マーケティングの基礎知識の中に「ポジショニング」があります。商品・サービス、企業の位置を設定するもので、設定するにはいくつかの手順を踏まなければなりません。ただ設定するだけでは意味がなく、きちんと分析をした上でポジション変更を行う必要があります。
本記事では、ポジショニングの概要と設定手順、設定するメリットや設定する際のポイントを解説します。
ポジショニングとは
ポジショニングとは、自社商品やサービスの独自ポジションを設定し、他社の商品・サービスと差別化するための手法のことです。優位性を確保するために行われることが多く、顧客の視点に立つことが重視されています。
マーケティング戦略において基本中の基本とされており、ポジショニングができていない商品やサービスは差別化が難しいと言われています。売り上げに大きな影響を与えることから、ポジショニングは販促活動において非常に重要なものなのです。
STP分析との関係
ポジショニングは、STP分析を構成する要素の一つです。STP分析の構成要素は、ポジショニングを含む次の3つです。
- セグメンテーション(Segmentation)
- ターゲティング(Targeting)
- ポジショニング(Positioning)
STP分析の最後に位置しており、企業はこの結果をもとに具体的な広告戦略や販促方法を検討します。つまり、セグメンテーションとターゲティングを正確に行っていても、ポジショニングで失敗してしまうとその後の工程が意味をなさなくなってしまう可能性が高くなるのです。
ポジショニングとSTP分析は深い関係にあり、切手も切り離せないものです。マーケティング戦略を検討するうえで、非常に重要な工程であることを理解しておきましょう。
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ポジショニング戦略を成功させる4つの条件
グロービス経営大学院によれば、ポジショニングを成功させるには以下の4つの条件を満たしている必要があると言われています。
マーケティングにおけるポジショニングに関する最も有名な言葉のひとつに、”Positioning is not what you do to a product. Positioning is what you do to the mind of the prospect””ポジショニングは、製品に何をするかではありません。ポジショニングとは、見込み客の心に何をするかということです。”というものがあります。この言葉は、製品の機能的な特性だけに注目するのではなく、製品にまつわる感情的な利益や願望を売ることの重要性を強調しています。 |
(引用:アル・ライズ & ジャック・トラウト「ポジショニング戦略」)
簡単に言い換えれば、顧客に伝わるかどうか、共感してもらえるかどうかが重要であるということになります。そのためにはターゲットサイズが適切でなければならないうえに、製品のポジショニングと企業のポジショニングが正しいかどうかを検討しなければなりません。
この部分が大幅にずれてしまうと、ポジショニング以降のマーケティング戦略に悪影響を及ぼす可能性があります。上記の4つの条件がクリアできているかを検討し、ポジショニングを決定しましょう。
ポジショニングの設定手順
ポジショニングの設定手順は、STP分析のフローと同じです。具体的には次の順序で行われます。
- セグメンテーション、ターゲティング
- ポジショニングの軸の決定
- ポジショニングマップに他社を配置し、自社のポジションを決定
フローごとの詳細を詳しく解説します。
セグメンテーション、ターゲティング
ポジショニングを行うためには、先にセグメンテーションとターゲティングを完了しておく必要があります。セグメンテーションは、変数と呼ばれる基準を用いて顧客を分類し、細分化するプロセスです。
セグメンテーションの完了後は、その結果をもとにターゲティングを行い、自社がターゲットとする市場を選びます。「6R」と呼ばれるフレームワークを活用してターゲティングをするのが一般的です。
ここまでの工程を完了させて、ポジショニングに移ります。
ポジショニングの軸の決定
ポジショニングを行う際には、ポジショニングマップと呼ばれるものを用いて決定するのが一般的です。ポジショニングマップとは、任意で縦軸と横軸を定め、自社と他社の商品・サービスを比較するために用いるグラフのようなものです。
ポジショニングマップの軸は任意で決定できますが、多すぎると効果的なアピールが見つからなくなってしまい、逆に少なすぎると漠然としすぎて差別化要素が見えにくくなってしまいます。適切な本数というのは商品やサービスによって異なりますが、概ね2本程度の軸を決めておくといいでしょう。
また、軸の選び方は顧客のニーズを踏まえた上で設定するようにしてください。差別化を図れるというポイントだけでは、顧客に響かないマーケティング戦略になってしまう恐れがあるためです。ポジショニングマップの軸は、その後の工程に大きな影響を与えるため、慎重に検討しましょう。
ポジショニングマップに他社を配置し、自社のポジションを決定
軸を決定した後は、競合する他社の商品やサービスをポジショニングマップに配置します。これによりターゲットとする市場での競合の位置関係や状況を把握することができるようになり、自社をどこにポジショニングするのかが決めやすくなります。
自社を配置する場所は、自社製品の展開が有利なポジションです。ポジショニングマップで言えば空白になっている場所のことです。ポジショニングマップが空白であるということは、競合他社がそのエリアに進出していない可能性がある証拠となります。
またこれに加えて、企業理念やブランドイメージ、投入できる経営資源などを踏まえてポジショニングを行いましょう。事業戦略を立てる上でも、これらの要素を一緒に検討することで成果につながりやすくなります。
ポジショニングを行うメリット
マーケティングにおいてポジショニングは重要ですが、必ずしも設定する必要がないと言われています。一方でポジショニングを設定することは非常に重要であり、次のような3つのメリットが享受できると言われています。
- ブランディングなどの戦略の組み立てに有効
- 競合他社との明確な差別化ができる
- 選ばれる理由ができる
商品やサービスが唯一無二の存在でない限り、ポジショニングは実施したほうが良いでしょう。詳しく見ていきます。
ブランディングなどの戦略の組み立てに有効
ポジショニングの設定は、現時点の自社や商品のポジションを見直すことになります。競合他社との差別化はどこで測るのかなどを考えるため、コンセプトの確率やブランディングに有効なのです。
競合他社との明確な差別化ができる
多くの商品やサービスが市場に出回る中、自社の商品を顧客に手に取ってもらうためにはブランディングが必須です。ポジショニングを行うことでどのようにブランディングするかの計画が立てやすくなるため、ぜひポジショニングを実施するようにしてください。
選ばれる理由ができる
市場での立ち位置が明確になれば、それだけで選ばれる理由になります。単なる広告戦略のためにポジショニングを行うのではなく、立ち位置が明確になることで顧客がそれに対してベネフィットを感じることができるようになるかもしれません。
ポジショニング設定を行う際の注意点
ポジショニングを設定する際は、次の2点に注意をしましょう。
- 定期的に見直してリポジショニングを行う
- 自社の経営理念などに沿っているかを確認する
ポジショニングは一度設定して終わりではありません。設定したポジションが、自社の経営理念に沿っているかを定期的に検討し、ずれていると感じればリポジショニングする必要があります。
ポジショニングを誤ってしまうと、顧客からの評判が下がるだけではなく、社内からも不満の声が噴出する可能性があります。そうならないためにも一度設定したポジションを定点観測し、あっていないと判断できればリポジショニングを行うなどの工夫が必要です。
ポジショニングの成功事例
ポジショニングを行った結果、大きな成功を収めた企業はいくつも存在しています。本記事では特に有名な成功事例を3つ紹介します。
Apple
GAFAの一角として知られるAppleは、当時性能重視で購入されていたコンピューターにデザイン性を追加し、高性能・高価格でスタイリッシュなアイテムを市場に投入しました。当時はスタイリッシュさを売りにしている競合他社はなく、そこをAppleがポジショニングした形です。
結果、唯一無二の存在として成功を納めただけではなく、いわゆる「イケてるビジネスパーソン」のマストアイテムとなるまでに成長しました。ポジショニングの成功事例を紹介するうえで欠かせない事例と言えます。
スターバックス
スターバックスも、ポジショニングで成功した企業のひとつです。スターバックスでは自宅や職場以外に過ごす、いわゆるサードプレイスというコンセプトを打ち出し、ノマドワーカーを中心に価値を感じてもらえるようなポジションを決定。アプローチを実施しました。
喫茶店の低価格競争が進む中で独自のポジションで現在の地位を確立し、現在ではスキマ時間で仕事ができるように、駅の構内などに出店して需要を満たしています。フリーWi-Fiの提供なども実施したことで、ポジショニングで大成功を納めた事例となったのです。
ユニクロ
ユニクロが台頭する前のアパレル市場は、お金を出して機能性を求める人と、あまり服を購入しないものの機能性を重視している人が存在していました。ユニクロは、それまで存在していなかった低価格・高機能をコンセプトにポジショニングを行い、大ヒットしたのです。
面白いのは、セグメンテーションで顧客の声ではなく自社の強みを生かせる場所を模索した点です。従来のアパレル業界では顧客ニーズを重視する風潮があった中で、ユニクロはその常識を壊して成功した形となりました。
まとめ
ポジショニングは、多くの商品やサービスが存在している現代社会において必須ともいえるマーケティング戦略です。新商品だけではなく既存商品も含めてポジショニングを見直すことで、新たな市場の開拓につながるかもしれません。
成功事例に見られるような成果につながらなかったとしても、企業の価値を高めるためにもポジショニングは有効な方法です。一度設定しただけで終わらせず、継続的に観測して見直すことも忘れてはいけません。
自分でやりたい!となったら↓こちら↓の記事をご参照くださいね!
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