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スタグフレーションが日本経済に与える意味と課題とは?

「スタグフレーション」の意味についてご存じでしょうか。スタグフレーションとは、景気停滞を意味する言葉です。

「インフレーション」や「デフレーション」といった言葉はよく知られていますが、スタグフレーションはあまり使用される言葉ではありません。なぜなら、スタグフレーションは国にとって非常に注意が必要な状況であるためです。

しかしながら、2023年現在の日本は、スタグフレーションに陥る可能性があると言われています。

そこで今回は、スタグフレーションの基本的な意味や、日本経済に与える影響について解説します。

スタグフレーションの意味を理解して、今後の対策を検討しておきましょう。

スタグフレーション
目次

スタグフレーションとは?

スタグフレーションとは、高いインフレーションと低い経済成長が同時に発生する現象を指し、景気停滞を意味する「スタグネーション」と「インフレーション」を組み合わせた合成語です。

具体的には、経済が停滞状況で賃金が上がらないにも関わらず物価が上昇する状況を指します。

日本では、1970年代のオイルショック後にスタグフレーションの状態になっていました。

物価の変動と日本経済の現状

スタグフレーションを理解するために、日本の経済について理解しておきましょう。

日本の経済状況を把握することで、スタグフレーションがどのように経済に影響を与えるのか理解できます。

以下では、経済を把握するための基本的な言葉である「インフレーション」「デフレーション」の解説と合わせて、日本の物価上昇や経済停滞の現状について解説します。

インフレーション

インフレーションとは、物価の上昇を指す言葉です。

物価が高くなるため、デメリットに捉えられやすいですが、決してデメリットだけではありません。

日本でインフレーションが起きた場合、円安になる可能性が高く、外貨収入を得られる観光業などにとってはメリットとなります。

しかし、ハイパーインフレーションまでになった場合は注意しなければいけません。

ハイパーインフレーションとは、インフレーションが過度に進行し、物価が急激に上昇した場合を指し、経済的混乱や社会不安を引き起こす可能性があります。

デフレーション

デフレーションは、インフレーションの反対で、物価の下落を指す言葉です。

物価が安くなるので、消費者の生活水準は向上します。

しかし、デフレーションが長期間続くと、企業の売上が上がりにくくなってしまい、景気が停滞してしまう問題があるのです。

このようなデフレ―ションが進行した状態を「デフレスパイラル」と呼び、デフレスパイラルが進行すると、失業率が上昇するなどの深刻な問題を引き起こす可能性があります。

物価上昇と経済停滞

日本の物価は、2017年以降は前年比上昇幅が拡大傾向で推移していました。

企業の人手不足も高まる中、人件費が緩やかながら上昇するなど、物価上昇率は高まっています。

2018年あたりからは、物価上昇のテンポはゆるやかな傾向です。

しかし、2022年5月の内閣府が行った消費動向調査における、「1年後の物価の見通し」の調査結果では、「物価が上昇する」と応えた割合が94.4%にまでのぼっています。

これらの情報から、今後も日本の物価は高まると予想されます。

また、物価の上昇による消費者の購買力低下もあり、経済停滞が懸念されている状態です。

スタグフレーションの原因とは

2023年現在の日本は、スタグフレーションに陥りかねない状況です。

ただし、1970年のオイルショックによるスタグフレーションの状況とは異なり、コロナウイルスの影響によるものとされています。

では、スタグフレーションはどのような状況下において起きてしまうのでしょうか。

以下で、スタグフレーションの原因について解説します。

供給ショック

供給ショックとは、生産に必要な原材料やエネルギーの価格が急激に上昇し、生産コストが高くなる状態です。

自然災害や戦争、政治的な不安定さなど、突発的な要因により生じるもので、企業は生産活動を縮小せざるを得なくなります。

例えば、石油危機や天候不順による農作物の不作などが供給ショックの一つです。

典型例として、1970年に起きたオイルショックがあります。

オイルショックは、原油価格の急激な高騰によって生産コストが上昇し、企業は生産活動を縮小することを余儀なくされました。

同時に物価が上昇し、消費者の購買力が低下。

そのため日本経済は、1970年代後半から1980年代初頭にかけてスタグフレーションに陥ったのです。

また、需要が急激に増加したり減少したりすることで物価や生産量に影響を与える減少を、需要ショックと言います。

構造的失業

構造的失業とは、一定の職業に対して適切な労働力が不足することで発生する失業状態を指します。

求人は多くあるものの、求職者に適切な技能や経験がないために失業状態が続く状態です。

例えば、ある産業の需要が低下し、その産業で働く人々が職を失ったとします。

職を失った人たちは、当然別の業界に転職を考えますが、その業種への適正を持っていなかったり、必要なスキルを持っていなかったりする場合、転職が難しくなってしまいます。

このような状況では、生産性が低下し、賃金水準も低下するため、需要が減少するという悪循環も生じ、スタグフレーションが引き起こされる可能性が高い状況と言えるでしょう。

財政・金融政策の失敗

財政・金融政策の失敗がスタグフレーションを引き起こす場合もあります。

まずは、財政政策と金融政策の違いについて見ていきましょう。

  • 財政政策とは…政府が税収や国債の発行などを通じて財政を調整することで、経済の安定や発展を目指す政策
  • 金融政策とは…中央銀行が金融市場における利率や貨幣量を調整することで、経済の安定や発展を目指す政策

財政政策においては、景気が低迷しているにも関わらず減税や公共支出を増やしてしまうと、インフレーションを引き起こす可能性があります。

金融政策においては、金融緩和が長期化し低金利が続くと、不動産価格や株価が上昇し、インフレーションを引き起こす可能性があるのです。

さらに、財政政策や金融政策の不十分さからスタグフレーションを引き起こす可能性があるため、適切な政策を打ち出し、景気を安定させることが非常に重要になります。

スタグフレーションは国際競争力の低下の要因

スタグフレーションは、国際競争力低下の要因となります。

国際競争力低下のデメリットについては、以下のとおりです。

  • 輸出競争力の低下
  • 外国企業の進出や国内企業の海外進出の低下
  • 投資マネーの流出
  • 外貨準備の減少

スタグフレーションが国際競争力低下の要因になる理由は、3つあります。

  • 輸出品の価格が上昇する可能性…海外の顧客が国内の製品よりも他国の類似製品を選択する可能性が高くなるため、企業の輸出量が減少
  • 景気の停滞や失業率の上昇…企業の生産性が低下し、製品の品質や価格競争力が低下
  • 国内の雇用機会の減少…企業が海外に進出し生産拠点を移転する可能性がある

要因一つひとつが、結果的に国際競争力の低下を招いてしまいます。

これらの問題に対処するには、企業や国家が国際競争力を強化しなければいけません。

具体的には、製品の品質向上や生産性向上、新規事業の創出や研究開発によるイノベーションなどです。

さらに、自由貿易や貿易交渉を進め、海外市場に参入する機会を増やすことも、国際競争力を高めるための有効な手段の一つです。

労働市場や産業構造の改革も必要となってくるでしょう。

スタグフレーションへの対策課題とは

スタグフレーションの対策としては、いくつかの観点から考えなければいけません。

考えられる対策として、以下の5つがあります。

  • 金融政策の適切な運営
  • 構造改革と産業競争力の向上
  • 供給側政策の推進
  • 財政政策のバランス
  • 国際協調の強化

それぞれの課題をどのように解決すればスタグフレーションの対策になるのか、以下でポイントを解説していきます。

金融政策の適切な運営

インフレと経済成長の鈍化が同時に進行するスタグフレーションの状況下では、日本銀行が金融政策を適切に運営しなければいけません。

適切な金融政策のポイントとして、以下の2つが挙げられます。

  • 通貨安政策の見直し
  • 社会保障制度の見直し
  • 金融政策と財政政策のバランス

スタグフレーションが長期化すると、通貨価値の低下につながってしまうので、通貨安全政策を見直し、通貨価値の安定化を図る必要があります。

さらに、スタグフレーションの影響で失業率が上昇し、所得が低下する可能性も懸念されるので、雇用保護や福祉制度の充実など、社会的な安定を図ることが必要です。

また、政策で重要になるのは、金融政策と財政政策の両面から対策を行うこと。

金融政策と財政政策のどちらかに偏ると、インフレーションやデフレーションを引き起こす可能性があるため、バランスの取れた政策を打ち出さなければいけません。

構造改革と産業競争力の向上

スタグフレーションに対処するためには、経済の潜在成長力を高めなければいけません。

経済の潜在成長力とは、経済が持つ可能性のある最大の成長力を指します。

資源や技術、人材などを最大限に活用して生産性を高め、経済成長を実現できる最大限の能力です。

潜在成長力を高めれば、インフレーションとデフレーションの両方に対しても対策を講じられるでしょう。

構造改革においては、経済の生産性の向上が重要です。

具体的には、規制緩和、市場競争の促進、人材の流動性の向上、技術革新の推進など、様々な対策が考えられます。

これらの取り組みにより、企業の競争力が向上し、価格が下がり、経済の生産性が向上するでしょう。

産業競争力においては、企業のグローバル化や製品の高付加価値化、研究開発の促進、教育制度の改善、インフラ整備などの対策が考えられます。

ただし、構造改革と産業競争力の向上には、政府や企業、労働者などの協力が必要です。

政府は、税制や規制緩和、教育制度の改善などの政策を展開し、企業はグローバル化や研究開発、新規事業の展開などに取り組み、労働者はスキルアップや資格取得などに努めることが求められます。

供給側政策の推進

スタグフレーションは需要と供給の両方に問題があるため、需要側だけを刺激するだけでは解決につながりません。

供給側の改善が必要不可欠です。

具体的な政策としては、以下の4つが挙げられます。

  • 技術開発や研究開発の促進…新技術や製品の開発・生産工程の改善を行うことで生産性が向上し、製品の品質や付加価値が高まる
  • 規制緩和や財政支援…新しい産業を育成することで失業者の再就職や新たな需要の創出が期待できる
  • グローバル市場への進出…国内需要に限定されず、新たな需要を開拓できる
  • 労働市場の柔軟性を高める…雇用制度の改革や労働時間の短縮などを行うことで、企業が雇用を増やしやすくなる

このような政策は、企業の生産性を向上させ、物価上昇圧力を緩和する効果が期待できます。

財政政策のバランス

財政政策には、景気回復を促進するために積極的に財政支出を行う「積極財政」と、財政の健全性を重視し、歳出を抑制する「規律財政」の2つの方針があります。

スタグフレーションの課題を解決するには、「積極財政」「規律財政」のバランスを考えた政策を打ち出さなければいけません。

なぜそれぞれのバランスが重要かと言うと、積極財政は、景気刺激策としての効果が期待できますが、過剰な財政支出がインフレーションを引き起こし、スタグフレーションを招く可能性があります。

規律財政は、財政の健全性を維持できますが、景気の回復に遅れを生じる可能性があるのです。

そのため、財政政策のバランスをとる必要があります。

国際協調の強化

タグフレーションは、国際的な要因によっても引き起こされることがあり、海外経済にも影響を与える可能性があります。

一つの国の政策や経済状況だけで解決できる問題ではありません。

そのため、国際的な協調が必要です。

考えられる方法としては、以下の2つがあります。

  • 各国が協調して為替相場や貿易政策を調整し、公平な状況を作り出す
  • 新興国の経済発展や貿易自由化

これらの政策をすすめるには、国際通貨基金や世界貿易機関など、国際機関との連携も必要になります。

各国が協力して公正な環境を作りだせれば、スタグフレーションの解決に繋がるでしょう。

スタグフレーションが生活に与える影響とは

スタグフレーションは、生活に様々な影響を与えます。

主な影響は、以下の4つです。

  • 物価の上昇で生活費が家計を圧迫
  • 雇用の悪化
  • 貯蓄の減少
  • 資産価値の低下

金融政策や財政政策、国際協調などの観点から考えると、一般消費者には身近なものに感じられないかもしれません。

しかし、スタグフレーションが起きてしまうと、消費者の生活は厳しくなります。

そのため、消費者も世の中の政策や世界の動きについて理解しておかなければいけないのです。

実際にどのような影響になるのか解説するので、理解を深めて、世の中の動きに注目しましょう。

物価の上昇で生活費が家計を圧迫

スタグフレーションにより最も大きな影響の一つは、物価の上昇によって生活費が家計を圧迫することです。

物価の上昇に伴い、食料やエネルギー、住居などの必需品の価格が高騰し、家計の支出が増えてしまい、生活水準が下がる可能性があります。

また、物価の上昇が長期化すると、賃金上昇が追いつかず、生活水準の低下がより深刻化する可能性も考えられるでしょう。

さらに、物価の上昇によって、消費者の購買意欲が低下する懸念もあります。

物価が高くなると、消費者は購買を控えたり、安価な商品への代替を検討したりするため、景気の低迷が長期化してしまうのです。

このような影響を受けないためには、個々の家庭で節約や貯蓄、無駄の削減などが重要になります。

雇用の悪化

スタグフレーションが進行すると、景気の停滞によって企業の業績が悪化し、経営環境が悪化する可能性があります。

そのため、企業側が採用を控えてしまい、雇用の創出が減少してしまうのです。

失業率が上昇すれば、求職者が就職活動に苦戦し、新卒者や中高年層の雇用環境が悪化する可能性もあります。

また、スタグフレーションの状況は物価が高くなり、生活費の負担が大きい状況なので、消費者が生活費の増加に対処できなくなる可能性があります。

貯蓄の減少

上記で、生活費の圧迫を防ぐために「貯蓄」が必要と解説しましたが、スタグフレーションの状況下では、貯蓄も難しい状態になるでしょう。

なぜなら、物価の上昇に生活費が追いつけなくなるからです。

生活費が追いつかなくなってしまうと、消費者は貯蓄を減らして生活費を賄おうとしてしまいます。

さらに、投資や資産運用などの収益性も低くなるため、従来のような貯蓄が難しくなってしまうのです。

このように、スタグフレーションの状況下は、長期的な生活設計に影響を与えてしまいます。

資産価値の低下

スタグフレーションが進行すると、資産価値の低下が起こる可能性があります。

スタグフレーションが進むと、企業の業績が低迷し、株価が下落する傾向があるからです。

また、不動産市場も需要が減少すると考えられるため、土地や建物の価値も下がってしまうでしょう。

これらの原因によって、株式や不動産などの資産価値が低下し、投資家や不動産所有者などへ影響を与えます。

さらに、資産利益が減少するために、将来の資産形成が困難になります。

まとめ

スタグフレーションは、国全体で考えていかなければいけない課題でもあり、消費者の家庭に影響を与えるものでもあります。

対策としては、金融政策や財政政策などが挙げられますが、決して消費者に関係のないものではありません。

消費者側は、スタグフレーションが起きた場合を想定して、今のうちから対策を検討しておくべきです。

2023年現在の日本は、スタグフレーションに陥りやすい状態と言われているので、早い段階での理解と対策が必要と言えるでしょう。

また、今後の日本がどのようになっていくのか、日々の日本の財政や金融政策についても確認しておくべきです。

ぜひ今回の記事を参考にマネーリテラシーを高めて、今後の状況に対応できるようにしましょう。

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