エフェクチュエーション(吉田満梨・神戸大学)

開講時期:2023年4月~2023年5月

講師プロフィール

2009年 神戸大学大学院経営学研究科 博士後期課程修了、首都大学東京 助教、立命館大学 准教授を経て、2021年より現職。専門はマーケティング論で、特に、新しい製品市場の形成プロセスに関心を持つ。


吉田満梨先生の詳しいプロフィール

科目概要


「エフェクチュエーション」は、エキスパートの起業家から発見された、不確実性に対してコントロールによって対処する思考様式です。新しい事業や市場の創造、イノベーションといったビジネス上の課題だけではなく、一人ひとりのチャレンジを前に進めるために活用いただくことのできる、創造プロセスの一般理論と言えます。予測ができないような未来や、思うようにならない外部環境に対して、一歩を踏み出し、自らデザインするためにご活用いただけると期待しています。

吉田満梨先生のエフェクチュエーション
第1回目の講義を無料体験いただけます!

この科目でできるようになること

①不確実な状況でも、まず何から始めるかが分かるようになる。

自分の経験やスキル、人脈(「手中の鳥」)を棚卸しして、そこから無理のない 最初のアクションを設計できるようになります。 

②トラブルをチャンスに変えるスタンスが身につく。

予定外の出来事や想定外の失敗(レモン)を、損失ではなくチャンス(レモネード)として捉え直し、事業やキャリアの前進に活かす思考法を身につけます。

③仲間づくりの重要性や方法がわかる。

クレイジーキルトをメタファーに、どのように仲間を作り、物事を進めていくのか、そのポイントや実例がわかります。

起業家でなくても、ビジネス全般や日常の暮らしの考え方になるヒントが満載であり、エフェクチュエーションの思考法を取り入れることで、人生に彩が出ること間違いなしです!

講師からの一言

「エフェクチュエーション」は、エキスパートの起業家から発見された、不確実性に対してコントロールによって対処する思考様式です。新しい事業や市場の創造、イノベーションといったビジネス上の課題だけではなく、一人ひとりのチャレンジを前に進めるために活用いただくことのできる、創造プロセスの一般理論と言えます。予測ができないような未来や、思うようにならない外部環境に対して、一歩を踏み出し、自らデザインするためにご活用いただけると期待しています。

​ライブ講義

2023年

エフェクチュエーション・ライブ(1)『「手中の鳥」を棚卸しする』


「キレイゴトのあるべき論」ではなく、実際に成功した人々の成功法則の積み上げから見えてきた、「現実世界でのイノベーション実効理論」が、エフェクチュエーション。明日から使える最先端の科学です。

エフェクチュエーション・ライブ(2)『「許容可能な損失」の棚卸をする』


起業家とは、リスクをとって大それた挑戦をする人。古来、そう信じられてきましたが、最新の理論「エフェクチュエーション」が明らかにしたのは、実は成功した起業家は、失敗することを恐れ、リスクを見積もって、その中で行動する人だった。どこまでなら失敗してもよい範囲なのか、「許容可能な損失」のラインをしっかり見極めると、人生にチャレンジできるようになる。吉田先生の真骨頂、ぜひ皆さんも学んでください!

エフェクチュエーション・ライブ(3)『パートナシップを模索する』


イノベーションには、ごく限られた資源で挑戦しなければなりません。だからこそ、全てを自社でやりきろうと刷るのではなく、頼れるところをパートナーに頼っていくことが必要になる。あなたが心に期することを実現するための、パートナーはどんな人々になるでしょうか?吉田満梨先生と一緒に、自分を見つめ直してみましょう!

エフェクチュエーション・ライブ(4)『予期せぬ事態をテコとして活用する』

先が見通せない時代、あなたの想定していなかったことなど、いくらでも起こり得ます。かつての優秀なマネジャーは、全てを想定の範囲内にしようとし、未来をコントロール使用とした。現代の起業家は、想定外が起こるのは当たり前のこととして、その時に最大限の柔軟性で転進する。その経営の妙を、第一人者から学ぶ。大人気・吉田満梨先生の講義最終回、ぜひご参加ください!

2022年

エフェクチュエーション・ライブ講義1「手中の鳥の棚卸しをする」

エフェクチュエーション・ライブ講義2「許容可能な損失の棚卸をする」

エフェクチュエーション・ライブ講義3「パートナーシップを模索する」


エフェクチュエーション・ライブ講義4「予期せぬ事態をテコとして活用する」

オンデマンド講義

【エフェクチュエーション 1】エフェクチュエーションとは何か

【エフェクチュエーション 2】手中の鳥の原則

【エフェクチュエーション 3】「許容可能な損失」の原則

【エフェクチュエーション 4】「レモネード」の原則

【エフェクチュエーション 5】「クレイジーキルト」の原則

【エフェクチュエーション 6】パートナーシップのための「問いかけ」

【エフェクチュエーション 7】「飛行機のパイロット」の原則

【エフェクチュエーション 8】エフェクチュエーションの全体プロセス

※動画には受講生限定のメンバーエリアからアクセスできます。

ガイダンス|詳しい理論解説|エフェクチュエーションとは?

はじめに

エフェクチュエーションとは、バージニア大学のサラス・サラスバシー教授が提唱した、不確実性の高い状況下で熟達した起業家(エキスパート起業家)が用いる特有の意思決定ロジックと思考様式を表したものです。

この理論は、起業家がどうやって予測できない未来に向き合いながら、未来を自分たちで“つくり出し”、新しい製品・サービス・市場を生み出していくのかを明らかにします。そしてその考え方は、起業に限らず、私たちの仕事や日常の選択にも役立つ重要なヒントを与えてくれます。

伝統的な経営学は、コーゼーション(因果的思考)に基づいてきました。
コーゼーションとは明確な「目的」を設定し、それを達成するための最適な「手段」を分析・計画するアプローチです。
これは未来が予測可能であるという前提に立ちますが、現代の事業環境における「真の不確実性」の前では限界に直面してしまいます。

これに対し、エフェクチュエーションは、「手段」から思考をスタートします。
起業家は「自分は何者か」「何を知っているか」「誰を知っているか」という手持ちの資源、リソースを起点に、「何ができるか」を発想します。
行動の判断基準は、「期待されるリターン」ではなく、「失敗した場合に許容できる損失の範囲内かどうか?」となります。
つまり、大きなリターンを希望する“掛け”ではなく、失敗した時にどうなるかを冷静に想像するということですね。

エフェクチュエーションの思考様式の要諦

エフェクチュエーションの思考様式は、以下の5つの基本原則によって構成されます。

  1. 手中の鳥の原則 (Bird in Hand): 目的ではなく、手持ちの手段から始める。
  2. 許容可能な損失の原則 (Affordable Loss): 期待利益ではなく、許容できる損失の範囲で行動する。
  3. クレイジーキルトの原則 (Crazy Quilt): 他者を巻き込み、パートナーシップを構築することで手段と目的を拡張する。
  4. レモネードの原則 (Lemonade): 偶然や失敗を機会として積極的に活用する。
  5. 飛行機のパイロットの原則 (Pilot in the Plane): 未来は予測するものではなく、自らの行動によってコントロールし創造するものであると考える。

ここで注意すべきことがあります。
エフェクチュエーションは、幸運を待つ「引き寄せの法則」のような受動的な理論ではありません。
むしろ、自らの手で未来を形作るための、能動的かつ主体的な実践理論です。
この理論は、起業家のみならず、組織内で新規事業を立ち上げる人々や、キャリアを切り拓こうとする個人など、予測不可能な環境で新しい価値を創造しようとするすべての人々にとって、極めて有効な指針となります。

2つの思考様式|コーゼーションとエフェクチュエーション

エフェクチュエーションの理解を深めるためには、伝統的な経営学が前提としてきた思考様式「コーゼーション」との比較が不可欠です。

特徴 コーゼーション (Causation) エフェクチュエーション (Effectuation)
出発点 明確化された目的 手持ちの手段 (Who I am, What I know, Whom I know)
思考の方向 目的 → 最適な手段の選択 手段 → 創造可能な複数の結果
未来観 予測可能なものとして捉える **創造(コントロール)**可能なものとして捉える
不確実性への対応 予測を通じて不確実性を回避・最小化する 不確実性を活用し、機会に変える
他者との関わり 競争分析に基づき、競合をと見なす 交渉を通じて他者をパートナーとして巻き込む
判断基準 期待利益の最大化 許容可能な損失の最小化
有効な状況 目的が明確で、環境が比較的予測可能な状況 目的が不明確で、環境が極めて不確実な状況

コーゼーションは、市場調査や競争分析によって環境を予測し、最適な事業計画を立てて実行するという、合理的で強力なアプローチです。
しかし、このアプローチが有効であるためには、「目的が明確であること」と「環境が予測可能であること」という大前提が必要となります。

歴史を振り返ると、専門家による予測が大きく外れた事例は数多く存在する。

  • 日本の自動車産業: 1960年代、米国のビジネス誌は、競争の激しい米国市場で日本車が売れるはずがないと論じた。
  • ビートルズ: 世界的なスターになる以前、あるレコード会社の経営幹部は「ギターグループは時代遅れだ」として契約を見送った。
  • 蓄音機: 発明者であるトーマス・エジソン自身が、蓄音機に商業的な価値はないと考えていた。

これらの事例は、未来を正確に予測することの限界を示しています。

エフェクチュエーションの発見に至った研究

さて、エフェクチュエーションは、サラスバシー教授が実施した厳密な調査研究に基づいています。
サラスバシーは、新しい物事をゼロから立ち上げる際に特有の成功法則を抽出するため、「成功した起業家」と「成功した大企業のマネージャー」の意思決定プロセスを比較しました。

特に、調査対象となったエキスパート起業家は、以下の基準で、厳格に選定しています。

  • 全米の成功した起業家リストに複数掲載されている。
  • 創業者として1社以上を起業し、10年以上フルタイムで勤務。
  • 最低でも1社以上を株式公開(IPO)に導いた経験を持つ。
  • 調査対象者は平均して10年以上の起業経験を持ち、その企業価値は2.5億ドルから最大65億ドルに達した。

彼ら、彼女らに対し、架空の新規事業を立ち上げるという課題を与え(意志決定実験)、その思考プロセスを分析した結果、出身背景や創出した事業分野は多岐にわたるにもかかわらず、問題解決に用いる思考のロジックに共通性が発見されました。
これがエフェクチュエーション理論の発見へとつながりました。

エフェクチュエーションの5つの基本原則

この研究で明らかになったエフェクチュエーションは、相互に関連する5つの原則から構成されてます。

1)手中の鳥の原則 (Bird in Hand)

思考の出発点を、遠い目標(茂みの中の二羽の鳥)に置くのではなく、今確実に手にしているもの(手中の鳥)に置きます。

具体的には、以下の3つの問いから「何ができるか?」を発想します。

  1. 自分は何者か (Who I am): 自身の価値観、情熱、能力。
  2. 自分は何を知っているか (What I know): 自身の知識、スキル、経験。
  3. 自分は誰を知っているか (Whom I know): 自身の人的ネットワーク。

これは、自分からかけ離れた場所で成功を探すのではなく、自分自身を深く理解し、手持ちのリソースを最大限に活用することの重要性を示しています。

2)許容可能な損失の原則 (Affordable Loss)

行動を起こすか否かの判断を、期待されるリターンの大きさではなく、「最悪の事態が起きても、失って構わない損失の範囲内か」という基準で行います。
不確実性が高い状況ではリターンの予測は不可能であるため、致命傷を負わないようにリスクを管理することが賢明となります。

この原則は、挑戦への心理的なハードルを下げ、安心して行動を起こすことを可能にします。

3)クレイジーキルトの原則 (Crazy Quilt)

事業に関わるすべての人々と交渉し、彼らのコミットメント(参加の約束)を得ることで、パートナーシップを構築していきます。
パッチワークキルト(クレイジーキルト)が様々な布の断片を縫い合わせて作られるように、多様な背景を持つパートナーを巻き込みます。
パートナーが加わることで、彼らが持つ新たな「手段(リソース)」と「目的」がプロジェクトにもたらされ、当初は想像もしなかった方向へと事業が展開していくことがあります。
この原則は、外部環境を競争相手の集まり(敵)と見るのではなく、協力者の集まり(味方)と見る世界観に基づいています。

4)レモネードの原則 (Lemonade)

予期せぬ出来事や失敗を、ネガティブなものとして避けるのではなく、新たな機会として積極的に活用します。
「手元に来た酸っぱいレモン(失敗や想定外の事態)で、甘いレモネード(新たな価値)を作ればよい」というアメリカのことわざに由来します。
この原則は、金銭的なリターンだけでなく、失敗から得られる知識、ノウハウ、人脈といった非経済的なリターンも重視しています。
どのような結果になっても、次の挑戦に繋がる「何か」を得ることで、リソースは着実に増えていくということです。

5)飛行機のパイロットの原則 (Pilot in the Plane)

未来は受動的に予測するものではなく、自らが飛行機のパイロットのように能動的にコントロールし、創造していくものだという世界観です。
乱気流や予期せぬトラブルが発生しても、それは外部環境のせいではなく、すべてを「自分ごと」として捉え、自分がコントロールできる活動に集中して状況を打開しようとします。
この主体性、すなわち何が起きても自分がコントロールするのだという覚悟が予測不可能な未来を望ましい方向へ導く原動力となります。

まとめ|エフェクチュエーションは能動的に未来を創造する思考法

エフェクチュエーションのプロセスは、「手持ちの手段から始まり、許容可能な損失の範囲で行動し、他者とのパートナーシップを通じて手段と目的を拡張させ、偶然をテコにして、最終的に自らのコントロールによって新しい事業や市場を創造する…」という循環的なサイクルを描きます。

この理論が示す最も重要な点は、エフェクチュエーションが一部の天才的な個人の特殊能力ではなく、学習可能で実践可能な思考様式であるということです。

そして、それは幸運が舞い込むのを待つような受動的な姿勢とは正反対の、能動的・主体的に自らの手で成功を掴み取るための理論です。

不確実性が常態化した現代において、エフェクチュエーションは、自分の人生を自分の足で歩み、望ましい未来を自ら築き上げようとするすべての人々にとって、強力な羅針盤となり得ます!

ぜひ、やさしいビジネススクールで第1人者からエフェクチュエーションを学びませんか?

さらなるアウトプットをしたい方へ

アドバンスドなチャレンジをしたい方向けに、会員限定でアドバンスト問題を用意しています。
やさしいビジネススクールからフィードバックいたしますので、ぜひ挑戦してみてください。

その他の連絡事項

吉田先生のウェブサイト

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