ビジネスパーソンの基礎能力(中川功一・やさしいビジネススクール学長)

講師プロフィール
専門は経営戦略論、イノベーション・マネジメント。駒澤大学、大阪大学を経てやさしいビジネススクール設立。「アカデミーの力を社会に」を人生のライフワークに据える。国内外トップ誌に論文を掲載させつつ、コンサルタント、リサーチャー、研修や講義を通じて産業界の活性化を支援する。YouTubeでも実践の場に活きる経営学を発信している。
科目概要
誰も教えてくれない、ビジネスパーソンとしての基本。数十年もしてから「知っておけばよかった」なんていうこともあったり。ビジネスパーソンの常識についての誤解が、あなたの評価を下げてしまっていることもあるかもしれません。ビジネスパーソンとして、どうキャリアを歩んでいけばよいのか。基本スキルを一通り、身に着けてしまいましょう!
この科目でできるようになること
1.【コミュニケーション】組織内で真のハイパフォーマーとして評価され、キャリアを向上させられる。
組織の成功とは、①人との関係性の質、②思考の質、③行動の質、④結果の質 これらが好循環を生み出して起こり得ます。ダニエル・キムの成功循環モデルに基づいており、社内で評価され重宝される人は、良好なコミュニケーションを行い、お互いに助言やサポートをしあえる関係性を築ける人です。
単に自身が結果を出すだけでなく、チームビルディングや仲間の思考・行動のレベルアップにも貢献する真のハイパフォーマーだと認められるようになり、キャリアを高めていくことが可能になります。
また、人間関係のスキル(=人に好かれること)は明確なビジネス能力の一つであり、社内対立が起こった際にも、感情的な対立を避け、目的や方法のずれを確認し、相互にwin-winとなれる着地点を見出せるようになります。
2.【生産性UP】仕事の効率性を極限まで高め、時間的・精神的な余裕を持つことができる。
キャリアの中盤以降、特に30代半ばから後半にかけては、ひたすら働く「有能な働き者」から、効率性を重視する「有能な怠け者」へ切り替える戦略が重要です。
このスキルを習得すると、「何をやるか」ではなく「何をやらないか」という判断ができるようになります。
たとえば、仕事の優先順位付け(アイゼンハワーマトリクス)によって、重要度が高く緊急度の低い計画(スキルアップや自己研鑽、私生活の充実など)に時間を割くことができるようになります。
3.【問題解決】論理(ロゴス)・感情(パトス)・信頼(エトス)に基づく高い説得力を持ち、多面的なものの見方をしながら、問題解決ができるようになる。
ビジネスにおいて他者に考えを伝え、リードする上で必須の技術であるロゴス(論理)、パトス(感情)、エトス(人格・信頼)の3要素を同時に達成する振る舞い方(オーセンティックであること)がわかります。
これにより、自己の意見を情緒的に表現し、相手の立場に立ちながら人間関係を大切にする伝え方ができるようになります。
さらに、仕事のスタイルとしてアジャイル(仮説検証)を導入することで、失敗を知識として学習し、急速に成長することが可能となり、新しい仕事でも必要な知見を素早く身につけ活躍できるようになります。
また、ロジックツリーの考え方を習得することで、複雑な問題を構造的に分解し、多角的な解決案を導き出す一生ものの問題解決能力を得られます。これらすべての議論のスタートとして、ファクト(事実)を必ず確認し、事実に即した意思決定をする習慣が身につきます,。
オンデマンド講義
第1回 仕事で評価される人とは:ダニエル・キムの成功循環モデル

誰も教えてくれない、ビジネスパーソンとしての基本知識。何十年もしてから、ようやく気付くことだってある。第1回は、組織の中でどういう人が評価されるのか:よい職場を創るためにあなたがやるべきことととは何かを、関係→思考→行動→結果の4ステップモデルから解説します。
第2回 目標を持つ:目標との正しい付き合い方

目標があってはじめて、あなたの日々に意味が生まれる。上手な目標との付き合い方とは?変わっちゃっていいの?辛くなったら逃げてもいいの?
第3回 継続がなぜ大切か、どう継続性を身に着けるのか

キャリアで最も大切なこと、継続性。継続することで、人的資本、関係資本、心理資本が備わっていく。継続が苦手な人は、どうすればよい?そのポイントは、3つのM。
第4回 キャリアで積むべき3つの資本、特に「気持ちの切り替え力」について

日々、活躍をしていくためには、あなたは3つの資本を育む必要がある。人的資本、関係資本、心理資本。とりわけ近年注目されているのは、毎日を健全なメンタルで過ごすための心理資本の重要性。気持ちを切り替えられる技術もまた、大切な能力です!
第5回 仕事の優先順位の付け方

正しい働き方は「怠けること」?決して奇をてらうでもなく、これは古来語られ、実証されてきた真実です。なぜなのか?どう実現するのか?仕事の優先順位の付け方を解説します!
第6回 仕事は改善が鍵。アジャイルな仕事の仕方とは

日々の仕事を改善的に進められる人は大きくキャリアを前進させることができ、改善できない人はそこで成長が止まってしまいます。改善速度を上げる、すなわち成長速度を上げるためのコツ「アジャイル」とは?なぜ大切なのかとともに解説します
第7回 社内対立(コンフリクト)の正しい考え方と解決方法

社内対立は悪ではありません。それは、チームになろうという思いから生じるもの。だとすれば、あなたに必要なことは対立のスマートな解決法です。対立の原因は2種類しかない。原因を知り、相互の未来を描く!
第8回 伝えるための技術ロゴス・パトス・エトスとその実践法

喋りが苦手だという人ほど見てほしい。相手に伝えるために必要なものは、ロゴス、パトス、エトス。その簡易な実践方法まで紹介します!
第9回 デール・カーネギーの人に好かれる6箇条

人に誤解されやすくて、損をしていませんか。人に好かれるのもまた一つのビジネス技術、身に着ければ悩みが一つ減る。100年の歳月を永らえたデール・カーネギーの6箇条、ぜひ知っておくように!
第10回 問題解決の基本技術、ロジックツリー

問題がどういう構造になっているか、正しい論理で分解する。問題を捉えた時点で、課題解決のめどはだいたい立ちます!
第11回 ファクトフルネスー事実を確認することが仕事の第一歩

私たちはふだん、事実関係を正しくみることなく仕事をしていることばかりです。それは結局、大きな問題からも目を背けることになる―。そんなことを、体験的に理解してもらおうと思います!
第12回 次の仕事に求められる能力を考える

今、何ができるかではなく、次の仕事のための準備でキャリアをデザインする。そして、それを更新し続ける。うまくキャリアを進めていくための、ドラッカーからのメッセージ!
科目関連コラム|「ビジネスパーソンの基礎能力」がキャリアアップに必須な理由!
今回は、「ビジネスパーソンの基礎能力」と題して、今すぐ身につけておきたい思考法や具体的仕事術をマスターする科目です。
経営学の知見から、再現性高くフィットするものをまとめています。
本科目を学修いただくにあたり、重要なことをまとめましたのでぜひご覧ください!
「有能な怠け者」とは? なぜ今、「有能な怠け者」を目指すべきなのか?
30代半ば~40代を迎え、キャリアの中盤に差し掛かると、多くのビジネスパーソンが一種の壁に直面します。
日々の業務に追われ、かつてのような成長実感が得られにくくなったり、あるいは燃え尽き症候群(バーンアウト)に近い状態に陥ったりすることは珍しくありません。
かつては美徳とされた「長時間働く有能な働き者」というモデルは、現代の複雑で変化の速いビジネス環境において、その限界を露呈しつつあります。
その働き方は、20代のうちは「成長」という名の勲章だったかもしれません。しかし30代以降、それはキャリアの柔軟性を奪い、あなたを替えの効く歯車へと変えてしまうリスクを孕んでいます。
このような状況で新たな理想像として浮上するのが、ドイツの軍人ハンス・フォン・ゼークトが提唱した組織論における「有能な怠け者」です。
この言葉は、決して単なる怠慢や職務放棄を推奨するものではありません。むしろ、本質を見抜き、無駄を徹底的に削ぎ落とし、最小限の労力で最大限の成果を上げるという、極めて戦略的な姿勢を指します。それは、自分自身の時間とエネルギーという最も貴重な資源を、本当に重要なことに集中投下するための思考法であり、心身ともに健全で持続可能なキャリアを築くための知恵なのです。
本稿では、この「有能な怠け者」という理想を現実のものとするための具体的な思考法と実践術を、マインドセットの転換から具体的な業務スキル、そして周囲を巻き込む対人関係術に至るまで、体系的に解説していきます。
マインドセットの転換:「働き者」から「怠け者」へ。そして「真のハイパフォーマー」への意識改革
具体的なテクニックを学ぶ前に、まず取り組むべきは根本的な意識改革です。
なぜなら、「有能な怠け者」になることは、単に仕事のやり方を変えるだけでなく、仕事への向き合い方、貢献の定義そのものをアップデートするプロセスだからです。
このマインドセットの転換こそが、小手先の効率化にとどまらない、キャリア全体の質的向上を実現するための戦略的な土台となります。
「有能な働き者」が組織にもたらす負のサイクル
まずは、これまでがむしゃらに働いてきたことを想像いただきながら、その負の側面にスポットライトを当ててみましょう。
自己犠牲を厭わず、身を粉にして働く有能な働き者。一見、組織にとって貴重な存在に思えますが、現代の組織においてその評価は必ずしも高くありません。
むしろ、過剰な働き方は本人、家族、そしてチーム全体にまで、負のサイクルをもたらす危険性を孕んでいます。
- 個人の幸福度の低下: 常に辛そうに仕事をしている状態は、自分自身の幸福を遠ざけます。プライベートな時間を犠牲にし、家族や大切な人との関係にも悪影響を及ぼしかねません。
- 周囲への心理的負担: 余裕のない態度は、周囲に「話しかけにくい」という印象を与え、腫れ物に触るようなコミュニケーションを生み出します。結果として、チームの心理的安全性を損ないます。
- 部下の成長阻害: 上司が常に部下や後輩の尻拭いをしていると、部下は「信頼されていない」と感じ、主体的に成長する機会を奪われます。
- 組織文化の悪化: 「あんな上司にはなりたくない」と部下に思われるような働き方は、次世代のリーダー育成を阻害します。さらに、その働き方が評価される文化が定着すると、組織全体から笑顔が消え、疲弊した雰囲気が蔓延してしまいます。
あなたのチームを見渡してください。最も「献身的」に見えるメンバーの周りで、こうした兆候は起きていませんか?それはコミットメントの証ではなく、燃え尽きと成長停滞の危険信号です。
「余裕」が生み出す戦略的価値
「有能な怠け者」が生み出す余裕は、単なる休息時間ではありません。それは、目先のタスク処理から一歩引いて、より大局的な視点を得たり、新たなスキルを習得したりするための、未来への戦略的投資です。
そして何より、笑顔で働くことには計り知れない価値があります。あなた自身が笑顔でいることは、個人の幸福度を高めるだけでなく、職場の仲間へ安心感を与え、チーム内のコミュニケーションを円滑にします。
そして何より、MITのダニエル・キムが提唱した「成功循環モデル」における「関係性の質」を高める上で不可欠な要素です。良好な人間関係は、質の高い思考や行動を生み出し、最終的にチーム全体の成果向上へと繋がるのです。
貢献の再定義ー真のハイパフォーマーとは?
さて、有能な働き者が個人の業績だけで評価される時代は終わりを告げました。
現代の組織が求める「真のハイパフォーマー」とは、MITのダニエル・キムが提唱する「成功の循環モデル」の4つの質すべてに貢献できる人材です。
成功の循環モデルとは?
- 関係性の質: 良好なコミュニケーションを促進し、お互いに助言やサポートをし合える雰囲気を作れること。
- 思考の質: 多様な人々から助言を得ることで、個人およびチーム全体の思考を深化させ、質の改善に貢献できること。
- 行動の質: 質の高い思考に基づき、より効果的なアクションを促し、メンバーの行動改善に貢献できること。
- 結果の質: チーム全体の成果、すなわち業績向上に貢献できること。
すなわち、自分一人が突出した成果を上げるだけでは不十分です。
チーム全体の「関係性」「思考」「行動」の質を高め、結果として組織全体の成果を引き上げること。これこそが、現代における真の貢献であり、ハイパフォーマーの証なのです。そして、この4つの質すべてに貢献するための原資こそが、「有能な怠け者」が生み出す「余裕」なのです。
タスクに追われる「働き者」には、関係性の質を育む時間も、思考の質を深める余白も残されていません。
この新しい評価軸を理解することが、次章で解説する具体的な実践術を効果的に活用するための基盤となります。
実践!真のハイパフォーマーへ
マインドセットの転換が完了したら、次はいよいよ「真のハイパフォーマー」という理想を現実にするための思考法や、具体的なツール、そして手法を習得していきましょう!
ここで紹介する3つの実践術は、日々の業務を効率化し、戦略的な「余裕」を生み出すためのパワフルな学術知です。
実践術①:「やらないこと」を決める優先順位付け
経営学者ピーター・ドラッカーは、「何を行うかではなく、何を行わないかを判断できる人が成長する」という言葉を残しました。
これは、有限な時間とエネルギーを最も価値ある活動に集中させることの重要性を示唆しています。そのための強力なフレームワークが「アイゼンハワー・マトリクス」です。
このマトリクスは、タスクを「重要度」と「緊急度」の2軸で分類し、それぞれに取るべきアクションを明確にします。
| 緊急度が高い | 緊急度が低い | |
| 重要度が高い | 第1領域:すぐやる すぐに取り組むべき最重要課題。クレーム対応や納期の迫った仕事など。 |
第2領域:計画する 自己投資や中長期的なプロジェクト、人間関係構築など、将来の成功に不可欠な活動。 |
| 重要度が低い | 第3領域:任せる 他者に任せる、または自動化すべき業務。多くの会議や形式的な報告書など。 |
第4領域:やらない やめるべき無駄な習慣やタスク。SNSの長時間閲覧や不要な飲み会など。 |
この実践例として、メジャーリーガーの大谷翔平選手が挙げられます。彼にとって第1領域は、日々の練習や試合の準備という本業です。
一方で、記者会見での対応や資産管理といった第3領域のタスクは、代理人に委任することで本業への集中を維持しています。
さらに、結婚や家族計画といった第2領域の重要事項を高校時代から計画的に進め、芸能人との交際や過度な飲酒といった第4領域の活動はきっぱりと排除しています。
これは野球選手だけの話ではありません。彼のグラウンド外での「やらないこと」の徹底こそが、グラウンドでのパフォーマンスを最大化しています。あなたのパフォーマンスを阻害している第3、第4領域のタスクは何でしょうか?
実践術②:複雑な問題を構造化する「ロジックツリー」
複雑な問題に直面したとき、短絡的な解決策に飛びついてしまうことは、根本的な解決を遠ざけるだけでなく、新たな問題を生み出す危険さえあります。こうした罠を避けるために有効なのが、問題を構造的に分解して考える「ロジックツリー」です。
ロジックツリーとは、一つの大きな問題を、より小さく、管理可能な要素に分解していく思考法です。これにより、問題の全体像と構成要素の関係性が可視化され、本質的な原因を特定しやすくなります。
たとえば、「少子化問題」という非常に複雑な課題を考えてみましょう。これをロジックツリーで分解すると、「経済的要因」「働き方・労働事情の問題」「価値観の問題」といった複数の大きな枝に分かれます。さらに「経済的要因」は「若年層の給与水準」「教育費の増大」「住宅問題」などに細分化できます。このように問題を構造化することで、「保育料の無償化」も「若年層の所得向上」も、それぞれが巨大な問題の一部に対する有効な一手であり、どちらか一方だけを批判するのは的を射ていないことが論理的に理解できます。
この思考法を身につければ、どんな複雑な問題でも冷静に構造を把握し、多角的で効果的な解決策を導き出せるようになります。
実践術③:学習サイクルを回す「アジャイル思考」
「一度で完璧な正解を出さなければならない」というプレッシャーは、行動を鈍らせ、成長を妨げる大きな要因です。このプレッシャーから自らを解放し、学習と成長を加速させるのが「アジャイル思考」です。
アジャイルとは「素早い」を意味し、ビジネスにおいては「企画→実行→結果→言語化」という仮説検証のサイクルを高速で回す仕事のスタイルを指します。
重要なのは、壮大な計画を立てて一度に実行するのではなく、小さなアイデアを素早く試し、その結果から学んだことを次に活かすことです。
- コカ・コーラ社は、年間100以上の新商品を市場に投入し、その中からヒット商品が生まれるというサイクルを繰り返すことで、「ジョージア」や「綾鷹」といった主力ブランドを育てました。
- ホンダは、当初目指していた大型バイクが売れず、試行錯誤の中で生まれた「スーパーカブ」が意図せぬ顧客層に受け入れられたことで、世界的な企業へと飛躍しました。
- ユニクロの柳井正氏が掲げる「一勝九敗」という言葉も、一つの成功が数多くの失敗の上に成り立っていることを象徴しています。
積極的に失敗し、そこから学ぶ。このアジャイルな姿勢こそが、不確実な時代を生き抜くための必須スキルです。
これらの実践術は、単なる時間管理術や問題解決手法にとどまりません。
これらを使いこなすことで、あなたは日々の業務から解放され、より創造的で戦略的な活動に時間を使うための余裕を手に入れることができます。
周囲を動かす「ハイパフォーマー」の対人関係術
さて、具体的な思考法やツールをインストールした後は、他者との協働を考えます。
「真のハイパフォーマー」は、決して孤独な存在ではありません。むしろ、自らのタスクを効率化して生み出した「余裕」を、チーム全体の生産性を高めるための対人関係の質向上に投資します。
このセクションでは、個人の能力を組織の力へと昇華させるための、具体的なコミュニケーション戦略を解説します!
信頼と影響力の源泉:「ロゴス・パトス・エトス」
古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、人を説得するための3つの要素を提唱しました。
これは2000年以上経った現代のビジネスコミュニケーションにおいても、極めて有効なフレームワークです。
- ロゴス(論理): 筋道の通った説明。AだからBである、という飛躍のないロジックは、相手に納得感を与えるための基本です。
- パトス(情熱): 自分の想いや感情。なぜこれをやりたいのか、あなたのために何をすべきか、といった情緒的な訴えかけは、相手の心を動かし、共感を得るために不可欠です。
- エトス(信頼): 日頃の言動によって築かれる人格的な信頼。あなたが普段から信頼に足る人物でなければ、どれだけ巧みな論理や情熱的な言葉も響きません。
そして、これら3つを同時に達成する鍵となるのが「オーセンティック(真心)」であることです。その基本姿勢は、常に「徹底的に相手の立場に立つ」こと。
自分の利益のためではなく、相手や組織にとっての最善を考える真心が、論理に力を与え、情熱に説得力をもたらし、揺るぎない信頼を築き上げるのです。
「良い関係」を築くための6つの原則
良好な人間関係は、一朝一夕には築けません。しかし、デール・カーネギーがその名著で示した原則は、日々の意識と実践によって誰もが習得可能なスキルセットです。
デール・カーネギーの名著『人を動かす』からですが、原題が “How to Win Friends”(いかにして友を得るか)である点は重要です。
目的は、他者の操作ではなく、真の信頼関係の構築にあることを心に留めておきましょう。
- 相手に関心を寄せる: 相手の仕事や趣味について質問するなど、純粋な興味を示す。
- 笑顔で接する: 笑顔は相手の警戒心を解き、安心感を与える最もシンプルな方法。
- 名前で呼びかける: 「〇〇さん」と名前で呼びかけることで、相手を個人として尊重する姿勢を示す。
- 聞き手にまわる: 自分が話すよりも、相手の話を真摯に聞くことに徹する。
- 相手の関心事を話題にする: 相手が興味を持っていることを話題に選ぶことで、会話が弾みやすくなる。
- 相手にとって大切な存在であろうとする姿勢: 相手を助け、支えようとする誠実な態度は、言葉以上に伝わる。
これらの原則は、友を得るための技術であり、職場の「関係性の質」を向上させるための具体的な行動指針です。
対立を協調に変えるコンフリクト・マネジメント
社内で意見が対立したとき、それは多くの場合、メンバーが「同じ方向を向いて仕事をしたい」と真剣に考えているからこそ起こる健全な現象です。この対立を建設的な議論へと導き、より良い結論を導き出す能力は、リーダーにとって不可欠なスキルです。
対立解決で目指すべきは、常に「Win-Win」の関係です。どちらか一方が勝ち、一方が負ける「Win-Lose」や、お互いが不満を抱えたまま終わる「Lose-Lose」(感情的な対立)は、長期的に見て組織の力を削いでしまいます。
対立を乗り越えるためには、まずその原因がどこにあるのかを冷静に分析する必要があります。
- 「目的のズレ」か?: そもそも目指しているゴールが異なっている場合は、まずお互いの目的をすり合わせ、共通のゴールを設定する議論が必要です。
- 「方法のズレ」か?: 目指すゴールは同じでも、そこに至る手段についての考えが違う場合は、それぞれの方法のメリット・デメリットを比較検討し、最適なアプローチを共に見つけ出すことができます。
これらの対人スキルを駆使して、信頼関係を築き、対立さえもチームの力に変えることができる人材こそ、組織に求められる真のハイパフォーマーと言えるでしょう。
またこれらは、交渉現場でも応用可能な知見となります。
まとめ!明日から始める「有能な怠け者」そして「真のハイパフォーマー」への第一歩
いかがでしたか?
本稿で旅してきた「有能な怠け者」への道は、単なる生産性向上のテクニック集ではありません。それは、自分という有限な資源をどこに投資するのかを自ら決定し、キャリアの主導権を取り戻すための、極めて主体的な生き方の選択なのです。
その実現には、3つの柱がありました。
- マインドセットの転換: 個人の成果だけでなく、チーム全体の「関係性・思考・行動・結果」の質に貢献することが真のハイパフォーマーであると認識を改めること。まずはマインドセットが大事です。
- 実践(具体的手法): 「アイゼンハワー・マトリクス」で優先順位をつけ、「ロジックツリー」で問題を構造化し、「アジャイル思考」で学習サイクルを回す具体的なスキルを紹介しました。
- 対人関係術: 生み出した余裕を使い、ロゴス・パトス・エトスを意識したコミュニケーションやコンフリクト・マネジメントで周囲を動かし、組織全体の力を引き出すこと。
これらは、決して一部の天才だけのものではありません。意識と訓練によって、誰もが身につけることができるものです。今日この瞬間から、あなたも「真のハイパフォーマー」への道を歩み始めることができます。
まずは、手帳を開いてアイゼンハワー・マトリクスを描き、今の自分のタスクを整理してみることから始めてみましょう。あるいは、明日、職場で同僚と話すときに、意識して相手の名前を呼んでみるだけでもいいでしょう。

その小さな一歩が、あなたを日々の忙殺から解放し、より戦略的で、より充実したキャリアへと導く確かな変化の始まりとなるはずです!
ビジネスパーソンの基礎能力をしっかり身につけたい方はこちらから!