行動経済学、ナッジ
Behavioral economics and nudge
- 行動経済学とは、人間がかならずしも合理的には行動しないことを考慮しながら、経済の仕組みや経済活動の仕組みを明らかにした学問。
- ナッジとは、行動科学の知見から、望ましい行動をとれるよう人を後押しするアプローチのこと。
- ナッジは、母ゾウが子ゾウを鼻でやさしく押し動かす様子に例えられる。
金銭や罰を用いずに、仕組みによって自発的を促す
関連ワード
行動経済学、ナッジとは
経済学では人は合理的に行動するという前提を置いてきましたが、現実に生きる私たちはそう合理的には行動できない。人間のその限定された合理性に立脚して、私たちの思考のクセを踏まえて経済の真の実態に迫っていこうと言うのが行動経済学です。シンプルに表現すれば心理学を活用した経済学のことです。
行動経済学を応用して人々の行動をよい方向に導いていこうとするのが「ナッジ」です。ナッジとは、小突く、ひじでつつく、といった意味であり、強く押す・引っ張るのではなく、かるく促してあげるというニュアンスです。ゴミ箱にバスケットボールゴールが書かれていれば入れたくなるし、階段に消費カロリーが書いてあれば歩いて上りたくなるはずです。臓器提供を「したくない人はチェックを入れてください」とすれば、大半の人はチェックを入れません。
なお、ここで「経済」という言葉の意味も知っておきましょう。経済とは、経世済民(けいせいさいみん)の略です。世をおさめ、民をすくう、と読みます。世の中の仕組みを変えて、人々を幸福にすることが、経済の目的です。
事例紹介
森永乳業の社員食堂
■健康に配慮した社員食堂はとても大切です。森永乳業は、社員食堂のスタートにまず「サラダバー」をセットしています。無料であり、いくらでも取り放題、しかも一番最初に置いてあることもあり社員はまず多量にサラダをとります。その後に定食メニューを選ぶのです。
■もちろん、サラダバーの料金は社員食堂の料金に含められています。けれど無料で取り放題とアピールされれば、たくさん取りたいのは人間の心理として自然なことです。こうした人の行動・心理の特性をよく利用して、社員にたくさんの野菜を食べてもらうことに成功しています。
■近年ではこうした社員食堂の行動デザインは積極的に行われるようになっており、タニタ、グーグル、学食などでも採用が進んでいます。
著者・監修者
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1982年生。経営学者/やさしいビジネススクール学長/YouTuber/東京大学 経済学博士
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専門は、経営戦略論・イノベーション・マネジメント、国際経営。
「アカデミーの力を社会に」をライフワークに据え、日本のビジネス力の底上げと、学術知による社会課題の解決を目指す。
「やさしいビジネススクール」を中心に、YouTube・研修・講演・コンサル・著作等で経営知識の普及に尽力中。
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