イノベーションとは何か。それは価値創造である!!【イノベーションマネジメント1-1】
新シリーズといたしまして、今回からは、イノベーションマネジメントという科目を皆さんにお伝えしていきたいと思います。
「イノベーション」。最近はいろんなところで聞く言葉になったと思います。
実際世の中でもとっても大切なものと考えられておりまして、新しい事業を創造するための理論や資本の体系が、イノベーションマネジメントなんです。
けれども、何でこれがこんなに大切になっているのか、そして実際どうやってイノベーションを起こしていくのか、そんなことをですねこれから皆さんにお伝えしていきたいと思います。
イノベーションとは何か
まず第1回はですね、イノベーションとは何かということをきちんと定義しておきたいと思います。
というのは、イノベーションという言葉、こんにちはバズワードですよね。
何を指してもイノベーションどこに行ってもイノベーションって言葉を聞く。
ノーベル賞ものの技術革新を起こすことがイノベーションだと、そういうような文脈で使う人もいます。
技術を実際に商品化すること。これがイノベーションなんだという人。
人々の考え方を刷新して、新しい時代を切り開く、これがイノベーションなんだという人。
いろんなイノベーションの考え方があります。
こんな何でもかんでもイノベーションと言われる中で、本日はまず学術的にイノベーションというのをどういうふうに定義されているのか、そこから確認していきたいと思います。
イノベーションって何?
ちょっと皆さんにクイズ形式で考えてもらいたいと思います。
ここで私がお見せしているこの四つの商品というのは全部イノベーションなんです。
私達学者は、これらを全部イノベーションだと考えている。
一番左上、iPhone、このiPhoneがイノベーションだと言われて、皆さんは「これはイノベーションの例だね」と容易に納得いくと思うんです。
なぜ皆さんはこれをイノベーションとして認めているのか?ちょっと考えてみてください。
それから右上、世界で初めての商業化されたハイブリッド化、プリウス、電気の力とガソリンの力両方を使ってハイブリッドで走るエコな車これも皆さん何て言いますか、イノベーションだよなと言われれば納得できると思うんですけれども、、、
よく考えてみましょう。
どうしてこれを皆さんイノベーションだと思うのか。
そして、ここからが重要。
実は私達はこういうものもイノベーションだとみなしているんです。
レッドブル、中身の成分はほとんどこれまでの清涼飲料水とほとんど変わりません。従来の炭酸飲料と全然変わりません。
何が変わったかといえば、「翼を授ける」というこのメッセージ性、これが変わっただけなんですよ。
でも、人々はそのメッセージを受け取って、他の炭酸飲料よりも高い値段だけども、このレッドブルという商品を買っていく。
実際にこれは経済的な利益を上げているわけですけれども、私達はこういうものもイノベーションだと認めているんです。
それから最後に紹介するのは右下こちらは、阪急そばという大阪の阪急電車という電車に乗ったときに食べられるものなんですけども、ポテそばという名前で知られてる商品です。
蕎麦の上にポテトが載ってるんですね。
日本蕎麦の上にフレンチフライが載ってるわけですけれども、ところがこれがですね、皆さんの予想に反してかわかりませんけれども、販売されていた時期はですね、年間で100万食ぐらい売れていたぐらいの大ヒット商品なんです。
こういったものも私達はイノベーションだと認めているんです。
さあ、イノベーションって何なのか、ちょっと時間があればぜひここでちょっと動画を止めて考えてみてもらいたいわけなんですけども。
私達学者はどういうふうにイノベーションを定義しているのか、こんな感じになります。
イノベーションとは
イノベーションというのは、社会に新しい価値を生み出し提供することです。
有形無形を問わないんですね、芸人さんの新ネタでもいいんです。
何でも含めて社会に新しい価値、別の言い方をすれば人々に新しい喜びを届けられたら、それは何でもイノベーションなんです。
そして次に重要なこととしては、この価値が永続的かどうかも、問わなくていいです。
ひとときでも人を喜ばせればいいんです。
たとえば、タピオカミルクティー。そろそろ世間ではちょっと飽きてきちゃってるかもしれませんけれども、このタピオカミルクティーブームっていうのが2019年・2020年ぐらいに起こりましたが、こういう感じで、ひとときだけども人々の心をちょっと温めてくれた、それでちゃんと経済的な利益が出ているなら、価値を産んでいるなら、そういうのもイノベーションだと認めていいというふうに考えるわけです。
そしてここまでの話をなんとなくお察しのようにですね、この幸せの大小・価値の大小というものも問わないんです。
数十円の駄菓子でも、それで子供や大人もちょっと幸せになった。この新しい駄菓子食べて嬉しかったな。それはイノベーション。
値段の問題じゃないんです。
そこに価値を届けられたかどうかが大切なんです。
私はこの「価値を生み出す」というのを「誰かを今よりもちょっとでも幸せにすること」と言っています。それがイノベーションなんだと、というような言い方をしています。
あるいは、その「誰かの幸せに繋がるような原料や手段」でもいいんです。
新しい原材料でこの原材料を使ったら人々にもっと喜びを届けられ、その原材料そのものがいきなり社会の方で新しい価値を生まなくても、その原材料が応用されて、社会に新しい価値を届ける。東レの炭素繊維みたいな話とかです。
あるいは手段でもいいわけです。
今よりももっとコストダウンして合理的効率的に商品が届けられるようになったら安く届けられればより多くの人に届くのだとすれば、こういう今よりももっと効率的な手段で届けられるようになった生産できるなった。
こういうのもイノベーションなんです。
とにかく、この社会に価値を増大させる、そういうような商品サービスですとか、それに繋がってくるような材料や手段の発明そういったものが全てイノベーションなんです。
ここから私がまず第1に伝えたいのは、こういう新しい価値を生み出そうとするその全ての努力に私達は敬意を払うべきだということです。
よくこの起業する人なんかを、日本なんかだと後ろ指を差すような傾向がちょっとあったりするかもしれません。
無茶なことをやっている、阿呆なことをやってる、絶対に失敗する・・・
そんなふうな後ろ指をさすような動きがあるんですけども、ちょっと待ってくださいと、よく考えてみましょう。
この洋服だって、誰かの発明品、眼鏡だって発明品だし、時計だって発明品だし、カメラだって発明品、YouTubeだって発明品、この世界を作り出している全てのものは、誰かの知恵誰かの発明によって、作り出されているんです。
そうであるとするなら、この新しいものを生み出してそれを社会に届けようという行為は、起業によってなすものにしても、会社の中でやることにしても、そういうことに邁進してる人敬意を表するともう後ろ指を指さなんてことはあってはならないはずです。
そういった過去の先人たちの挑戦の積み重ねの上に、私達の社会は成り立ってるんですから。
ただし、ここで私はここまで自分が喋ってきたことを少し修正させてもらいます。
私は先ほど、発電発電発明と発明という言葉を使ったんですけど、発明はですね、英語で、インヴェンションという言い方をします。
イノベーション(innovation)じゃないんですね、インベンション(invention)。
インベンションというのは単に発明しただけ。
イノベーションというのはそれ以上のことなんです。
その違いを考えるにあたっては、こんな事例がわかりやすいかもしれない。
これはGoogleさんが大きな失敗プロジェクトにしてしまったののGoogle_Glassという商品です。
こちらの商品はですね、多機能の眼鏡型端末で、この眼鏡型端末を使っていろんな情報を見たり動画を見たりデータを調べたり、AIを使って顔顔認識なんかをして、あれは中村さんですあれは中川さんですみたいな人の認識をしたりとか、そういったいろんな機能を持っている、とても優れたウェアラブルデバイスだったわけなんですね。
ところがこの商品はうまく世の中で広がらずに、Googleさんは日本円にして数百億円の損失を出してしまったと言われています。
私達は、こういうチャレンジはチャレンジとして敬意を表するども、イノベーションとは言えないのだというのが、実は学者としての立場になります。
イノベーションというのは、それを通じて社会に綺麗な経済循環を作り出してこそだと考えるんですね。一時的にではあったとしても、経済的にサステナブルであるということ。費用を売り上げが上回ることが必要なのです。
事業として継続可能であり、経済的に循環する形であることが大切
1回きりのボランティアで、費用を出しながらやったのでは、それはイノベーションにはならないのだと考えるわけです。
例えば、アフリカの子供たちの健康状態を改善するような食事だとか、方法だとか、あるいはワクチンみたいなものを発明したとしましょう。
そして皆さんがそれを慈善事業で、人々から寄付を募って、一介の慈善事業として数億円数十億円を使って子供たちにアフリカの子供たちにワクチンを打ったり、食事を届けたりしたとする。
これ1回きりなんですよ。
1回きりっていうのはなぜ問題なのかというと、ちゃんと利益を上げてそれで家生活をしていける人がいれば、長らく何十年にもわたってワクチンを届け続けることができます。
しかしこれをボランティアでやったら、最初に配った数千人で終わってしまう。
事業として営むからこそ、多くの人に波及し、社会が変わるわけです。
イメージしてください。このグーグルグラスが無料で作り出されて売られたとしたら、最初にこの眼鏡を無償で受け取った人だけが眼鏡の恩恵を受けることができることになる。これでは社会が変わらない。
しかしこの眼鏡型新商品が、ちゃんと事業の中で営まれ続けているから、多くの人にとどき、あまつさえ技術はいっそう進化して、よりよい製品になっていく。
社会を変えようと思うのであれば、きちんと経済的に循環する形が必要なのです。
芸人さんのお笑いネタとかはどうなの?と思われるかもしれません。ぜんぜんサステナブルじゃないじゃないかと。しかし、よく考えてください。幸せを届けるのは一瞬だけにしても、そこでちゃんと収入を得て利益を上げることができていれば、そのお金を使って、次なるチャレンジができる。次のネタを作るチャンスが与えられます。
この意味で、イノベーション自体が、短期で終わってしまう長期で終わってしまうその違いはあったとしても、きちんとそこで収入を上げて、かかった費用を賄うのに十分な利益を上げるということがちゃんと社会を回していく上では大切なことになるんですね。
利益とは、社会の価値の純増を表す。
これはもうちょっと理論で説明しましょう。
この辺が中川経営学のポイントですよね笑。
他のところでもお話していますが、費用というのは、社会の価値あるものをどれぐらい消費したのか、その金銭的なバロメーターなわけです。
人の労働力を使った労働というのはこの地球上のとっても貴重な財産です。
人の労働力や知恵というのはとっても貴重な財産なので、それを使ったならば、対価を払わなきゃいけない。部品や材料なんかにしたってそうですし、ありとあらゆるもの経済活動をするために必要なものは、何を消費するにしてもそこで地球上の資源が消耗されている。
それに対してきちんと対価が払わなければ、地球は持たなくなってしまうわけです。
というわけで、対価:費用というものは、社会において価値あるものをどれくらい消費したのかということを意味している。
これに対して、イノベーションを起こして、新しい商品がやサービスが売れて、これぐらい売り上げが立ったとするなら、それは社会に対して新しく生み出した価値なんです。
そうすると、そのイノベーションが真の意味で社会に届けた価値というのはまさにこの売上と、かかった費用の差分「利益」ですね、この利益のことを私達はですから、net value addedという言い方をします。
社会における価値の純増なわけです。
使った価値よりも生み出した価値の方が大きくなったときに、社会は発展するわけです。
そういう活動が積み重なって、私達の経済は発展し、社会は発展してきたわけです。
このように考えますと、イノベーションにおいて利益が大切だということ、ご理解いただけたんじゃないかと思います。
たくさんの費用をかけて、たくさんの地球上の資源を使って、これぽっちしか価値を生み出せなかったとすれば、その分だけ地球上の価値を浪費してしまっている方なんですね。
ですから、この地球の社会を健全に営んでいこうと思えば、利益、またの名前を社会における価値の純増をきちんと生みながら、事業活動を行っていく。これが大切になっていくわけです。
イノベーションが社会をつくる。
なぜ、こんにちイノベーションが大切なのかもう皆さんはなんとなくご理解いただけたんじゃないかと思います。
先ほども言いましたように、この社会というのはイノベーションで出来上がっているんです。
私は東京と大阪を往復するような生活をコロナ前まではずっと行っていました。
ほぼ毎週往復するような生活だったんですけども、そうやって東京の人にもこの経営学の知識を提供し、大阪でも大学で授業をする、そういうことが可能になったのは、新幹線飛行機が生み出されたから、新幹線は東京大阪間を2時間半で結びます。
飛行機は1時間で結びます。
これらのイノベーションが行われる前はどうだったかと言えば、東京大阪間は男の人で3週間ぐらい女性の方で4週間ぐらいかかるというふうに言われていました。
ですから、それには私が毎回東京に行くのに3週間かけていたらとてもじゃないけど私の仕事が回らない。
私がこうしてこの東京大阪を往復するような生活ができていたのも、新幹線や飛行機のイノベーションがあったからです。
こうしてこれまで私達の社会は、そして経済というものはイノベーションによって発展してきた。
そしてイノベーションを担った人たちは、それを通じて会社の成長を自分の事業の成長、あなた自身の栄光栄誉。
そういったものを掴み取ってきたわけです。
というふうに考えれば、社会の発展と自身の栄達、それを両立できるものがイノベーションだとするなら、これはぜひ、健全な野心を持ってチャレンジをして、しかるべきものなんじゃないかと私は考えるわけです。
そして幸いにも、かつて20世紀まではまだまだイノベーションの価格は十分に進んでいませんで、どうやったらイノベーションができるのかまだまだ手探り状態でした。
しかし21世紀に入る頃にもなると、だいぶイノベーションの理論というものが確立されてきて、こんにち、先進的な企業では、新事業の立ち上げ方というのは、かなりの程度、ノウハウが蓄積されるようになってきてます。
そうであるとするなら、今まさに学ぶべきものは、このイノベーションマネジメントイノベーションの方法論ではないでしょうか?ぜひぜひ皆さん一緒にこのイノベーションというものを学んでいきましょう。
著者・監修者
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1982年生。経営学者/やさしいビジネススクール学長/YouTuber/東京大学 経済学博士
詳しい講師紹介はこちら website twitter facebook youtube tiktok researchmap J-Global Amazon
専門は、経営戦略論・イノベーション・マネジメント、国際経営。
「アカデミーの力を社会に」をライフワークに据え、日本のビジネス力の底上げと、学術知による社会課題の解決を目指す。
「やさしいビジネススクール」を中心に、YouTube・研修・講演・コンサル・著作等で経営知識の普及に尽力中。
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