M&A概論(中村 文亮・同志社大学)

講師プロフィール
同志社大学商学部助教
2015年3月大阪大学法学部国際公共政策学科卒業。
2020年3月大阪大学経済学研究科博士後期課程を修了。
2020年4月より近畿大学経営学部に講師として着任。2024年4月より准教授。
2025年9月より現職。
これまで大阪大学と甲南大学で非常勤講師として、経営戦略、組織論、経済学を担当。
専門は経営戦略、組織論、イノベーション論。
M&Aの戦略的運用やM&A後の組織統合(PMI)に関する研究に従事。
2018年9月 M&Aフォーラム賞選考委員会特別賞『RECOF特別賞』
科目概要
現代の企業成長に不可欠な戦略的手段、M&A(合併・買収)の理論と枠組みを学びます。「M&Aは真に買い手に富をもたらすか」という問いを起点に、企業価値評価、戦略的ターゲット選択、そして成否を握る組織統合(PMI)のあり方を検討します。実例を通じ、未来を拓くM&Aの知識を身につけましょう。
この科目でできるようになること
自社や他社が実施するM&Aについて、その戦略的妥当性を評価することができる。
M&Aのエッセンスを理解し、自社の事業戦略にM&Aを適切に活用することができる。
M&A後の組織統合(PMI)を実行する力が身につく。
ライブ講義
なぜ「誤ったM&A」は繰り返されるのか ― 意思決定を歪めるバイアスについて
2026年5月1日(金)20:00~

M&Aに関するニュースの多くは、残念ながら、その「失敗」に焦点を当てたものです。M&Aは新市場の開拓やリソースの獲得を実現し、企業の飛躍的成長を牽引する強力な手段ですが、その失敗確率は50%〜90%に達すると言われるほど、高いリスクを伴います。
多くの経営者が合理的かつ慎重に判断を下しているはずであるにもかかわらず、なぜこれほど多くの案件が暗礁に乗り上げてしまうのでしょうか。その主要な要因の一つとして、先行研究では意思決定プロセスに介在する心理的バイアスの存在が指摘されています。
本講義では、M&Aを取り巻く現状を俯瞰した上で、正常な判断を歪め、企業を誤った買収へと突き動かすバイアスのメカニズムについて深く考察します。
オンデマンド講義
第1回 M&Aの概要〜定義とルールの変化〜

M&A(合併・買収)は、現代の企業がダイナミックな成長を遂げるための戦略手段です。第1回では、合併(Merger)と買収(Acquisition)の定義を整理し、近年大きく変容している日本国内の「ルール」と「常識」について学びます。かつては「悪」とさえ評された「同意なき買収(敵対的買収)」が、現在では非効率な経営を正し、企業価値を向上させるための正当な手段として再評価されています。経産省の新たな指針やM&A事例を通じ、取締役会が果たすべき役割と、M&Aの本来の意義について理解を深めます。
第2回 M&Aの発生要因と戦略的動機

なぜ今M&Aが急増しているのか。第2回では、規制緩和や技術革新、事業承継問題など、企業の背中を押す「5つの外部要因」を構造的に理解します。また、M&Aの核心である「シナジー(相乗効果)」に焦点を当て、統合後の価値が単なる合算を超えるためのメカニズムを検討します。「時間を買う」効果や効率性向上など、成功の鍵を握る戦略的動機と、価値創出に向けた明快なストーリーの描き方を学びます。
第3回 M&Aは買収企業に富をもたらすのか?

M&Aは成長戦略の柱とされる一方、その失敗率は50〜90%に達すると言われています。第3回では、多くの先行研究に基づき「平均的にM&Aは買収企業の価値を高めない」という実態を明らかにします。過剰なプレミアムの支払いや経営者の「思い上がり」、自己利益の追求がいかに成果を毀損するのか。失敗のメカニズムを紐解き、独自価値を生む「プライベートシナジー」の重要性と成功への条件を検討します。
第4回 ターゲット企業の選定

M&Aを成功させるターゲット選定の原則は、自社固有の資源と組み合わせて生まれる「プライベート・シナジー」の具体像から逆算することにあります。第4回では、効率性向上や市場支配力強化など、多様なシナジーのタイプを学びます。また、技術の関連性や組織文化の近さ、誠実性といった企業間の特徴が、買収後の株価や業績に与える実証的な影響を精査し、リスクを見極める力を養います。
第5回 企業価値の評価

「いくらで買うか」の判断は、戦略を数字に翻訳し、経営者の覚悟を問うプロセスです。第5回では、インカム、マーケット、ネットアセットという3つの評価アプローチの特性と使い分けを学びます。特に多くのM&Aで重視されるインカムアプローチに焦点を当て、将来のキャッシュフローを現在価値に引き直す考え方を理解します。買い手固有のシナジーが評価額にどう影響し、いかにして利益を生む価格設定を行うべきかを検討します。
第6回 M&A後の組織統合(PMI)

M&Aの真の成功は、買収後の組織統合(PMI)にかかっています。第6回では、業務プロセスを再編する「タスク統合」と、従業員の心理や文化を融和させる「人的統合」の二面性を学びます。特に、人的統合を優先して信頼関係を築くことでタスク統合を加速させることの重要性を検討します。また、統合に伴う不確実性を管理し、想定外のシナジーを創発させるためのリーダーシップのあり方を探求します。
第7回 クロスボーダーM&A

日本企業による海外企業のクロスボーダーM&Aは、近年件数・規模ともに拡大し、積極的な海外進出が続いています。第7回では、統計データから日本企業のM&A動向を概観するとともに、国境を越える際の最大の懸念事項である「国民文化の違い」が成果に与える影響を検討します。意外にも、国民文化の差異そのものが失敗の直接的な要因となる証拠は乏しく、むしろ組織文化の差異が統合に与える影響に注目すべき実態を学びます。
第8回 M&A力を鍛える

M&Aの成功率は、経験を組織のノウハウとして蓄積するM&A能力(acquisition capability)を鍛えることで向上します。第8回では、意図的な学習プロセスや専門部門の役割、さらには事業売却や提携を通じた知見の獲得について学びます。提携直後の買収に潜む「ハネムーン・シンドローム」の罠や、学習効率を左右するコーポレートガバナンスの影響を紐解き、持続的に成果を出す組織のあり方を検討します。
さらなるアウトプットをしたい方へ
アドバンスドなチャレンジをしたい方向けに、会員限定でアドバンスト問題を用意しています。
やさしいビジネススクールからフィードバックいたしますので、ぜひ挑戦してみてください。
オフィスアワー

日時
2026年5月25日(月曜日) 20:00~21:00
その他の連絡事項
中村先生個人HP
https://sites.google.com/view/nakamura-fumiaki
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