エンパワーメント
Empowerment
- 人は、その知識や計算能力に関する認知能力には限界があり、完全な合理性を持ちえないことを示した概念。力を与える事(empowerment)が直訳であるが、日本ではよく権限移譲と訳される。
- 自分で決定できるようになることで、個人の人間的成長が図られる。自己の信念で行動できるようになり、自分自身に健全な効力感を感じられるようになり、他人と健全な一人前の関係をつくることができるようになる。
単なる丸投げのことではない。しかるべく方針を示し、必要な支援をあたえたうえで、現場に移譲する。
関連ワード
エンパワーメントとは
権限移譲のことを指して「エンパワーメント」と呼ばれますが、往々にしてそれは「丸投げ」になります。健全なエンパワーメント“部下に力を与える”となるためには、権限のみならず、ものごとを実行するための支援の約束、資源の提供、助言、そして何よりも目指すべきゴール像の共有が大切となる。「これなら自分でもできる」という体制を作ってあげることが、エンパワーメントの鍵です。
エンパワーメントは、現場に即応した行動を可能とすること、上司の業務負荷を軽くすることに加え、エンパワーメントされた部下の参加意識の改善と能力開発に寄与します。その背景にあるのは自己決定理論という考え方です。エンパワーメントにより、自分で決定して仕事が出来るようになると、自己の信念や考えに沿った行動できるようになる「自律」、自分はできるのだという健全な「自己効力感」、一人前の人材として仲間とよき「関り合い」が結べるようになるのである。
事例紹介
青山学院大学 原晋監督
■大学駅伝界に突如として現われ、あっという間に常勝軍団となった青山学院大学。その理由は、もちろん選手のスカウティングが際立っているということもありますが、原晋監督の新しいタイプの指導方法も大きな要因です。
■かつての指導者は、選手は未熟な子どもであるから、監督が愛を持って厳しく管理し、一人前の選手に育てていくものだと考えられていました。生活管理から練習メニューまで事細かに指示し、整えてやるような管理方法です。
■一方、原監督は選手をすでに一人前の選手扱いし、監督が指示しなくても自分たちで目標をたて、練習メニューなども自分たちで考えるようにエンパワーメントしていきました。たとえば「足が痛い」と報告してきた選手に対して「治すためにどんな努力をするか」「その状態でできる練習方法はどんなものがあるか」などを考えさせたのです。
■こうして一人一人が考えられるようになった青学は2015年からの箱根駅伝4連覇を成し遂げ、近年でも優勝争いをするほどのチームになったのです。
著者・監修者
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1982年生。経営学者/やさしいビジネススクール学長/YouTuber/経済学博士/関東学院大学 特任教授/法政大学イノベーション・マネジメント研究センター 客員研究員
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専門は、経営戦略論・イノベーション・マネジメント、国際経営。
「アカデミーの力を社会に」をライフワークに据え、日本のビジネス力の底上げと、学術知による社会課題の解決を目指す。
「やさしいビジネススクール」を中心に、YouTube・研修・講演・コンサル・著作等で経営知識の普及に尽力中。
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