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「アンゾフの成長マトリクス」の解説と活用方法

目次

アンゾフのマトリックス(Ansoff Matrix)

アンゾフのマトリクスは、事業戦略を考えるための重要なツールです。イゴール・アンゾフによって考案され、成長戦略を視覚化するために使われます。このマトリクスでは、市場(既存・新規)と製品(既存・新規)の組み合わせにより、4つの事業戦略を表現します。

アンゾフのマトリクスを理解することは、企業の成長戦略を考える上で必要不可欠です。

  • 企業の次なる成長の方向性を描く手法。
  • 新規市場か既存市場か、新規製品か既存製品か、の2軸4分類。
  • それぞれ、既存製品×既存市場を「市場浸透戦略」、既存製品×新規市場は「市場開拓戦略」、新規製品×既存市場は「製品開発戦略」、新規製品×新規市場は「多角化戦略」と呼ばれる。

1960年代、経営戦略論の創始者のひとりとして知られる、経営学者であり経営者でもあったイゴール・アンゾフの提唱した手法。企業成長のための、次なる一歩を模索するときに使えます。

結局のところ、会社の売上成長の方法は、新たな製品・サービスを提供するか、新たな市場に進出するか、はたまた既存市場でのシェアや販売単価を伸ばしていくほかはありません。今の自社の事業状況を踏まえ、そのいずれが求められているのかをまず考えます。

ただし、ここで言う新製品・サービスとは、、既存の製品・サービスとは根本的に異なるものを指す。改良・修正・新モデルなどは「既存製品の範疇」と考えます。

これらの4種類の成長方針を具体的に実現するための手段が、イノベーション、マーケティング、ビジネスモデルなのです。M&Aも、ひとつの方法です。

これから先の展望として、成長戦略を描く際によく当てはまる。自社の現状に照らして、的確な方向を設定する。

動画で解説

アンゾフのマトリクスが示す戦略的4つの選択

このマトリクスは、製品と市場の組み合わせから4つの戦略を示します。

市場浸透戦略:市場浸透戦略は、既存市場で既存製品を売るものです。ここでは、顧客ニーズの深耕やマーケティング活動を通じて、顧客満足度を向上し、市場シェアを拡大を目指します。

多くの場合、マーケティング活動の改善や既存顧客の使用頻度を高めることによって行われます。例としては、コカ・コーラが、独自のマーケティング・キャンペーンや顧客ロイヤルティ・プログラムを通じて、既存の市場で同社の代表的な飲料をより多く販売するための努力を続けていることが挙げられます。

製品開発戦略:製品開発戦略では、既存市場で新製品を売ります。自社のノウハウや技術力を活かして新製品を開発し、既存の顧客基盤に提供することで売上を拡大します。例えば、iPadは、すでに成功を収めているiPodとiPhoneのラインナップをベースに、既存の消費者層に新しい製品を提供するものでした。

市場開拓戦略:既存の製品を新しい市場で販売する戦略です。自社製品の可能性を世界に広げることで新たな市場を獲得します。地理的に拡大することもあれば、同じ地域内の新しい層をターゲットにすることもあります。例えば、従来は女性をターゲットにしていた高級ハンドバッグのメーカーが、男性向けの販売を開始し、新たな市場セグメントを開拓することがあります。

多角化戦略:新規市場で新製品を売る戦略。4つの選択肢の中で最もリスクは高いですが、成功すれば大きな利益を獲得できます。多角化は、既存市場が飽和状態にある場合や、新たなビジネスチャンスに恵まれすぎて無視できない場合に有効な戦略です。例えば、アマゾンはオンライン書店から世界的なEコマースの巨人に成長し、クラウドコンピューティングサービスからストリーミングエンターテイメントまで、あらゆるものを提供するようになりました。

これらの戦略は企業の成長の方向性を示す一方で、その選択は企業の現状や将来のビジネス環境の変化、経営資源やリスクを十分に把握・考慮した上で策定されるべきです。

アンゾフのマトリクスの起源から現在での利用目的

アンゾフ・マトリックスは、1957年にハーバード・ビジネス・レビュー誌で紹介されて以来発展し、経営戦略の主要なフレームワークの1つとなっています。その考案者、イゴール・アンゾフはロシア系のアメリカ人で、数学者であり経営者でもありました。彼の成果は経営戦略の世界に深い影響を与えています。このマトリックスの誕生後は、70年に渡り企業が成長をどのように計画し、管理するかの洞察を提供しています。

マトリックスは、新しい市場への参入、新製品の開発、またはその両方がもたらす可能性のあるリスクとリターンを評価するためのツールとして設計されました。4つの領域をマッピングすることで、企業が追求できる戦略の方向性を視覚化します。また、企業が現在の状況と未来の可能性を評価することで、最大の利益と収益を生み出すためのリソース配分を指導します。

アンゾフは、各領域が異なるリスクレベルを示していると考えました。例えば、市場浸透は一般的に最もリスクが低いとされ、これは既知の製品や市場を扱うからです。一方、新製品や新市場は不確実性があり、多角化はリスクが最も高いとされています。

現在では、アンゾフのマトリックスはビジネス教育の基本で、多くの企業で戦略立案に頻繁に使用されています。このツールは、変化の速いビジネス環境を理解し、新たな機会を特定し、成功する成長戦略を作り出すのに役立ちます。

最終的に、アンゾフ・マトリックスは企業の戦略立案プロセスを支援する重要なツールです。マトリックスが示す4つの戦略を理解することで、企業は各戦略に関連するリスクとリターンを考慮しながら、成長と拡大の方向性を決定することができます。そのため、マトリックスが継続的に使用されていることは、その持続性と有効性を示しています。

アンゾフマトリクスの具体的な適用:4つの象限で考える

アンゾフの成長マトリクスは、「事業拡大マトリックス」とも呼ばれ、企業が製品や市場の成長戦略を決定するための戦略ツールである。このマトリックスは、市場(新規・既存)と製品(新規・既存)の2つの次元で操作され、4つの戦略的象限を生み出します。それぞれの象限は、企業が取ることのできる明確な戦略的方向性を表しています: すなわち、「市場浸透」「製品開発」「市場開拓」「多角化」である。

ここでは、それぞれの戦略について、成功例、潜在的な報酬、リスクなどを具体的に解説します。

市場浸透:現在の市場と製品に焦点を当てる戦略の成功例と注意点

市場浸透は、アンゾフ・マトリクスの第1象限に位置し、既存製品で現在の市場でのシェアを拡大することに重点を置いています。戦略としては、製品の品質向上、マーケティング努力の強化、より多くの顧客を惹きつけるための価格引き下げなどが考えられます。

成功例のひとつに、マクドナルドがあります。マクドナルドは、既存商品の品質を向上させ、地域の嗜好に合わせてメニューを変えることで市場浸透を図り、既存市場での足場を固めました。

しかし、この戦略には潜在的な落とし穴があります。まず、企業が市場に浸透するのには限界があり、市場が飽和状態になるとそれ以上投資してもリターンは少なくなります。また、競争の激化により価格競争が起こり、利益が減少する可能性もあります。

新製品開発:現在の市場と新しい製品に焦点を当てる戦略の成功例と注意点

第二象限の「製品開発」は、既存市場向けの新製品を開発することです。ここでは、市場や顧客のニーズを理解することで、新製品を革新的に開発することができます。

アップルはこの戦略の典型です。iPodとiPhoneの成功を受けて、既存の顧客基盤と技術的なノウハウを活用してiPadを発売し、既存市場から新たな収益源を作り出しました。また、MacとiCloudも含めたエコシステムの提供により市場戦闘戦略においても安定した成功を収めています。

しかし、この戦略にはリスクがないわけではありません。新製品の開発には、費用と時間がかかるものです。また、新製品が市場の期待に応えられない場合、製品が故障するリスクもあります。

新市場開拓:新しい市場と現在の製品に焦点を当てる戦略の成功例と注意点

「市場開発」は、既存製品で新しい市場に進出することです。地理的に新しい市場に参入することもあれば、既存市場の中で新しい顧客層をターゲットにすることもあります。

例としては、Airbnbの国際展開が挙げられます。Airbnbは、1つの都市からスタートし、同じ既存のプラットフォームを使って、徐々に世界の新しい都市や国へと拡大していきました。

ここでいうリスクとは、文化や法律、ビジネスモデルの違いによって、既存製品の魅力が低下したり、新市場には適さなくなる可能性があることです。また、未知の競合他社や市場環境が課題となる可能性もあります。

多角化:新しい市場と新しい製品展開に焦点を当てる戦略の成功例と注意点

「多角化」は一番リスクの高い行為と言えます。これは、新たな市場に合わせて新しい商品を開発することを指します。この戦略は、リスクを分散するため、ブランドの力を利用するため、あるいは、今の市場や商品では手に入らない成長の機会を利用するために実行されるのが普通です。

アマゾンは多角化が成功した好例と言えます。ネットの書店として始めたアマゾンは、全く新たな市場や商品に出て行き、世界的な電子取引の巨人、クラウドサービスを提供するテクノロジー会社、ハードウェア製造者、メディア会社になりました。

しかし、投資を分散させることは、4つの戦略の中で一番高いリスクを伴います。多くの投資を必要とし、知らない市場や商品を扱うことになり、会社の集中力が主要な事業からそらされる可能性があるからです。

結論から言えば、アンゾフの成長マトリクスは、成長の戦略を考え、評価するための体系的な手法を提供します。各象限には、それぞれのチャンスと課題が存在します。それぞれの象限をじっくりと理解し、市場調査と戦略的な計画をしっかりと立てることで、会社はこのツールを効果的に利用し、成長の道を歩むことが可能になります。

変化が早く多い時代の多角化戦略の詳細

多角化とは、企業が現在自社のポートフォリオに含まれていない異なる製品、市場、産業に事業を拡大する戦略です。

その目的は、市場の変動に対する企業の回復力を高め、単一の市場や製品に過度に依存することによるリスクを軽減し、成長機会を最大化することですが、一般的には水平型、垂直型、集中型、集成型の4つに分類されます。

多角化の種類何をするのか (What)なぜするのか (Why)どのようにするのか (How)誰がやるべきなのか (Who)どのようなリスクがあるのか (Risk)実例 (Example)
水平型多角化既存技術や知識を用いて新製品を開発する。コストやリスクを抑えつつ新市場を開拓するため。既存の製造技術や設備、販売チャネルを利用する。既存の技術や知識を有する企業。運営の複雑さや主力製品への影響、カニバリゼーション。AppleのiPhone
垂直型多角化バリューチェーンの異なる部分に参入する。コスト削減、品質・供給の安定化のため。サプライヤーやディストリビューターなどに投資する。バリューチェーンの全体を管理したい企業。大投資と専門知識の必要性、産業の変動への弱さ。アマゾンのホールフーズ買収
集中型多角化関連性のある新市場に新製品を展開する。新市場を開拓し、製品の多様性を高めるため。自社の技術やノウハウを利用する。自社の強みが新市場でも使える企業。新市場への理解不足、技術の陳腐化、コア・コンピタンスの薄れ。ニコンの医療用デバイス
集成型多角化既存事業とは関連のない新市場に進出する。ビジネスリスクの軽減のため。新しい産業に投資する。大きな投資とリスクを承受できる企業。高リスク、大投資、事業の複雑さの増大。バークシャー・ハサウェイの保険事業

水平型多角化

水平型多角化とは、新たな製品やサービスを作り出すために、我々がすでに持っている技術や知識を活用する戦略です。自動車メーカーがバイクを作ることを想像してみてください。その際、既存の製造技術や設備、販売チャネルが役立つでしょう。

この戦略を採用すると、企業は既存の供給網、技術、マーケティングインフラを活用できます。これにより、新たな市場を開拓する際のコストやリスクを抑えつつ、新規ビジネスを展開することが可能となります。

しかし、この戦略には欠点も存在します。運営が複雑になる可能性、企業の主要な強みが希薄になること、また新製品が既存の製品と競合し互いに売り上げを奪い合う、いわゆるカニバリゼーションのリスクがあります。さらに、業界が縮小または競争が激化すると、結果として収益が減少する可能性もあります。

AppleはiPodとApple Musicの成功の上に、iPhoneを展開しました。ここで彼らは、既存の製造技術、サービスネットワークを活用しつつ、さらに新しい体験を付加価値としてモバイル端末市場に進出しました。

自社の強みを理解し、それを活かせる新しい市場を見つけることが重要です。新製品がブランドイメージに合うことも確認しましょう。例えば、アップルが家電製品に進出したのは、新製品が革新的で高品質な技術イメージと一致していたからです。

垂直型多角化

垂直型多角化とは、企業が自らのビジネス範囲を拡大する方法です。その目的は、製品のライフサイクルをより効果的に管理すること。この戦略を採用すると、企業はサプライヤーやディストリビューターなど、バリューチェーンの異なる部分に参入できます。例えば、アマゾンがホールフーズを買収したのは、オンライン小売業者であるアマゾンが実店舗の分野に進出した一例です。

垂直型多角化のメリットの一つはコストの削減です。他にも、品質の確保や供給の安定化も可能になります。これらは、企業の競争力を高めるために重要な要素となります。

しかし、垂直型多角化の最大のデメリットは、新しい事業に進出するためには、大量の投資と専門知識が必要となることです。これは、業務の複雑化や新たな技術の導入コスト、管理負荷の増大を招く可能性があります。さらに、あまりにも一つの産業に依存すると、その産業の変動に弱くなる可能性もあります。

成功例として、アップルが自社の「M1」チップを製造したことがあります。この決定により、アップルは製品の品質や性能を自社で一元管理することが可能となりました。

垂直型多角化を行う際には、必要な専門知識や資源をしっかりと考慮することが重要です。また、自社で取り組む新たなプロセスから始め、徐々に範囲を広げるというアプローチが推奨されます。

集中型多角化

集中型多角化は、自社の技術やノウハウが関連性を持つ新製品やサービスを、違う市場で展開するというものです。

集中型多角化を進めることで、強みを利用して新市場を開拓でき、製品の多様性を高め、新たな成長への道筋を確立できます。しかし、新市場への理解が不十分な場合、失敗のリスクがあります。また、単一の技術への依存、技術が古くなるリスク、そして、コア・コンピタンスが薄れる可能性があるのです。

成功例として、ニコンの事例があります。ニコンはカメラメーカーでありながら、医療用デバイスの開発にも取り組みました。カメラと医療デバイスの市場は異なりますが、精密な光学技術は両者で共通して必要とされるのです。

集中型戦略にとって重要な点は、自社の強みが新市場でも使えるのか、きちんと分析し、市場研究を怠らないことです。

集成型(コングロマリット型)多角化

集成型(コングロマリット型)多角化は、企業が新しい産業に進出する戦略です。

参考)コングロマリット成功の秘訣戦略と影響について解説

この取り組みは、既存の事業とは関係のない新しいフィールドへの挑戦的で野心的な拡大を意味します。例えば、バークシャー・ハサウェイは、繊維製造から保険、公共事業、食品という、全く異なる産業に進出しています。

最大のメリットは、複数の産業への分散によるビジネスリスクの軽減です。これによって、一部のビジネスが不振でも他のビジネスで補うことが可能となります。

しかしながら、多角化はリスクが高く、大きな投資が必要です。また、既存事業との相乗効果が見込めず、事業全体の複雑さが増します。さらに、関連性のない事業を成功させるには、多くの資源と専門知識が求められます。

したがって、多角化を進める前に、企業は財務的、戦略的な実現可能性分析を徹底的に行うべきです。それにより、有効な戦略を策定し、リスクを最小限に抑えることが可能となります。

事例紹介

キッコーマン 北米での成功

■日本で独自の発達を遂げた醤油は、和食を代表する調味料です。その最大手であるキッコーマンの成長戦略は、和食文化ではない北米を開拓していくという驚くべきものでした。

■キッコーマンは早くも1957年には北米に進出します。当初は苦戦したキッコーマンでしたが、ステーキを劇的に美味しくする調味料として「Delicious on meat」のキャッチフレーズと共に大ヒットし、今ではアメリカの世帯の半分以上に常備されるようになっています。

■醤油が和食に固有のもので、かつキッコーマンが国内に販売チャネルを構築していたことを考えれば、日本市場を狙った市場浸透戦略や、製品開発戦略がまず浮かびます。キッコーマンはもちろんそうした戦略も実行しているのですが、大きな挑戦となる市場開拓戦略をも同時に実行したからこそ、現在の同社の世界的な地位があるのです。

アンゾフのマトリクスと補い合うフレームワーク

BCGマトリクス

企業の戦略を考えるときに重要なフレームワークとして、BCGマトリクスとアンゾフのマトリクスがあります。それぞれが異なる視点から企業の成長戦略を考えるツールとなり、事業の可能性を見つけるのに役立ちます。

BCGマトリクスは、製品の管理という視点で資源を配分することに特化しています。 一方、アンゾフのマトリクスは、企業の成長戦略を考えるときに参考になるツールです。

例えば、企業が新製品「X」を出したとき、BCGマトリクスでは初めての製品なので「問題児」と見られるでしょう。一方で、アンゾフのマトリクスでは新市場と新製品の開発を進めていると考えられ、「多角化」に分類されます。これらの視点から、企業は製品「X」の市場シェアの拡大と市場の成長の可能性を考える戦略を作ることができます。

BCGマトリクスアンゾフのマトリクス
何を分析するか製品のポートフォリオ成長戦略
何のために使うか製品ライフサイクルの管理新規市場や製品の開発方針
誰が発案したかボストン・コンサルティング・グループH. Igor Ansoff
主な分類問題児、金のなる木、星、負け犬市場浸透、市場開拓、製品開発、多角化
具体的な使用例新製品「X」は「問題児」新製品「X」の戦略は「多角化」

このように、BCGマトリクスとアンゾフのマトリクスを補完的に用いることで、より効果的な戦略策定が可能となります。

ポーターの5要因分析

「ポーターの5要素分析」と「アンゾフのマトリクス」は、競争力と成長戦略を理解するための参考となるツールです。 ポーターの5要素分析は、「買い手の力」、「売り手の力」、「業界の競争」、「新規参入の脅威」、「代替品の脅威」の5つの力を考えることで、企業の競争環境を分析します。 一方、アンゾフのマトリクスは、新規と既存の製品と市場を軸に、企業の成長戦略を考えるツールです。

これらのツールがどのように補完し合うかを理解するために、新たに登場したフィンテック企業を考えてみましょう。ポーターの5要素分析を使うと、既存の銀行業界の競争環境を把握できます。たとえば、「業界の競争」や「新規参入の脅威」などがあります。その一方で、アンゾフのマトリクスを用いて、新製品の開発や新市場への進出といった「多角化」の戦略を採用するか、既存市場への浸透といった「市場浸透」の戦略を採用するかを判断します。

ポーターの5要因分析アンゾフのマトリクス
何を分析するか競争環境成長戦略
何のために使うか競争力の評価と強化新規市場や製品の開発方針
誰が発案したかマイケル・E・ポーターH. Igor Ansoff
主な分類買い手の交渉力、売り手の交渉力、業界内競争、新規参入の脅威、代替品の脅威市場浸透、市場開拓、製品開発、多角化
具体的な使用例フィンテック企業が銀行業界の競争環境を分析フィンテック企業が成長戦略を策定

ポーターの5要因分析とアンゾフのマトリクスを一緒に使用することで、企業の競争力と成長戦略を総合的に評価することが可能になります。

PESTEL分析

「PESTEL分析」と「アンゾフのマトリクス」は、外部要因と成長戦略を理解するための参考となるツールです。 PESTEL分析は、政治(P)、経済(E)、社会(S)、技術(T)、法律(L)、環境(E)という外部要因を考えるツールです。 一方、アンゾフのマトリクスは、新規と既存の製品と市場を軸に、企業の成長戦略を考えるツールです。

具体的な事例として、Apple Inc.の戦略を分析してみましょう。

Apple Inc.のPESTEL分析

フレームワークの要素分析結果
政治 (P)米中貿易戦争が重要な要素となり、生産コストや供給チェーンへ影響を与えています。政府の規制や政策もAppleの事業に大きな影響を及ぼします。
経済 (E)為替レートの変動や経済状況の変化が、Appleの製品の売上や利益に影響を及ぼします。
社会 (S)消費者のライフスタイルや嗜好の変化がApple製品の需要に影響を及ぼします。
技術 (T)テクノロジーの進歩がAppleの製品開発やイノベーションに直結します。
法律 (L)知的財産権やデータ保護の法律がAppleの事業運営に影響を及ぼします。
環境 (E)環境保護への意識の高まりがAppleの製品設計や生産プロセスに影響を及ぼします。Appleは環境にやさしい製品を提供することで消費者の評価を高めています。

Apple Inc.のアンゾフの成長マトリクス

フレームワークの要素分析結果
市場浸透iPhoneやMacなどの既存製品を既存市場でより深く展開し、市場シェアを増やしています。
製品開発新しい製品(Vision ProやApple Watchなど)を開発し、既存の市場に提供しています。
市場開拓新興市場や未開拓の地域に対して既存の製品を展開し、新たな顧客を獲得しています。
多角化新しい製品カテゴリ(例えば、Apple TV+やApple Arcadeといったサービス)を開発し、新しい市場に進出しています。

SWOT分析

SWOT分析は、自社の事業の状況等を、強み、弱み、機会、脅威の4つの項目で整理して、自社の競争力を強化し、市場での位置を強化するための戦略を策定することを可能にする分析方法です。

アンゾフのマトリクスは、市場と製品の視点から、成長する方向を市場浸透、製品開発、市場開拓、多角化の4つに分けて、戦略を考えるツールです。

SWOT分析は、企業の内部と外部を分析するツールであり、アンゾフのマトリクスは、市場と製品の視点から事業の成長する方向を考えるツールです。これらは、相互に補い合う関係にあります。

具体的な例を挙げると、ある企業が新しい事業を考えるとき、SWOT分析を行うことで自社の強みや弱み、市場のチャンスやリスクを理解できます。そして、アンゾフのマトリクスを用いることで、市場浸透、製品開発、市場開拓、多角化の4つの方向から新事業の戦略を考えることができます。

たとえば、ある化粧品メーカーが新たにスキンケア製品の開発を考えるとき、SWOT分析を行うことで自社の強みや弱み、市場のチャンスやリスクを理解できます。そして、アンゾフのマトリクスを用いることで、市場浸透、製品開発、市場開拓、多角化の4つの方向から新事業の戦略を考えることができます。
・市場浸透戦略としては、既存のお客様に新しいスキンケア製品を提供することが考えられます。
・製品開発戦略としては、既存の製品とは異なる新しいスキンケア製品を開発することが考えられます。
・市場開拓戦略としては、海外市場に進出することが考えられます。
・多角化戦略としては、化粧品以外の商品を開発することが考えられます。

SWOT分析アンゾフのマトリクス
主な目的企業の現状を把握し、その競争力を強化するための戦略を策定する。事業の成長を促進する戦略を策定する。
内容強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の4つの観点から企業を分析する。製品と市場の新規と既存を軸に、市場浸透、製品開発、市場開拓、多角化の4つの戦略を考察する。
対象範囲内部環境と外部環境主に企業の製品と市場
策定する戦略のタイプ競争戦略、市場戦略など全般成長戦略

SWOT分析は内部と外部の環境を考慮し、競争力を強化するための戦略を見つけるのに役立ちます。一方、アンゾフのマトリクスは企業の成長戦略を見つけるのに役立ちます。製品と市場の視点から、どの方向に事業を拡大するかを判断します。

バリューチェーン分析

製品と市場から見た企業の成長戦略を考えるアンゾフのマトリクスと、企業が価値を創出するプロセスを見るバリューチェーン分析が、企業の競争力を強めるための補完的な役割を果たします。

アンゾフのマトリクスは、市場と製品の新しさを基に、市場への浸透、市場の開拓、製品の開発、そして多角化という4つの成長戦略を示しています。バリューチェーン分析は、企業の主要な活動を原材料の調達から最後の顧客への配送までの連続した過程として見て、各活動がどうやって企業の価値を創出するかを明らかにします。

具体的な例として、新しい医薬品を市場に出す製薬企業を考えてみてください。アンゾフのマトリクスから見れば、新製品の開発と市場への投入は製品開発または多角化の戦略に当たります。バリューチェーン分析を行うと、新製品の成功に寄与する研究開発、製造、マーケティング、販売といった内部活動が明らかになります。このように、アンゾフのマトリクスとバリューチェーン分析は、戦略を考える異なる段階でお互いを補う形になります。

アンゾフのマトリクスバリューチェーン分析
何を分析するか成長戦略付加価値の創出過程
何のために使うか市場と製品の新旧に基づいた戦略選択競争優位性の形成と強化
誰が発案したかH. Igor AnsoffMichael E. Porter
主な用途市場浸透、市場開拓、製品開発、多角化価値創造の各ステージの分析
具体的な使用例新製品の市場投入は「製品開発」新製品の成功には各活動の連携が必要

アンゾフのマトリクスとバリューチェーン分析は、企業の戦略を考えるうえで互いに補いながら使うことができ、より良い戦略の構築に寄与します。

ブルーオーシャン戦略

アンゾフのマトリクスとブルーオーシャン戦略は、どちらも企業の成長戦略を考えるうえで重要ですが、それぞれ異なる観点からアプローチします。 アンゾフのマトリクスは、製品と市場の新旧に基づき、企業の成長戦略を市場浸透、市場開拓、製品開発、多角化の4つのカテゴリーに分けます。ブルーオーシャン戦略は、競争の激しい既存の市場(赤い海)から離れ、競争がない新しい市場(青い海)を生み出すことを目指す戦略です。

具体的な事例として、AppleのiPhoneはこれら両者の関係性をよく示しています。初め、Appleはアンゾフのマトリクスの「製品開発」戦略を使って既存の市場で新製品(iPhone)を開発しました。その後、iPhoneはその新機能(携帯電話としての機能を拡張したスマートフォンとして)により、新しいエコシステムを生み出し、ブルーオーシャン戦略を実現しました。

アンゾフのマトリクスとブルーオーシャン戦略は、それぞれ異なる視点から企業の成長戦略を考えることを可能にします。しかし、特定の事例において、これらの戦略は相互補完的な役割を果たし、企業が全体的な視点から戦略を考えるのを助けることができます。

アンゾフのマトリックスブルーオーシャン戦略
何を分析するか製品と市場の新規性・既存性既存市場と新市場の間のギャップ
何のために使うか成長戦略の策定新市場の創出と競争力の強化
誰が発案したかH. Igor AnsoffW. Chan Kim and Renée Mauborgne
主な分類市場浸透、市場開拓、製品開発、多角化赤い海戦略、青い海戦略
具体的な使用例AppleのiPhoneの開発は「製品開発」Appleのエコシステムは「青い海戦略」

未来への展望:アンゾフのマトリクスの役割と可能性

テクノロジーの進化が急速に進み、企業のビジネスモデルや市場環境も変わりつつある現代、アンゾフのマトリクスは戦略を考える基盤として重要な役割を果たし続けます。

他のフレームワークとの補いあう役割を見てきたように、より多角的で深いデータ分析を組み合わせ、企業が自分の位置を理解し、戦略的な決定を下すのを助けるでしょう。

マトリクスを初めて見ると、少し複雑に見えるかもしれません。ですが、まずは柔軟な気持ちで、一つ書いて見ることをおすすめします。

著者・監修者

本気のMBA短期集中講座

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