行動経済学(中川功一・やさしいビジネススクール学長)

開講時期:2023年6月~2023年7月

講師プロフィール

専門は経営戦略論、イノベーション・マネジメント。駒澤大学、大阪大学を経てAPS設立。「アカデミーの力を社会に」を人生のライフワークに据える。国内外トップ誌に論文を掲載させつつ、コンサルタント、リサーチャー、研修や講義を通じて産業界の活性化を支援する。YouTubeでも実践の場に活きる経営学を発信している。


中川学長の詳しいプロフィール

科目概要|「心」で読み解く新しい経済学!行動経済学のご紹介

行動経済学は、従来の経済学に心理学の知見を融合させた、今最も注目されている学問の一つです。ポイントは、「人間は完璧ではない」ということ。そんなの当たり前では?と思うかもしれません。
しかし、実は従来の伝統的な経済学は、人間を「常に合理的で、損得勘定を完璧にこなす存在」と仮定してきたのです。
もちろん、私たちは実際には感情に左右され、計算ミスもするリアルな人間です。行動経済学は、この人間らしい非合理さも含めて科学します。
行動経済学を学ぶことで、顧客の心理に基づいたマーケティングが可能になるだけでなく、自分自身の意思決定の質を高めることができます。
ビジネスでの交渉から日常生活の「ついつい…」の解消まで、幅広く活用できる「現代の教養」といえる学問です。
他科目と併せて学ぶことで、ビジネスや日常生活が豊かになること間違いなし!です。

行動経済学を学ぶとできるようになること

① 心理的バイアスを排し、意思決定の質を向上させる

人間が陥りやすい「思考の癖(ヒューリスティック)」や「認知バイアス」のメカニズムを理解することで、自分自身の判断ミスを客観的に捉え直せるようになります。
これは、知っているか、知らないかで大きく差が出るポイント!
過去の投資に引きずられる「サンクコスト(埋没費用)」や、自分に都合の良い情報だけを集めてしまう「確証バイアス」の存在を知ることで、不適切な事業継続を食い止め、より合理的で質の高い意思決定を行うことが可能になります。

② 顧客心理を洞察し、効果的なマーケティングや交渉を展開する

伝統的な経済学では捉えきれない、情動的な人間像に基づき、ビジネスを有利に進める力が身につきます。
たとえば、「プロスペクト理論」における「参照点(相場観)」の考え方。
お得を感じやすい価格提示や、交渉相手の心理的重みに合わせた提案を行えるようになります。これにより、単なる数値計算ではない、人間心理に即した戦略的なアプローチが実現します。

③ ナッジを活用して、組織や社会の行動をより良い方向へ導く

強制や金銭的インセンティブに頼らず、人々の行動をそっと後押しする手法「ナッジ(Nudge)」をデザインできるようになります。
たとえば、「初期設定(デフォルト)効果」などの知見を用い、人々の自由意志を尊重しつつ、健康増進や生産性向上といった望ましい行動を自然に促す「選択のアーキテクチャ」を構築する力が養われます。


これらのスキルを習得することで、ビジネスの現場だけでなく、日常生活における対人関係や自己管理においても大きな成果を上げることが期待できます。

​ライブ講義

やさビ学長中川功一の行動経済学をご体感いただけます!

ガイダンス|行動経済学はこんな科目です

はじめに(行動経済学の基本)

行動経済学は、従来の経済学に心理学の知見を融合させた学問です。
従来の経済学が、人間を「全知全能で合理的、かつ利己的な存在(ホモ・エコノミクス)」と定義してきたのに対し、行動経済学では情動に左右され、時にリスク計算を誤る「リアルな人間(ホモ・サピエンス)」の意思決定プロセスを科学します。

ノーベル賞を受賞した行動経済学のすごさ

人間は、日常生活において膨大な情報を処理するために、ヒューリスティックと呼ばれる直感的な思考の近道を使っています。これは進化の過程で身につけた便利な能力ですが、同時に判断の歪みであるバイアスを生み出す原因にもなります。
この学問の中核をなす理論の一つが、ノーベル賞を受賞したプロスペクト理論です。

参照点: 価値の判断は絶対的な数値ではなく、過去の経験やその場の雰囲気」**で作られた基準(参照点)からのズレで決まります。例えば、ピザの1000円は安く感じても、ハンバーガーの1000円を高く感じるのはこのためです。

損失回避: 人間は「1万円を得る喜び」よりも「1万円を失う痛み」を2倍近く強く感じる傾向があり、これが「利確を急ぎ、損切りが遅れる」といった非合理な行動を招きます。

また、人間は他人の目を気にする集団的な生き物であり、他者と同じ行動で安心する「バンドワゴン効果」や、逆に他者と違うことで優越感を得る「スノップ効果」などの心理も働いています。さらに、単なる利己的な存在ではなく、他者の喜びを自分の幸せとして感じる利他性や共感を備えていることも、近年の行動経済学では重要視されています。

行動経済学をビジネスで活用する際の注意点

行動経済学をマーケティングや組織マネジメント、自己管理に応用する際には、以下の点に深く留意する必要があります。

「悪用厳禁」と「おもてなし」の精神をもつ

行動経済学のテクニックは、相手を意のままに操るための詐欺師の技術にもなり得ます。
ビジネスで活用する際は、あくまで相手をハッピーにするためのおもてなしの極意として使い、社会を良くするためにデザインする志が不可欠です。

ナッジの倫理とネタバレの重要性を理解する

相手に気づかれないように行動を促す手法は、自由意志を奪う洗脳に近い危険性を孕んでいます。
正しい使い方は、今ナッジが仕掛けられていることを開示するネタバレの状態であっても、相手が主体的にその選択肢を選んでくれるような、透明性の高いデザインを目指すことです。

効果の限定性・再現性を認識する

行動経済学の知見は、限定的な状況下で観察されたものであり、すべての現場で100%再現されるわけではありません。
実際のビジネス現場では、行動経済学を過信しすぎず、他のマーケティング手法や自身のクリエイティビティと組み合わせて総合的に判断することが求められます。
だから、経営学を中心に500以上の講義を見放題のやさしいビジネススクールがおすすめです!

さらなるアウトプットをしたい方へ

アドバンスドなチャレンジをしたい方向けに、会員限定でアドバンスト問題を用意しています。
やさしいビジネススクールからフィードバックいたしますので、ぜひ挑戦してみてください。

参考テキスト


阿部誠(2021)『ビジネス教養 行動経済学』新星出版社

その他の連絡事項


中川学長について

やさしいビジネススクールご入会はこちら
https://yasabi.co.jp/value/

目次