ポーターの5要因分析
Porter’s 5-force framework
- 競合企業だけでなく、より幅広く産業の大構造を見て、なぜ利益が減っているのか/なぜ利益が高いのか、その原因を突き止めるための分析手法。
- まず、自社と同じ市場を奪い合っている要因が3つ。競合企業、新規参入、代替品である。
- 次に、自社が販売した製品の生み出す利益を奪い合っている要因が2つ。買い手と、売り手である。
5つをまんべんなく見るというより、自社の利益を奪っている問題がどこにあるかを特定するのに向く
関連ワード
- SWOT分析
- ポーターの一般戦略分析
- SPA、垂直統合
ポーターの5要因分析とは
経済学的に考えると、自社と利益を奪い合っている対象は大きく5つ(しかない)。この5つのうちから、一番最初に手をうつべき、利益に打撃を与えている要因は何かを特定するうえで力を発揮します。
まずは市場の奪い合い構造をみます。いま競争している競合企業のほか、他産業ながら市場を奪っている代替品や、これから参入の可能性がある資金参入のリスクを分析します。
次に、自社の得るべき利益を取り合っている構造をみます。たとえば8000円でセーターを販売したとして、原材料費に2000円かかっているなら、原材料の「売り手」が自分たちの利益を2000円分圧迫していると考えます。また、客はそのセーターに1万円の価値を感じていたとするなら、本来1万円でも販売できたのに8000円で売っているから顧客が2000円分の利益を奪っていると言えます。顧客や取引業者との取引価格の見直しも大切ということです。
これら5つの要因のうちから、一番深刻な問題こそが、経営戦略として意識を集中すべき問題です。大きな構造で捉えて、何が本当の問題か?を分析します。
事例紹介
任天堂 スイッチ
■2010年代、ゲーム業界を恐るべき波が襲いました。スマートフォンの隆盛により、スマホアプリに顧客が一気に流れたのです。ゲーム業界の雄、任天堂も大変な苦境に陥りました。
■当時任天堂が市場で直接競合しているのはソニー(SIE)のプレイステーションでした。しかし、ここで取るべき戦略は「ソニーを倒す」ことではありませんでした。代替品であるスマートフォンアプリから、市場を取り戻さなければならなかったのです。
■任天堂が下した決断は「携帯機と据置機の一本化」。携帯機はもはやスマートフォンに勝てません。しかし、テレビで遊ぶ据置機に逃げたのでは、市場をまるごとスマートフォンに明け渡してしまいます。こうして、携帯機でも据置機でもない、独自なハード「Switch」が誕生しました。
■任天堂は、これまで育ててきた自社の有力なIP(知的財産)を総動員して、スマートフォンでは味わえないゲーム性で顧客を呼び戻しました。マリオ、ポケモン、どうぶつの森、ゼルダなど…戦略は功を奏し、2010年代後半から任天堂は大きく業績を回復しています。
著者・監修者
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1982年生。経営学者/やさしいビジネススクール学長/YouTuber/東京大学 経済学博士
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専門は、経営戦略論・イノベーション・マネジメント、国際経営。
「アカデミーの力を社会に」をライフワークに据え、日本のビジネス力の底上げと、学術知による社会課題の解決を目指す。
「やさしいビジネススクール」を中心に、YouTube・研修・講演・コンサル・著作等で経営知識の普及に尽力中。
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