機能を果たしているかな不具合はないかな、そういうのを確認するのが、プロトタイピングという活動なんですね。

イノベーション活動の中では必ずやらなければならない作業で、実証実験みたいな表現を使うこともありますが、とにかくこのイノベーション活動の後半、市場に出す直前ぐらいに、ちゃんと物事がうまく回ってるかどうかを確認しながらちょっと微修正をかけていく、そんなときに使われる方法です。

こちら、写真に撮っておりますのは、私が大阪大学におりましたときに研究室として携わりました、大阪のダイヘンという会社が開発しました自動運転車です。これが狙ったようなニーズを満たせているか、ちゃんと動くかどうかの実証実験のプロジェクトの写真です。

当時、中川研究室でもいろいろプロトタイピングにもお手伝いをさせてもらったのですけれども、それはどういう効果をもたらすのか。第1はもちろん、仮説検証ですね。ちゃんと機能するのか、ユーザーニーズを満たせているのか、不具合がないのか、仮説を検証する。

もちろんこれがメインなんですけれども、皆さんにここで考えてもらいたいのは、それ以外に副次的な効果ってどんなものがあるんだろうかということです。

そのキーワードが、資源動員。露出することでマーケティングにもなるし、出資者も増えてきたりするわけですが、そうしたものを一括りに、イノベーションに必要な資源が集まってくる現象のことを、資源動員という言葉を近年は当てるようになっています。

資源動員

資源動員というのは、かつて社会学の方で1970年代頃にひとしきり議論されたような、ちょっと古い理論なんですけれども、これが今再注目されている。当時、この社会は変わらなければいけない、オイルショックとか冷戦とかいろんな問題があった時代において、社会を変えるためには、世の中の自然な成り行きで機運の高まりを待つのではなく、何人かの有力者が実際に動員をかける、お金を出したり人々を動かしたりして資源に動員をかけることで、社会変革は加速できるのだとした理論です。

社会の変革を意図する人は、資源を動員しなければならない。資源を動員する戦略を立てましょうというのが、資源動員説というものです。

この理論を、2010年頃に経営学、とりわけこのイノベーション研究に持ち込んだ人たちがいます。一橋大学の武石彰先生たちの研究グループなんですけれども、『イノベーションの理由』のタイトルで発表された、重要な文献です。イノベーションだって、やっぱり社会変革の一部ですからね。ですから、イノベーションを起こそうと思うならば、その商品サービスが世に出るために、社内外からリソースが動員される。

これをうまくやりきっているとイノベーションが実現できている、こういうことを発見したんですね。ですからこれは厳密に実証された関係として、イノベーションを志すとき、皆さんは、私達は資源を動員するという考え方もとっても大切なんです。

お金や人、そういったものを自分たちがやろうとしている新事業、新製品新サービスのために集めてきて動員する。このための戦法を考えなきゃいけないということになるわけです。

資源動員の方法

資源動員のための具体的な方法としては二つぐらいが言われています。

1つが、まずは露出を増やすこと。関係者を増やすんだということですね。そのイノベーションの種、新しい新製品や新サービス、新しいアイディアを多くの人に知ってもらうことによって、応援したいという人を1人でも多く増やす。関係者をまず増やすわけです。関係者が増えればその潜在的支援者が現れる確率が高まりますから、とにかく多くの人に知らしめるということがまず第1に大切なことだと。

そして第2には、その関係者が資源を出すこと。すなわち、快く出せるように説得をする。あなたにとって大切でしょ、うちの会社にとって大切でしょ、社会はこういうふうにならなきゃいけないんだ、今あなたの力が必要なんだ、そういう上手な説得。それを、専門用語では正当化とかっていう表現を使ったりしますが、資源を出すことに対して正当性を与える。そうだよなと、ここで資源を出すことが社会的な正義に正しい、ここで資源を出すことはわが社にとって正しいというような理由を与えてあげる。この理由を手にすると、人々は資源を出せるようになる、この二つというわけですね。

まずは関係者を増やすこと、そしてその増えた関係者たちが資源を出せるというための理由を与えてあげる。この二つが大切だということになるわけです。

プロトタイプと資源動員は相性が良い

もう既にお気づきの方もいらっしゃると思いますが、プロトタイピングとこの資源動員って、相性がいいわけですね。

現場で実証実験をすると、かたや関係構築がされるわけです。実際にその社会でその商品とかサービスを実際に出そうと思ったならば、自治体の許可、警察さんの許可とか、そういった法律面でパスしなきゃいけない。地域住民の人にも理解いただかなければいけませんし、もちろんユーザーさんの目にも触れていきますし、それから取引先関係者、ディストリビューターさん、販売ポテンシャルのある販売会社さん、そういった人たちがみんな一同になって、実際に物事をそこで実証実験するために、その場で実際にちょっと資源が動員されることにもなるわけですね。

という形で、このイノベーションに関するステークホルダー、関係者を増やす効果が、プロトタイピングにはまずあるんだということになるわけです。

加えて、この実証実験をやると現場で現物を見ることになる。実際それを操作してみたりすることになりますから、ここで現物に対する情報のインプットがされる。

そうすると、その製品やサービス案への理解が深まるから、確かにこれは、社会にとって大切だ、我が社にとって大切だ、市場ポテンシャルが高い。そういったことを関係者たちが理解・納得をする、正当性を獲得できるので、資源動員に繋がっていくということになるわけです。

以上のように、関係を広げるという意味でも、その関係者たちの説得をするという意味でも、プロトタイピングはとっても効果があるということになるわけです。

最後に

ちなみに、ここまでの話は、先ほどのダイヘンさんの研究をしながら、私も研究室の大学院生、2019年度に沿って修士論文を書いてくれた大学院生たちの研究成果だったりするわけです。

私が何を最後にお伝えしたいかというと、経営学の研究ってやっぱり全然机上の空論やってるわけではなくて、こんな感じで世の中の実際にお役に立とうとしながら、そこから世の中の役に立つような研究成果を出そうと、私達だって苦労しているわけなんですよ。

というわけで、だからぜひ皆さんにはですねやっぱこの経営学の学びを深めてもらって、それを現場で生かしてもらいたい、皆さんのこれからの仕事に生活に生かしてもらいたいと願ってやまないわけです。

ぜひぜひですね、これからも中川先生と一緒にこの経営学の学びを深めてもらうことを改めてお願いしたいと思います。

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